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『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』

『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』(原題:Downton Abbey: A New Era)
監督:サイモン・カーティス
出演:ヒュー・ボネヴィル,ジム・カーター,ミシェル・ドッカリー,ポール・ジアマッティ,エリザベス・マクガヴァン,ペネロープ・ウィルトン,ローラ・カーマイケル,ラケル・キャシディ,ブレンダン・コイル,ケヴィン・ドイル,マイケル・フォックス,ジョアンヌ・フロガット,ハリー・ハデン=ペイトン,ロバート・ジェームズ=コリアー,アレン・リーチ,フィリス・ローガン,ソフィー・マクシェラ,レズリー・ニコル,ダグラス・リース,アーティ・フラウスハン,アレッサンドロ・ニヴォラ,サイモン・ラッセル・ビール,ドミニク・ウェスト他

2010年から2015年まで放送された英国の大人気TVドラマ“ダウントン・アビー”シリーズを私が知ったのは、劇場版第1作の『ダウントン・アビー』(2019)が公開されたときのこと。『ゴスフォード・パーク』(2011)みたいだなぁと思いながら観はじめたのをよく覚えています。きっと睡魔に襲われるだろうと思っていたのにまったく眠くならず、大好きなシリーズになりました。かと言って過去の放送を遡って観るような時間も馬力もなく、劇場版を観るだけに留まっています。この劇場版第3弾の監督は、第2弾『ダウントン・アビー/新たなる時代へ』(2022)に引き続きサイモン・カーティス

劇場版を観るのみで予習も復習もしていないから、毎回イチからのスタートになります。私が覚えているのは、クローリー家の先代伯爵夫人である婆様ヴァイオレットを演じていたのがマギー・スミスだということだけ。彼女が一昨年本当に亡くなって、今回は肖像画で登場。いい女優でしたね。あらためてご冥福をお祈りします。

さて、イチからスタートした私には誰が誰やらわからないのですが、観ていればわりと早いうちにその関係を思い出す。今回の主役はヴァイオレットの孫娘に当たるメアリー(ミシェル・ドッカリー)。現在当主を務めているのはヴァイオレットの息子でありメアリーの父親であるロバート(ヒュー・ボネヴィル)。いよいよ引退してメアリーに当主を引き継ぐべき時が来ている。メアリーは当主としての資質をじゅうぶん以上に持ち合わせているし、任せることに何ら問題はありません。ところがメアリーが親にも内緒で離婚したことがわかります。うろつく記者たちのせいでクローリー家の使用人たちすら知っていたことなのに、新聞でその事実を知ったロバートは仰天。なんといっても1930年の英国。離婚はご法度で、王族が出席するパーティーなどには「離婚女」が同席することは禁じられ、どこへ行っても白い目で見られます。近隣の貴族たちを招いて晩餐会を開こうとしても欠席の返事ばかり。

こんなとき、頼りになるのがメアリーの妹イーディス(ローラ・カーマイケル)。親交のある人気舞台俳優ガイ・デクスター(ドミニク・ウェスト)と超売れっ子脚本家ノエル・カワード(アーティ・フラウスハン)をまずは招待。それを信頼のおける侍女アンナ(ジョアンヌ・フロガット)に相談すれば、あとは使用人が暗躍(笑)。アンナはもうひとりの侍女フィリス(ラクエル・キャシディ)と出かけた先でほかの貴族に仕える使用人たちとばったり出くわしたふうを装い、「ウチの晩餐会にはガイとノエルが来るのに、御宅の主は欠席だなんて残念ねぇ」なんて感じで。アンナたちがクローリー家に戻るよりも前に、欠席を撤回する連絡が舞い込んでいるという有様です(笑)。

これだけの邸を維持していくには財力が必要。邸もこれひとつじゃありませんからね。ロンドンの家とか、どないしてこれから維持していくねんと思ったところで誰かが死ねば、巨額の遺産が入る。本作の好きなところは、皆さん育ちが良いからか、金の亡者みたいな人がいない。しかし彼らを取り巻く人の中にはその金を狙う輩がいる。ロバートの妻コーラ(エリザベス・マクガヴァン)の弟ハロルド(ポール・ジアマッティ)がまさにその罠にはめられた人物。自分が託されていた遺産の大半を詐欺師ガス(アレッサンドロ・ニヴォラ)に騙し取られたことに気づいておらず、また、ガスがあまりに感じの良いオッサンだったものだからメアリーまでコロリと行って一夜を共にしてしまうのでした。メアリー、脇甘すぎ。(^^;

