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『HELP/復讐島』

『HELP/復讐島』(原題:Send Help)
監督:サム・ライミ
出演:レイチェル・マクアダムス,ディラン・オブライエン,エディル・イスメイル,デニス・ヘイスバート,ゼイヴィア・サミュエル,クリス・パン,タネート・ワラークンヌクロ,エマ・ライミ他

休日、武庫之荘でひとりランチのあと、TOHOシネマズ西宮へ。グラスのスプマンテとカラフェで白ワインを空けています。またまた「観るなら飲むな、飲むなら観るな」の掟を破っているわけで、これで寝ないはずがない。なのに一瞬たりとも寝ませんでした。『死霊のはらわた』(1981)のサム・ライミ監督の成せる技というべきか、目が離せないサバイバルホラー。予告編を観る限りでは、クソ上司からパワハラに遭っている女性部下を応援一択だったのに、えーっ。

金融管理会社の企画戦略部に所属する社員リンダ(レイチェル・マクアダムス)。その能力の高さは誰もが認めるところで、社長は彼女を副社長に据える約束をしていた。ところが社長が急逝し、その息子ブラッドリー(ディラン・オブライエン)が新社長に就任。 ブラッドリーはリンダの昇進を反故にするばかりか、自分の側近ドノヴァン(ゼイヴィア・サミュエル)にリンダの功績を横取りさせて副社長にしようとしている。このたびのバンコクへの出張に側近たちと共にリンダも同行させ、頃合いを見計らってクビにするつもり。ところが、嵐に見舞われた航空機は海に墜落。シートベルトを着用していたリンダとブラッドリーのみが命拾いし、ほかの連中は全員、空に投げ出されて死んでしまう。

タイランド湾に浮かぶ孤島で目を覚ましたリンダは、近くで失神しているブラッドリーを見つけると足の怪我の手当てをする。献身的な介抱によってブラッドリーは回復するが、孤島に二人きりになっても自分が上司だと思っているから、リンダに横柄でありつづける。業を煮やしたリンダは、このままならばブラッドリーに食糧も水も与えないと決める。リンダがいないと何もできないブラッドリーは態度を改めたかに見えたが……。

冒頭、まず予告編では気の毒にしか思えなかったリンダに違う印象を受けて驚きました。彼女は確かに仕事ができるけど、雰囲気を読めないイタい女。髪はボサボサでほぼスッピン、イケてないファッション。ブラッドリーが初出勤したとき、勤務時間中は自席での食事を禁じられているにもかかわらずサンドイッチをほおばっていたリンダは、咄嗟に引き出しの中にサンドイッチを隠します。この時点で私はオエーッ。ハダカのサンドイッチを引き出しの書類の上に置くって、どういう神経なんだ。目の前を素通りしようとするブラッドリーにリンダは笑顔を作って声をかけるけれど、口元にはマヨネーズで和えたツナが付いたまま。気持ち悪いったらありゃしない。握手を求められたブラッドリーは渋々応じたものの、彼の手にツナが付く。そういうことにリンダは何も気づいていないし、同僚たちが遊びに行く話に誘われてもいないのに加わろうとします。

こんなだからリンダを応援する気は失せていたところ、孤島でブラッドリーと二人きりに。そうするとやっぱりブラッドリーはクソなんですよね。サバイバル番組好きで何でもできるリンダに対し、ブラッドリーは何にもできないくせしてデカい口ばかり叩く。水の貯め方、魚の捕り方、食べられる植物など有り余るほどの知識を持つリンダ。イノシシまで仕留めるのですからたいしたものです。ブラッドリーもリンダに教えを請い、徐々にいろいろとできるようになるものの、リンダに敵うわけはありません。

救助船が来なくてもかまわないと思っているリンダは、むしろ救助船が来れば見つからないようにしたい。捜索は打ち切りになったというのにあきらめずにブラッドリーを探す婚約者がやってきたとき、どうするか。ここまでやっちゃうんですねぇ。それを知ったブラッドリーとの一騎打ち。って、二人しかいないんだから、常に一騎打ちなんですけど(笑)。とてもブラックで笑っちゃうオチです。そして、輝くばかりの微笑みを浮かべるレイチェル・マクアダムスはやはり美しい。ブスになろうと思えばなれるんだという驚きも。

自分の身は自分で守れ。

『クスノキの番人』

『クスノキの番人』
監督:伊藤智彦
声の出演:高橋文哉,天海祐希,齋藤飛鳥,宮世琉弥,子安武人,田中美央,神谷明,津田健次郎,杉田智和,八代拓,上田麗奈,飛田展男,大沢たかお他

