『ウォーフェア 戦地最前線』(原題:Warfare)
監督:アレックス・ガーランド,レイ・メンドーサ
出演:ディファラオ・ウン=ア=タイ,ウィル・ポールター,コズモ・ジャーヴィス,キット・コナー,テイラー・ジョン・スミス,マイケル・ガンドルフィーニ,アダイン・ブラッドリー,ジョセフ・クイン,フィン・ベネット,ノア・センティネオ,エヴァン・ホルツマン,エンヒキ・ザガ,チャールズ・メルトン他
イオンシネマ茨木にて17:05からの回にまさか間に合うように行けるとは思いませんでしたが、この日の万博外周道路と中環はガラ空きで、17:15に到着。本編に間に合うなら観ようじゃないかと、結局仕事帰りに3本ハシゴすることになりました。
『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(2024)のアレックス・ガーランド監督が、同作で軍事アドバイザーを務めたレイ・メンドーサを共同監督に迎えて撮った作品。メンドーサがイラク戦争で体験した実話に基づく。メンドーサはイラク戦争中、JTAC(Joint Terminal Attack Controller=統合末端攻撃統制官)として戦場の最前線にいました。JTACとは、前線航空管制業務を遂行するための特別な認定資格を有する軍人で、航空機を適切に誘導し、誤爆を防いで地上部隊の安全を確保する役目を担っているそうです。本作ではメンドーサ役をディファラオ・ウン=ア=タイが演じています。
2006年のイラク。メンドーサを含む米海軍特殊部隊シールズのアルファ1小隊8名は、敵陣を眺めるのに手頃な家屋を見つけて侵入。怯える民間人家族におとなしくしているように説き伏せると、そこに潜伏して周囲の建物を見張る。怪しい動きをする者を見つけたらすぐに撃ち殺せるようにスナイパーのエリオットがスタンバイしていたが、アルファ1の潜伏を察知した敵兵が先に動きはじめる。聖戦(ジハード)開始が宣言されたと見られ、あっというまに民間人は街から姿を消す。すると、アルファ1が潜伏する家屋に手榴弾が投げ込まれ、エリオットが負傷。隊長のエリクはすぐさま緊急脱出のための車両を要請するが、その車両に負傷兵を乗せようとしたさいに車両もろとも爆撃を受ける。エリオットはさらに深い傷を負い、下士官のサムも両足を激しく損傷。ほかの者たちもパニックに陥る。指揮を執れる状態ではないエリクは、駆けつけたアルファ2の隊長ジェイクに後を任せるのだが……。
地獄です。最初は士気を高めるべく陽気にふるまっていたアルファ1の面々。潜伏先として白羽の矢が立てられた家屋の住人はたまったものではありません。幼い子どももいるというのに寝ているところを叩き起こされ、壁もぶち破られて、勝手にそこを基地にされる。挙げ句の果てに最後は「敵しかおらんから」と米軍によって家屋ごと爆破されてしまうのです。ま、このときは屋上のみが砲撃されるので、1階にいるようにとは言われるのですけれど。それにしたって何の罪で入居中の家がぶっ潰されてしまうのか。
兵士たちも百戦錬磨というわけではないから、攻撃を受けてビビる。負傷した兵士の足からは骨が見え、痛みに耐えかねて「モルヒネをくれ」と叫ぶ。阿鼻叫喚の中からどうやって脱出するか。音楽による演出はなし。米兵の英雄視もなし。ドラマティックな盛り上げも皆無で、ただただ戦場の惨状が描かれています。
戦争は何のため? 誰のため? 猛烈に疲れました。凄かった。
『見はらし世代』
『見はらし世代』
監督:団塚唯我
出演:黒崎煌代,遠藤憲一,木竜麻生,菊池亜希子,中山慎悟,吉岡睦雄,スー・ユチュン,服部樹咲,石田莉子,荒生凛太郎,中村蒼,井川遥他
TOHOシネマズ西宮で『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』→夙川でひとりランチ(当然昼呑み)→シアターセブンで本作を。『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』はまぁまぁ早朝からの上映だったにもかかわらず睡魔に襲われることはありませんでしたが、これはボトルワイン1本空けた後の鑑賞だから、そりゃ寝ますよね。(^^;