ここでも被害を食い止めたのがイーディス。クローリー家の元運転手トム(アレン・リーチ)が入手した「ガスは詐欺師」というネタをもとにガスに手を引かせ、メアリーを脅そうとしていたガスに強烈な言葉の一発を食らわせます。なんかカッコよかったなぁ、イーディス。厨房で奮闘する新料理長のデイジー(ソフィー・マクシェラ)、前執事で今はガイの付き人を務めるトーマス(ロバート・ジェームズ=コリアー)、ヴァイオレットの良き理解者だったイザベル(ペネロープ・ウィルトン)もほっこりさせてくれます。

本作のイメージが強すぎて、ほかの作品で見ると「えーっ、あの人!?」と驚くこともよくあります。メアリー役のミシェル・ドッカリーは『フライト・リスク』(2025)を観ればたまげること請け合い(笑)。楽しみ方いろいろの“ダウントン・アビー”が大好きです。

本作を観ているといつもイギリス英語って耳に温かく響くなぁと思います。ちゃんと勉強したいけど、続かない。(^^;

2回目の『秒速5センチメートル』

国立文楽劇場で初めて文楽を鑑賞した日、午後休を取っていました。父に面会後、文楽にご一緒する人と夕呑みするまでに時間があれば映画を1本と思ったけれど、そう都合のよい時間には上映している作品がありません。キノシネマ心斎橋で13:35から上映の本作ならばなんとか間に合うか。上映終了後に徒歩で20分もあれば夕呑みの店にも行けるし、2回目の『秒速5センチメートル』で手を打つ。

去年鑑賞したなかでとても好きだった作品です。なんてったって、私にとっての「2025年の人」はブラピと松村北斗ですから。『ファーストキス 1ST KISS』の彼が断然好きでしたが、本作の彼も好きだなぁ。横顔を見ていると、綺麗な鼻筋だなぁと思います。

本作は満点とは言えません。そもそも松村北斗の高校生時代を青木紬が演じていることにあまり納得できていないし、宮崎あおいの出し方もちょっと疑問。こんな可愛くて格好いい先生が担任で、卒業後15年以上経ってから都会の町でばったり会って飲みに誘われること自体がファンタジーな気もします。宮崎あおいと松村北斗がふたりで飲んでいる図がそもそもあかんでしょ。あれ?これって単なる嫉妬ですかね(笑)。

いろいろと文句はあるけれど、それでも好きなのは、切なさで胸がいっぱいになるから。1回目のときに泣いたプラネタリウムのシーンは2回目も泣きましたし、「昔出会った大切なものは、今も日常」という高畑充希の台詞には胸を打たれる。またたまに観たくなるかもしれません。

昨秋公開の作品にこうしてまだ客が入っていることも嬉しいです。

『YADANG/ヤダン』

『YADANG/ヤダン』(英題:Yadang: The Snitch)
監督:ファン・ビョングク
出演:カン・ハヌル,パク・ヘジュン,ユ・ヘジン,リュ・ギョンス,チェ・ウォンビン,ユ・ソンジュ,キム・グムスン,イム・ソンギュン,チョ・ワンギ,クァク・ジャヒョン,イ・ソファン他

109シネマズ大阪エキスポシティにて。

“ヤダン”というのが何なのか知らずに観に行きました。麻薬犯罪者から引き出した情報を検察や警察に提供することで司法取引を操るブローカーを指すそうです。韓国の裏社会に実在すると言われているものの、都市伝説的な存在らしい。

3年前、青年イ・ガンス(カン・ハヌル)は検挙率を挙げるために仕組まれた罠にハメられ、麻薬入りのドリンク剤を飲まされて失神、現行犯逮捕された。冤罪を訴えるも服役からは逃れられずに悶々とするなか、彼の記憶力の良さを見込んだ検事ク・グァニ(ユ・ヘジン)からある提案を受ける。それは同房の服役者たちを密かに調べて麻薬組織の内情を突き止めよというもの。ガンスは見事期待に応えてみせ、おかげでグァニは次々と麻薬犯罪者を逮捕する。

大幅に減刑されて出所したガンスは、グァニの勧めでヤダンに。麻薬犯罪者が逮捕されるとガンスが呼ばれて交渉の席に着く。犯罪者には減刑と引き換えに情報提供を求め、知り得た麻薬取引の情報はグァニに渡す。するとグァニが部下を引き連れて取引の場へ。その場にいた者を片っ端から捕まえるという算段。こうしてグァニはトントン拍子に出世を果たし、頂上までもうすぐ。ガンスも犯罪者から減刑の見返りに受け取った報酬で良い生活を送っている。