前述の『ランニング・マン』の次に、同じく109シネマズ大阪エキスポシティにて。

東野圭吾の同名ベストセラー小説をアニメ映画化。原作を読んだときの感想はこちら。伊藤智彦監督はこれまでアニメの絵コンテを担当することが主だったようで、私が観た監督作は『HELLO WORLD』(2019)のみ。そちらはあまり印象に残っていないのですが、これはどうか。

直井玲斗は母親を早くに亡くし、父親は誰だか知らない。老舗の和菓子メーカー“たくみや本舗”の工場にようやく就職してまだ1週間だというのに、金箔紛失の責任を押しつけられて解雇される。濡れ衣を着せられて悶々としていたときにキャバクラに勤めていた頃の悪友からたくみやの売上金を盗む話を持ちかけられ、うっかりそれに乗ってしまったところ、逃げ遅れた玲斗だけが捕まってブタ箱行き。

自分に身寄りなどひとりもいないと思っていたのに、玲斗の母親の異母姉、つまり伯母の柳澤千舟が現れる。千舟は大企業“ヤナッツ・コーポレーション”の顧問。玲斗の弁護士費用等をすべて払って釈放させる代わりに“クスノキの番人”となるように命じられる。クスノキの番人とは、柳澤家が所有する月郷神社の管理人となり、不思議な言い伝えのあるクスノキを守るのが役目で……。

昔ほど心に突き刺さる東野圭吾の著作に当たらなくなってから何年にもなります。本作を読んだときも、それなりには良かったけれど以前の切なさはないなぁと思っていました。その映画版だから、たいして期待していなかったおかげなのでしょうか、意外と切なかった。こんなアニメ映画化もありですね。

満月の夜と新月の夜、血縁関係にある者がそれぞれに預念と受念をおこなう「祈念」。クスノキに想いを預け、その想いを受け取るのです。念じたことだけが届くのではなく、その人の人生すべてを見せられることになるから、受け取り手は時に抱えきれない場合もある。今さらですが、こんなことを思いついた東野圭吾はやっぱり凄いのかなと思う。

音楽がデカすぎたり(私の耳の問題か!?)、ここでラップはちょっと違うと思ったり、いろいろと腑に落ちないことはあります。でも東野圭吾を久々に良いと思ったのは確か。

『ランニング・マン』

『ランニング・マン』(原題:The Running Man)
監督:エドガー・ライト
出演:グレン・パウエル,ウィリアム・H・メイシー,リー・ペイス,エミリア・ジョーンズ,マイケル・セラ,ダニエル・エズラ,ジェイミー・ローソン,ケイティ・オブライアン,コールマン・ドミンゴ,ジョシュ・ブローリン他

封切りの日、仕事帰りに109シネマズ大阪エキスポシティにて。

1982年にスティーヴン・キングがリチャード・バックマン名義で発表した『バトルランナー』は、アーノルド・シュワルツェネッガー主演で1987年に映画化されました。原作とはずいぶん異なる内容でしたが、舞台は2025年。約40年後にはこうなっているのかもしれないと、もし少しでも思われていたなら可笑しいですよね。1987年版の『バトルランナー』に比べると原作に忠実なのが本作。このたびの監督は『ベイビー・ドライバー』(2017)や『ラストナイト・イン・ソーホー』(2021)のエドガー・ライト。お気に入りの監督です。主演は『トップガン マーヴェリック』(2022)のハングマン役、グレン・パウエル。こうなると絶対に見逃せない。

貧富の差が広がるばかりの近未来。ベン・リチャーズはちょっぴり強い正義感が災いして、同僚を助けようとするたびに解雇の憂き目に遭って職を転々。人格に問題ありとされてついに転職先もなくなってしまう。重病の娘キャシーの治療費を稼ぐために妻シーラが危険な仕事に出かけようとするのを止め、巨額の賞金が懸かるリアリティショー“ランニング・マン”への参加を決意する。

全世界が熱狂するこのショーのルールは、プロのハンターの追跡をかわして30日間逃げ続ければ勝利というもの。ハンターに捕まれば直ちに殺され、これまでに成功者はいないというデスゲーム。オーディションに出向いたベンはトップの成績を叩き出し、ほかの2人と共にランニング・マンに選出される。1日生き延びればボーナス、ハンターを殺せばまたボーナスを受け取れるが、ランニング・マンの目撃情報を送った視聴者もボーナスが貰えるから、全世界を敵に回したも同然。味方がいないなか、ベンは命懸けの戦いに挑むのだが……。

冒頭、ドル札に印刷されているのがシュワちゃんの肖像画で笑う。『バトルランナー』へのオマージュですね。こういうお遊びは楽しい。

意外と何でもできる役者グレン・パウエルはベン役も大当たり。この悪辣な番組を仕切るダン・キリアン役のジョシュ・ブローリンがまたたまらんほど嫌な奴で、憎しみしか湧いてきません。予想外のことは起こらないステレオタイプの作品とも言えるけど、ベンしか勝たんと思って観ていられるから楽チン。

