『ペンギン・レッスン』(原題:The Penguin Lessons)
監督:ピーター・カッタネオ
出演:スティーヴ・クーガン,ビビアン・エル・ハベル,ビョルン・グスタフソン,ダビド・エレーロ,アルフォンシナ・カロシオ,ミカエラ・ブレッキ,ジョナサン・プライス他
なんばパークスシネマにて、『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』→『WEAPONS/ウェポンズ』→『仮面ライダーガヴ ギルティ・パルフェ』→本作。2本目とこの4本目は北摂の劇場では観られないからこれらがお目当てでした。『フル・モンティ』(1997)のピーター・カッタネオ監督によるスペイン/イギリス作品。冒険好きの教師トム・ミッチェルの回顧録『人生を変えてくれたペンギン 海辺で君を見つけた日』の映画化で、主演はコンスタントに映画に出続けて今年還暦のスティーヴ・クーガン。いつまでも元気でいてほしい俳優のうちのひとりです。
1970年代、軍事政権下のアルゼンチン。シカゴ、ベネズエラ、ブラジルなどを渡り歩いていたトムは、名門男子校セントジョージズカレッジに英語教師として赴任する。生徒は富裕層のぼんぼんばかりで、ろくに授業を聴こうとしない。どうしたものかと半ばあきらめ気分でいたところ、市内各地で起きている爆撃がおさまるまで1週間の休校が決定する。1週間の休暇があるならばと、ウルグアイでくつろぐことにしたトム。時間を持て余している同僚の理科教師タピオもついてくる。
ウルグアイのダンスクラブに出向いたトムは、カリナという女性から逆ナンパされるが、ふたりで海岸を歩いていたところ、重油まみれで苦しむペンギンを発見。どうすることもできないとそのまま帰ろうとしたところ、カリナに咎められる。致し方なくホテルへ連れ帰り、カリナと共にペンギンを洗ってやる。ペンギンが綺麗になってやっとベッドインと思ったのに、カリナは既婚者だと言ってにこやかに部屋から立ち去ってしまう。美女と寝ることは叶わず、残ったのはペンギンだけで……。
ホテルの部屋にペンギンを置き去りにしようとしたら、警察が来て、連れて行かなければ逮捕すると言われます。ウルグアイからアルゼンチンに戻るときもそう。なぜペンギンを連れているのかと問われ、事情を説明して置いて行こうとするとまた逮捕すると言われる。そのうえペンギンを連れて行く場合は金を払えと言われて拒否すると、じゃあ金は要らないから連れて行けって。もう絶対連れて行くしかないわけで(笑)。
話を聴かない生徒たちの注目を引くためにペンギンを授業に連れて行ったら大当たり。だけどペンギンを学校内に入れることはもちろん、敷地内の宿舎はペット厳禁だから大変です。トムが右往左往しながら面倒を見るうち、ペンギンのおかげで人同士のつながりが広がってゆきます。
のんびりした雰囲気かと思いきや、情勢が不安定な街ではあちこちで理不尽に人が捕らえられています。学校の清掃を担当している女性ソフィアも活動家の疑いをかけられて逮捕されますが、その場に居合わせたトムは自分も捕まるのが怖くて何もできなかったことを恥じるように。ソフィアの祖母マリアにそれを打ち明けるシーンがいい。ペンギンにいろんな人が愚痴をこぼすのにも笑った。特にジョナサン・プライス演じる校長のぼやきは必聴(笑)。和める良い作品でした。
『仮面ライダーガヴ ギルティ・パルフェ』
『仮面ライダーガヴ ギルティ・パルフェ』
監督:柴崎貴行
出演:知念英和,日野友輔,宮部のぞみ,庄司浩平,鎌田英怜奈,田淵累生,たかし,小松利昌,板橋駿谷,新木宏典他
声の出演:木村良平
なんばパークスシネマにて4本ハシゴ。2本目の『WEPONS/ウェポンズ』と後述の4本目の間がビミョーに空いていて、ロビーで本を読んでいようかと思ったけれど、本作ならちょうど観られそう。イマドキの“仮面ライダー”がどうなっているのか観てみることにしました。
“仮面ライダーガヴ”は今夏に最終回を迎えたシリーズなのだそうです。何にも知らないまま観て、復習もしていないのでわからないことだらけ。本編開始前に併映される“ゴチゾウ”の意味がまずわかりません。なんだこのミニチュア自販機みたいな物体は。それにタイトルからして「ギルティ・パルフェ」って、私の知る時代の仮面ライダーにはあり得んスイーツっぽい名前は何なのよと思いながら観はじめました。誰がガヴなのかもわからなくて、観終わってから「おおっ、あっちがガヴだったのか」と知る始末。(^^;
なんだかよくわからないけれど、とにかく仮面ライダーのどれかと、仮面ライダーに父親を殺された異星人の娘と、その娘に家族の誰かを殺されたまた別の異星人が戦います。仮面ライダーに父親を殺された娘はグラニュー糖!?と思ったら「グラニュート」という異星人でした。仮面ライダーが変身するときにベルト付近にセットするのがゴチゾウ。後から調べてみたら、ゴチゾウは眷属なんですね。グミだったりチョコパだったりするゴチゾウをセットするとパワーが出るらしい。イマドキすぎる。