一方、地道な捜査で麻薬犯罪者を捕まえてきていた刑事オ・サンジェ(パク・ヘジュン)は、長年追っていた犯罪者をいざ逮捕しようとするとグァニとガンスに横取りされてばかり。今回は麻薬を所持していた女優オム・スジン(チェ・ウォンビン)を捕まえ、彼女から得た情報により、あるホテルで開催されているドラッグパーティーの場に乗り込もうとしていたが、またしてもグァニとガンスが登場。

ところが、グァニが捕まえた中には大統領候補の息子チョ・フン(リュ・ギョンス)がいた。検察庁のトップに上り詰めるまでが見えてきていたグァニは、この事件を揉み消すならば出世を約束すると言われる。そのためにはすべてを知るガンスのことも消さなければならず……。

顔を見ただけで笑ってしまうけれどいつも善人役のユ・ヘジンがこんな出世欲にまみれた悪人役を演じるとは。トニー・レオンが悪役を演じるより衝撃的かも(笑)。グァニとガンスはまるで兄弟のように固い絆で結ばれていたのかと思いきや、グァニは誰にでも「兄さんと呼んでくれ」と言うような奴で。まさか「兄さん」に裏切られるとは思っていなかったガンスは酷い目に遭わされます。車で轢かれ、脚を燃やされ、シャブ漬けにされる。シャブを抜くのが大変です。こんなときに頼りになる人がそばにいてくれるのはいいもんだ。

裏切られた者同士ガンスとサンジェが手を組み、スジンを仲間に引き入れて、シャブ抜きに力を貸してくれたコ・チャンナク(イム・ソンギュン)がグァニもフンも潰しにかかる様子がめちゃめちゃ面白い。もう1回観たいぐらいなんですが、もっと客入ってロングランになってくれないかなぁ。ならないだろうなぁ。韓国映画がお好きな人には激推しの1本。

『コート・スティーリング』

『コート・スティーリング』(原題:Caught Stealing)
監督:ダーレン・アロノフスキー
出演:オースティン・バトラー,レジーナ・キング,ゾーイ・クラヴィッツ,マット・スミス,リーヴ・シュレイバー,ヴィンセント・ドノフリオ,ベニート・A・マルティネス・オカシオ他

イオンシネマ茨木にて。

『ザ・ホエール』(2022)のダーレン・アロノフスキー監督が『エルヴィス』(2022)のオースティン・バトラーを主演に起用して、チャーリー・ヒューストンのベストセラー小説を映画化。ヒューストンは1968年生まれのアメリカ人作家で、この原作は2004年に上梓された作品なのだそうです。舞台は1990年代後半のニューヨーク。

高校時代は将来を嘱望される野球選手だったハンク・トンプソン。メジャーリーグ入りは間違いないと噂されていたのに、ドラフトを目前に控えた日、自ら運転していた車で事故を起こす。同乗していた友人はフロントガラスを突き破って車外に放り出され、即死。ハンク自身も膝から骨が見えるほどの大怪我を負ってメジャーリーガーの夢は潰える。あれから長い月日が経った今、別の夢を叶えるでもなく、場末のバーテンダーとして生計を立てているハンク。唯一の心の拠り所はそんな彼でも見捨てずにつきあってくれる恋人イヴォンヌ。

ある日、隣室のラス・マイナーが危篤の父親に会うためにロンドンへ帰るから飼い猫のバドを預かってくれと言う。断ろうとしても押しつけられ、仕方なくラスを見送るハンク。ところがその後にやってきたロシアンマフィア2人組に殴る蹴るの暴行を加えられ、ラスの居場所を教えろと言われる。同階の住人が警察に通報しようとしてようやく立ち去るマフィア。腎臓をひとつ切除するほど傷つけられたハンクに、女刑事エリース・ローマンが事情を聴きにくる。エリースが言うには、ラスは手を出してはならない金をくすねたらしく、ロシアンマフィアのみならず血も涙もないユダヤ人のドラッカー兄弟がラスの行方を追っているとのこと。どちらもヤバすぎるから、とにかく何か思い出したら連絡を寄越すようにとエリースは言う。

そうは言われてもまるで心当たりがない。ロシアンマフィアとドラッカー兄弟が探している「何か」をラスは本当に持っているのか。そうならばどこに隠しているのか。なんとかして見つけ出さなければ自分の周囲にいる人まで酷い目に遭わされるだろう。困り果てたハンクがふと気づいたのは猫用トイレで……。

アロノフスキー監督のイメージといえばデビュー作の『π』(1997)と第2作の『レクイエム・フォー・ドリーム』(2000)が凄すぎて、どうにも私には消化しきれない作品を撮る人だと思っていました。『ブラックスワン』(2010)を観てもその思いは変わらず、常に難解。ところがこれはどうでしょう。途中で「これってホントにアロノフスキー監督なの?」と思ったほど。ガイ・リッチー監督っぽいです。とてもわかりやすい話で、痛々しくはあるけれどエンタメ感満載。イヴォンヌが早々と殺されてしまったのは意外で唖然としましたが(泣)(ネタバレ御免)、ハッピーエンドだし。