短編『遠くへいきたいわ』(2021)で注目された団塚唯我監督の記念すべき長編デビュー作とのこと。『遠くへいきたいわ』は未見ですが、団塚監督はまだ28歳。26歳のときに本作を撮り、カンヌ国際映画祭監督週間に日本人最年少で選出されたそうです。『世界一不運なお針子の人生最悪な1日』のフレディ・マクドナルド監督といい、若くても凄い人は凄い。ちなみにオリジナル脚本です。
再開発が進む東京・渋谷。胡蝶蘭をメインに扱う花屋の配送係として働く青年・高野蓮(黒崎煌代)。あるとき、配送先に父親・初(遠藤憲一)の職場が挙がっているのに気づいて蓮が届けることに。初は売れっ子のランドスケープデザイナー。何時も仕事優先で、母親・由美子(井川遥)が亡くなったときもその場にいなかった。由美子の死後、自分と姉・恵美(木竜麻生)と疎遠になっていた初を久しぶりに訪ねてみたものの、声をかけることはできず……。
本作を観に行ったのは、主演の黒崎煌代に興味があったからです。『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』(2024)で主人公の友人役を演じていて、ちょっと面白い役者だなぁと思っていました。後で調べたら、最初は女優の名前だと思い込んでいた「煌代」が彼の名前で、「こうだい」と読むことを知りました。全体的にほわんとした印象なのに、目つきが変態も演じられそうな感じ(笑)。声も顔から想像するより低くて、いろいろと興味を惹かれます。
母親の亡き後、娘と息子から逃げた父親。今は事務所の若い社員(菊池亜希子)と結婚まで考えている。そんな父親のことを娘は無視しているのに、息子は固執していて、父親の周りをうろついたり連絡を取ろうとしたりする。父子3人で出かけた折に現れるのは母親の幻影か幽霊か。家族に目を向けない父親であっても、夫の仕事に打ち込む姿が好きだったと亡き妻から言われた初がむせび泣くシーンはちょっとよかったかな。蓮が自分の中で気持ちに整理をつけていこうとする姿も。
最初の何分かおそらく私は寝ていたと思うんですが、あんまり影響なかったと思われます(笑)。
『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』
『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』(原題:Downton Abbey: A New Era)
監督:サイモン・カーティス
出演:ヒュー・ボネヴィル,ジム・カーター,ミシェル・ドッカリー,ポール・ジアマッティ,エリザベス・マクガヴァン,ペネロープ・ウィルトン,ローラ・カーマイケル,ラケル・キャシディ,ブレンダン・コイル,ケヴィン・ドイル,マイケル・フォックス,ジョアンヌ・フロガット,ハリー・ハデン=ペイトン,ロバート・ジェームズ=コリアー,アレン・リーチ,フィリス・ローガン,ソフィー・マクシェラ,レズリー・ニコル,ダグラス・リース,アーティ・フラウスハン,アレッサンドロ・ニヴォラ,サイモン・ラッセル・ビール,ドミニク・ウェスト他
仕事帰りに行くには遠く感じてめっきり行くことが少なくなったTOHOシネマズ西宮へ、休日のひとりランチの前に。
2010年から2015年まで放送された英国の大人気TVドラマ“ダウントン・アビー”シリーズを私が知ったのは、劇場版第1作の『ダウントン・アビー』(2019)が公開されたときのこと。『ゴスフォード・パーク』(2011)みたいだなぁと思いながら観はじめたのをよく覚えています。きっと睡魔に襲われるだろうと思っていたのにまったく眠くならず、大好きなシリーズになりました。かと言って過去の放送を遡って観るような時間も馬力もなく、劇場版を観るだけに留まっています。この劇場版第3弾の監督は、第2弾『ダウントン・アビー/新たなる時代へ』(2022)に引き続きサイモン・カーティス。
劇場版を観るのみで予習も復習もしていないから、毎回イチからのスタートになります。私が覚えているのは、クローリー家の先代伯爵夫人である婆様ヴァイオレットを演じていたのがマギー・スミスだということだけ。彼女が一昨年本当に亡くなって、今回は肖像画で登場。いい女優でしたね。あらためてご冥福をお祈りします。