巷では闇菓子というものも密かに取引されていて、グラニュートを捕まえて闇菓子や闇料理の食材として使うんですと。闇鍋じゃあるまいし、闇菓子って(笑)。捕まえたグラニュートの娘を調理台の上に載せるのはちょっと悪趣味だと思う。頼りになる闇医者・狩藤先生役の新木宏典にちょっと興味が湧きます。
ハシゴの隙間を潰すために観た作品でしたが、これはこれで楽しめます。かつて“仮面ライダードライブ”を観たときは、「もはやライダーですらないんだわ」と衝撃を受けましたが、この「首にドーナツを巻いている仮面ライダー」には笑った。時代は変わる。
『WEAPONS/ウェポンズ』
『WEAPONS/ウェポンズ』(原題:Weapons)
監督:ザック・クレッガー
出演:ジョシュ・ブローリン,ジュリア・ガーナー,オールデン・エアエンライク,オースティン・エイブラムズ,ケイリー・クリストファー,ベネディクト・ウォン,エイミー・マディガン他
なんばパークスシネマにて4本ハシゴの2本目。前述の『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』の次に。
ザック・クレッガー監督はまだ40代前半。若手の部類に入るでしょう。日本では劇場未公開だった『バーバリアン』(2022)で注目を集めたそうで、ディズニープラスで視聴可能。オリジナル脚本と聞いただけで私の評価はひとつ上がります。この監督、奥さんはビル・パクストン(『タイタニック』(1997)でトレジャーハンターを演じた俳優)のとっても遠い親戚のサラ・パクストンなんですと。どうでもええか。
ペンシルヴェニア州郊外の小さな町。新任の小学校教師ジャスティンが担当するクラスの児童18人中17人が忽然と姿を消す集団失踪事件が発生。防犯カメラなどによれば、いずれの児童も午前2時17分に突然起き上がり、手を広げて玄関から飛び出した模様。翌朝登校したジャスティンのクラスの児童はアレックスただひとりで、そのときになって17人が行方不明であることが発覚する。ジャスティンは自分は何も知らないのだと主張するが、保護者たちから疑いの目で見られ、魔女と揶揄される。
……というジャスティンの章で幕が上がり、その他の登場人物何人かを追う章仕立てになっています。保護者のうちのひとりであるアーチャーは、息子マシューがいなくなってからというもの、何も手につきません。なんとか息子を見つけたくて、ジャスティンの後をつけたり、情報収集に努めたり。何度も防犯カメラを確認するうち、息子が捕らわれている場所がなんとなくわかりはじめます。
ジャスティンは町の人たちに責め立てられる気の毒な女性教師かと思いきや、以前の赴任地では不倫騒動を起こしてクビになっている。この町でもこんなときに良い仲になった警察官ポールを呼び出します。それに乗るポールもポールで、最初はジャスティンから勧められる酒を頑なに断っているけれど、結局飲んだうえに寝てしまう。ポールの妻ドナが怒り狂ってジャスティンのもとへ乗り込むのは、寝たからというよりも、アルコール依存症で治療中だったポールに酒を飲ませたから。
こんなふうに町と住人の様子を描きながら進む物語はどこへ行き着くのかわからなくて面白い。可哀想なのはアレックス。叔母だといって押しかけてきた老婆グラディスに家を乗っ取られ、両親もグラディスに操られています。グラディスが使う技はどういう魔術なのだかわからないし、彼女の目的が何なのかもよくわかりません。わからないのに、それがどうでもいいと思えるぐらい面白い。とても怖いホラーだけど、最後はギャグかと思えるぐらいで笑ってしまいました。
ジャスティン役のジュリア・ガーナー、アーチャー役のジョシュ・ブローリン、いいですよねぇ。アレックス役の子役ケイリー・クリストファーはものすごい美少年。誰にも言えないまま勇気を振り絞る彼に声援を送りたくなりました。
今年いっぱいで日本での劇場配給業務を終了するワーナーブラザースジャパンが最後に放つ洋画。ホラーが苦手でなければオススメします。
『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』
『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』
監督:萩原健太郎
出演:水上恒司,木戸大聖,八木莉可子,綱啓永,JUNON,中沢元紀,曽田陵介,萩原護,高橋里恩,山下幸輝,濱尾ノリタカ,上杉柊平他