こちらも歳を取ったから、あんまり難解なのを見せられるよりも、こんなふうにわかりやすい話をドドーッとテンポ良く見せられるほうが楽しめます。すっかり素直で丸くなったアロノフスキー監督、大歓迎。オースティン・バトラーはイケメンだし、ドラッカー兄弟役のリーヴ・シュレイバーヴィンセント・ドノフリオがワラける。原作出版後10年経たないうちに映画化の話が出たさいは、パトリック・ウィルソン主演が考えられていたそうです。いや、絶対バトラーのほうがいいでしょ。ハンクが毎日欠かさず電話している母親はずっと声のみの出演ですが、最後の最後に誰が演じていたのかわかる。クレジットなしでローラ・ダーン。この彼女の驚いた顔、めちゃくちゃよかったなぁ。

ちなみに原題の“Caught Stealing”は「盗塁死」の意。ちゃんと成功しています。猫のバドが可愛すぎ♪

『喝采』

『喝采』(原題:The Great Lillian Hall)
監督:マイケル・クリストファー
出演:ジェシカ・ラング,キャシー・ベイツ,リリー・レーブ,ジェシー・ウィリアムズ,ピアース・ブロスナン,マイケル・ローズ,シンディ・ホーガン,キース・アーサー・ボールデン他

NGKの夕方の回を観る日、十三で狙っていた作品があったのに、間に合うように家を出られず。それより1時間遅くから上映開始の本作を観ることにしました。大阪ステーションシティシネマにて。

2014年に亡くなったブロードウェイ女優マリアン・セルデスがモデル。その姪エリザベス・セルデス・アナコーンが脚本を担当しています。原題は邦題とはまるで異なる“The Great Lillian Hall”。『喝采』という邦題の作品は1929年にも1954年にも名作があります。そのうち原題も“Applause”だったのは最初のものだけ。日本人なら『喝采』と聞くとちあきなおみを思い出さずにはいられませんし、どうなのよと思っていましたが、やはり本作にはこの邦題がふさわしい。

ブロードウェイ女優のリリアン・ホールは誰もが認める大スター。何千回とステージに立ち、客たちは彼女目当てに押し寄せる。新進気鋭の演出家デヴィッドはこのたびチェーホフの『桜の園』に彼女を起用。評判を呼ぶことは間違いなく、連日舞台稽古がおこなわれている。

ところが、リリアンの様子がどことなくおかしい。台詞を間違えたり忘れたり、時には登場することすら忘れる。この舞台が失敗して膨大な損益が出るのを避けたいスポンサーは、デヴィッドを通してリリアンの精神科受診を命じる。致し方なく受診したリリアンは、自分が認知症を発症していることを告知されて……。

ノーマークだった作品ですが、とても見応えがありました。実際に大女優のジェシカ・ラングだからこそ演じられる役で、その風格が素晴らしい。並んで素晴らしいのはリリアンの秘書で家政婦のイーディスを演じるキャシー・ベイツ。リリアンの亡夫カールソンが20年分の給料を先払いしてくれたから辞められないとぼやきつつ、リリアンを支えつづけます。ジェシー・ウィリアムズ演じるデヴィッドも◎。自分の成功だけを考えているわけではなさそうな彼は、代役で行くべきだというスポンサーの意見に抵抗を見せ、リリアンでなければ駄目なのだと主張します。そしてできるだけリリアンに寄り添おうとする。

ずっとステージを渡り歩いたリリアンには、リリー・レーブ演じる一人娘のマーガレットと過ごす時間があまりありませんでした。マーガレットがそれを恨みに思っているふうはなく、今でも折を見ては美味しいキッシュやマフィンを焼いてリリアンに会いに来る。それはリリアンから経済的に援助を受けたいと思う下心もあってのことだけど、そこまでの嫌らしさは見受けられません。「出してくれたらありがたいなぁお母さん」程度の感じ。幼少時代にひとりで過ごすのは寂しかったろうに、それを態度に表すこともなかった彼女が、リリアンの認知症について初めて知ったときの様子には涙。自分は娘なのに何も知らされず、イーディスにすべて任せていたなんてどういうことなのかと。胸を衝かれるシーンです。

忘れてはならないのがリリアンの隣人タイ役を演じるピアース・ブロスナン。やっぱり色っぽいですよね(笑)、このオッサン。

リリアンが成し遂げる最後の舞台。本作を観ることができて、予定していた作品に間に合わなかったことを幸運に思いました。