さて、イチからスタートした私には誰が誰やらわからないのですが、観ていればわりと早いうちにその関係を思い出す。今回の主役はヴァイオレットの孫娘に当たるメアリー(ミシェル・ドッカリー)。現在当主を務めているのはヴァイオレットの息子でありメアリーの父親であるロバート(ヒュー・ボネヴィル)。いよいよ引退してメアリーに当主を引き継ぐべき時が来ている。メアリーは当主としての資質をじゅうぶん以上に持ち合わせているし、任せることに何ら問題はありません。ところがメアリーが親にも内緒で離婚したことがわかります。うろつく記者たちのせいでクローリー家の使用人たちすら知っていたことなのに、新聞でその事実を知ったロバートは仰天。なんといっても1930年の英国。離婚はご法度で、王族が出席するパーティーなどには「離婚女」が同席することは禁じられ、どこへ行っても白い目で見られます。近隣の貴族たちを招いて晩餐会を開こうとしても欠席の返事ばかり。
こんなとき、頼りになるのがメアリーの妹イーディス(ローラ・カーマイケル)。親交のある人気舞台俳優ガイ・デクスター(ドミニク・ウェスト)と超売れっ子脚本家ノエル・カワード(アーティ・フラウスハン)をまずは招待。それを信頼のおける侍女アンナ(ジョアンヌ・フロガット)に相談すれば、あとは使用人が暗躍(笑)。アンナはもうひとりの侍女フィリス(ラクエル・キャシディ)と出かけた先でほかの貴族に仕える使用人たちとばったり出くわしたふうを装い、「ウチの晩餐会にはガイとノエルが来るのに、御宅の主は欠席だなんて残念ねぇ」なんて感じで。アンナたちがクローリー家に戻るよりも前に、欠席を撤回する連絡が舞い込んでいるという有様です(笑)。
これだけの邸を維持していくには財力が必要。邸もこれひとつじゃありませんからね。ロンドンの家とか、どないしてこれから維持していくねんと思ったところで誰かが死ねば、巨額の遺産が入る。本作の好きなところは、皆さん育ちが良いからか、金の亡者みたいな人がいない。しかし彼らを取り巻く人の中にはその金を狙う輩がいる。ロバートの妻コーラ(エリザベス・マクガヴァン)の弟ハロルド(ポール・ジアマッティ)がまさにその罠にはめられた人物。自分が託されていた遺産の大半を詐欺師ガス(アレッサンドロ・ニヴォラ)に騙し取られたことに気づいておらず、また、ガスがあまりに感じの良いオッサンだったものだからメアリーまでコロリと行って一夜を共にしてしまうのでした。メアリー、脇甘すぎ。(^^;
ここでも被害を食い止めたのがイーディス。クローリー家の元運転手トム(アレン・リーチ)が入手した「ガスは詐欺師」というネタをもとにガスに手を引かせ、メアリーを脅そうとしていたガスに強烈な言葉の一発を食らわせます。なんかカッコよかったなぁ、イーディス。厨房で奮闘する新料理長のデイジー(ソフィー・マクシェラ)、前執事で今はガイの付き人を務めるトーマス(ロバート・ジェームズ=コリアー)、ヴァイオレットの良き理解者だったイザベル(ペネロープ・ウィルトン)もほっこりさせてくれます。
本作のイメージが強すぎて、ほかの作品で見ると「えーっ、あの人!?」と驚くこともよくあります。メアリー役のミシェル・ドッカリーは『フライト・リスク』(2025)を観ればたまげること請け合い(笑)。楽しみ方いろいろの“ダウントン・アビー”が大好きです。
本作を観ているといつもイギリス英語って耳に温かく響くなぁと思います。ちゃんと勉強したいけど、続かない。(^^;
2回目の『秒速5センチメートル』
国立文楽劇場で初めて文楽を鑑賞した日、午後休を取っていました。父に面会後、文楽にご一緒する人と夕呑みするまでに時間があれば映画を1本と思ったけれど、そう都合のよい時間には上映している作品がありません。キノシネマ心斎橋で13:35から上映の本作ならばなんとか間に合うか。上映終了後に徒歩で20分もあれば夕呑みの店にも行けるし、2回目の『秒速5センチメートル』で手を打つ。
去年鑑賞したなかでとても好きだった作品です。なんてったって、私にとっての「2025年の人」はブラピと松村北斗ですから。『ファーストキス 1ST KISS』の彼が断然好きでしたが、本作の彼も好きだなぁ。横顔を見ていると、綺麗な鼻筋だなぁと思います。