休みを取っていた平日、眼鏡屋さん→営業所に預けていた宅配荷物を引き取り→老健で父に面会→なんばパークスの駐車場に入庫して近隣の銀行と郵便局へ→なんばパークスでお昼ごはん。のんびり食事するつもりが、ふと時計を見たら本作の午後いちばんの回に間に合いそう。食後のお茶を一気飲みして上階へと向かいました。ちょうど予告編が終わったところでセーフ。
原作はにいさとるの同名不良漫画。講談社のウェブコミック配信サイト『マガジンポケット』にて2021年に連載が開始され、現在も継続中だそうです。映画化したのは『ブルーピリオド』(2024)や『傲慢と善良』(2024)の萩原健太郎監督。主演の水上恒司は約3年前までの芸名・岡田健史のときのイメージがすっかり消え去りましたね。前々から売れっ子ではありましたが、『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(2023)のヒットが大きいように思います。
喧嘩だけが取り柄の高校生・桜遥(水上恒司)は、不良の巣窟と言われている風鈴高校の「てっぺん」を取るためにわざわざ町の外からやってきて入学する。ところが風鈴高校の生徒たちは見た目こそ不良ながら、“防風鈴=ウィンドブレイカー”と呼ばれて町を守る存在だと知る。
商店街の人々にとって防風鈴は頼れる存在。たまたま遙がこの町にやってきた日によその不良から嫌がらせを受けていた橘ことは(八木莉可子)を図らずも助けることになった遙は、一瞬で人々の信頼を得てしまう。仲間なんて要らないし、ひとりでてっぺんを取るつもりだった桜には防風鈴がヒーロー気取りの集団に思えて仕方がない。現在のてっぺんだという梅宮一(上杉柊平)に会ってもどうも強そうな気がしない。
そんな防風鈴を敵視しているのが“獅子頭連”の連中たち。両者の間には境界線が設けられており、そこは踏み越えないのが暗黙のルール。しかしある日、商店街の店で鯛焼きを盗んで逃走した獅子頭連を追いかけた楡井秋彦(木戸大聖)が敵地に足を踏み入れたせいで、獅子頭連の頭取・兎耳山丁子(山下幸輝)はチャンスとばかりに防風鈴を潰しにかかり……。
何なんでしょうね、不良漫画の魅力って。どうでもいいと思いつつ観に行って、最後は泣かされてしまうことが多いです。なんで私こんなん観て泣いてるねんと思うことしょっちゅう(笑)。本作では梅宮がカッコイイ。誰よりも強いのに、自分からは決して手を出さないし、殴られてもびくともしない。頭取になれば自由で楽しいと考えていた兎耳山は梅宮のことが羨ましくてたまらず、防風鈴を自分のものにすれば梅宮のように毎日を楽しく過ごせるという妄想を抱いています。兎耳山のパンチを受ける梅宮は「おまえの拳は軽いんだよ」。軽いから痛くないんですと。渋いなぁ。拳のぶつかり合いが泣けてくる。あ、あと防風鈴メンバーの蘇枋隼飛を演じる綱啓永が最近の私のお気に入り。二枚目なのか三枚目なのかようわからん。三枚目の役のときのほうが好きだけど、どんな役のときもなんだか面白い若手俳優。
最後はみんな仲良しの大団円。安心の不良漫画です。
『鬼平犯科帳 兇剣』【特別先行版】
『鬼平犯科帳 兇剣』
監督:堀場優
出演:松本幸四郎,山口馬木也,浅利陽介,三木理紗子,趙民和,國本鍾建,渡辺いっけい,内藤剛志他
2日連続でNGKに行った日、その前にTOHOシネマズなんば別館にて本作を鑑賞しました。2026年1月10日に時代劇専門チャンネルで独占配信開始となるシリーズを劇場で先行公開。前夜に『ズートピア2』の字幕版を観たときとは客層が全然ちがう。当たり前のことですが、こちらは私がいちばん若いんじゃないかと思うぐらいの高齢層。階段でつまずかないか心配になります。(^^;
長谷川平蔵(松本幸四郎)は同心・木村忠吾(浅利陽介)を従え、父親の墓参のために京都を訪れる。墓参を終えて宿に向かう途中、何者かに追われている様子で逃げ惑う娘・およね(三木理紗子)を助ける。宿に連れ帰ったものの、およねは何も話そうとしない。事情がわからぬままではどうしようもないと、平蔵は旧知の仲である京都西町奉行所の与力・浦部彦太郎(内藤剛志)に預けることに。ところが、平蔵たちが奈良へ行くと知ったおよねは、自分も連れて行ってほしいと懇願する。平蔵と忠吾、彦太郎、そしておよねは奈良に向けて出発。すると、およねの命を狙う者が追いかけてきて……。
文句なしに面白い。ちょうど前週に人生初めての“生”歌舞伎を観たばかりで、松本幸四郎も演者のうちのひとりでした。それもあって画面の中の彼を観るのはタイムリー。彼と浅利陽介と内藤剛志それぞれのキャラクターが楽しいのに加えて、『侍タイムスリッパー』(2023)で一気にその名が知れ渡った山口馬木也が渋い登場の仕方。イケオジですねぇ。一方の悪役・高津の玄丹を演じるのは渡辺いっけい。憎たらしいことこのうえない。
家でテレビまで観る時間はそうそうつくれそうにありませんが、こうして劇場で上映されるときにはまた観に行きたいと思っています。