本作は満点とは言えません。そもそも松村北斗の高校生時代を青木紬が演じていることにあまり納得できていないし、宮崎あおいの出し方もちょっと疑問。こんな可愛くて格好いい先生が担任で、卒業後15年以上経ってから都会の町でばったり会って飲みに誘われること自体がファンタジーな気もします。宮崎あおいと松村北斗がふたりで飲んでいる図がそもそもあかんでしょ。あれ?これって単なる嫉妬ですかね(笑)。
いろいろと文句はあるけれど、それでも好きなのは、切なさで胸がいっぱいになるから。1回目のときに泣いたプラネタリウムのシーンは2回目も泣きましたし、「昔出会った大切なものは、今も日常」という高畑充希の台詞には胸を打たれる。またたまに観たくなるかもしれません。
昨秋公開の作品にこうしてまだ客が入っていることも嬉しいです。
『YADANG/ヤダン』
『YADANG/ヤダン』(英題:Yadang: The Snitch)
監督:ファン・ビョングク
出演:カン・ハヌル,パク・ヘジュン,ユ・ヘジン,リュ・ギョンス,チェ・ウォンビン,ユ・ソンジュ,キム・グムスン,イム・ソンギュン,チョ・ワンギ,クァク・ジャヒョン,イ・ソファン他
109シネマズ大阪エキスポシティにて。
“ヤダン”というのが何なのか知らずに観に行きました。麻薬犯罪者から引き出した情報を検察や警察に提供することで司法取引を操るブローカーを指すそうです。韓国の裏社会に実在すると言われているものの、都市伝説的な存在らしい。
3年前、青年イ・ガンス(カン・ハヌル)は検挙率を挙げるために仕組まれた罠にハメられ、麻薬入りのドリンク剤を飲まされて失神、現行犯逮捕された。冤罪を訴えるも服役からは逃れられずに悶々とするなか、彼の記憶力の良さを見込んだ検事ク・グァニ(ユ・ヘジン)からある提案を受ける。それは同房の服役者たちを密かに調べて麻薬組織の内情を突き止めよというもの。ガンスは見事期待に応えてみせ、おかげでグァニは次々と麻薬犯罪者を逮捕する。
大幅に減刑されて出所したガンスは、グァニの勧めでヤダンに。麻薬犯罪者が逮捕されるとガンスが呼ばれて交渉の席に着く。犯罪者には減刑と引き換えに情報提供を求め、知り得た麻薬取引の情報はグァニに渡す。するとグァニが部下を引き連れて取引の場へ。その場にいた者を片っ端から捕まえるという算段。こうしてグァニはトントン拍子に出世を果たし、頂上までもうすぐ。ガンスも犯罪者から減刑の見返りに受け取った報酬で良い生活を送っている。
一方、地道な捜査で麻薬犯罪者を捕まえてきていた刑事オ・サンジェ(パク・ヘジュン)は、長年追っていた犯罪者をいざ逮捕しようとするとグァニとガンスに横取りされてばかり。今回は麻薬を所持していた女優オム・スジン(チェ・ウォンビン)を捕まえ、彼女から得た情報により、あるホテルで開催されているドラッグパーティーの場に乗り込もうとしていたが、またしてもグァニとガンスが登場。
ところが、グァニが捕まえた中には大統領候補の息子チョ・フン(リュ・ギョンス)がいた。検察庁のトップに上り詰めるまでが見えてきていたグァニは、この事件を揉み消すならば出世を約束すると言われる。そのためにはすべてを知るガンスのことも消さなければならず……。
顔を見ただけで笑ってしまうけれどいつも善人役のユ・ヘジンがこんな出世欲にまみれた悪人役を演じるとは。トニー・レオンが悪役を演じるより衝撃的かも(笑)。グァニとガンスはまるで兄弟のように固い絆で結ばれていたのかと思いきや、グァニは誰にでも「兄さんと呼んでくれ」と言うような奴で。まさか「兄さん」に裏切られるとは思っていなかったガンスは酷い目に遭わされます。車で轢かれ、脚を燃やされ、シャブ漬けにされる。シャブを抜くのが大変です。こんなときに頼りになる人がそばにいてくれるのはいいもんだ。
裏切られた者同士ガンスとサンジェが手を組み、スジンを仲間に引き入れて、シャブ抜きに力を貸してくれたコ・チャンナク(イム・ソンギュン)がグァニもフンも潰しにかかる様子がめちゃめちゃ面白い。もう1回観たいぐらいなんですが、もっと客入ってロングランになってくれないかなぁ。ならないだろうなぁ。韓国映画がお好きな人には激推しの1本。