ほかのランニング・マン、特に紅一点(だけどイカつすぎる)ジェニー・ラフリン役のケイティ・オブライアンがもう少し活躍するかと思ったのに、見せ場が少なく。全世界が敵かと思いきや、やがてベンを応援する人々で溢れるようになるのも普通の流れ。しかしベンの頼れる知人モリー役のウィリアム・H・メイシーが速攻で殺されてしまうのは気の毒すぎて笑った。フェイク画像に騙されることなく最初からベンを助けようとするブラッドリー役のダニエル・エズラやその弟を演じる子役のアンジェロ・グレイが頼もしいし、ブラッドリーの紹介でベンが頼るエルトン役のマイケル・セラも面白い配役。

娯楽作品以外の何物でもない。頭のなか空っぽにして観ましょう。貧富の差がどうとか考えるのは無しで。

『安楽死特区』

『安楽死特区』
監督:高橋伴明
出演:毎熊克哉,大西礼芳,加藤雅也,筒井真理子,板谷由夏,下元史朗,鳥居功太郎,山崎翠佳,海空,影山祐子,外波山文明,長尾和宏,くらんけ,友近,gb,田島令子,鈴木砂羽,平田満,余貴美子,奥田瑛二他

MOVIXあまがさきにて、前述の『終点のあの子』の次に。

監督は『夜明けまでバス停で』(2022)や『桐島です』(2025)の高橋伴明監督。原作は終末期医療の重要性を訴えつづける医師であり作家である長尾和宏の同名小説。彼の著作『痛くない死に方』(2020)を映画化したのも同監督です。

安楽死法案”が可決された近未来の日本。若年性パーキンソン病を患うラッパーの章太郎(毎熊克哉)とその恋人でジャーナリストの歩(大西礼芳)は安楽死に大反対。コロナワクチン接種の影響もあって症状が進んだ章太郎が余命半年を宣告された今、安楽死を望んでいると見せかけて安楽死特区の施設に入居すれば、特区の実態を告発できるだろうと考える。しかし、病が進行するにつれて心情に変化が現れて……。

安楽死を望むからと言って誰でも認められるわけではありません。まずそれが本人の意思でなければならないし、耐えがたい心身の痛みを伴っていることも条件のひとつ。章太郎のほかに入所しているのは、末期癌に苦しむ63歳の男性(平田満)と認知症と診断された元漫才師の女性(余貴美子)。前者と離婚を考えていた妻(筒井真理子)は、夫が末期癌だと知らされて別れられなくなります。後者は記憶がすべて失われる前に死にたいと切に願う。条件をクリアして入居が叶ってもすぐに安楽死できるわけではなく、奥田瑛二加藤雅也板谷由夏らが演じる医師と何度も面談をおこないながら、本当に安楽死したい気持ちが変わらないかを確かめられます。

エンドロール後に長尾医師とかつて安楽死を望んでスイスへと渡った女性の対談が収められています。30歳で安楽死を決めたけれど、父親が泣いて泣いて結局安楽死をやめたそうです。死にたいエゴと死なせたくないエゴ。難しい。やっぱり、自分では何もできなくなる前に死にたいかな。

『終点のあの子』

『終点のあの子』
監督:吉田浩太
出演:當真あみ,中島セナ,深川麻衣,石田ひかり,平澤宏々路,南琴奈,新原泰佑,小西桜子,野村麻純,陣野小和他

仕事帰りにMOVIXあまがさきまで行くのは結構面倒なのですが、観たかった2本をハシゴするにはここしかありませんでした。職場からこの劇場まで往路はいつもすんなり行けるけれど、復路はなぜか毎回思い描いていた道に出ることができず、伊丹から帰りたいのに園田経由で帰るはめになります。嗚呼、方向音痴はツライ(泣)。

原作は柚木麻子のデビュー小説。監督は『女の穴』(2014)や『夜、鳥たちが啼く』(2022)の吉田浩太。ちなみに柚木麻子といえば昨年『Butter』が英国推理作家協会主催のダガー賞の候補にもなりました。ダガー賞は1950年代に創設された由緒正しい賞で、当時は英国作品もそれ以外の国の翻訳作品も同賞の対象としていましたが、2006年からはそれらを分けて審査しています。翻訳作品を対象とするインターナショナル・ダガー賞を2025年に受賞したのは王谷晶の『ババヤガの夜』。過去にはパトリシア・コーンウェルだとかミネット・ウォルターズだとかサラ・パレツキーだとかピエール・ルメートルだとか、世界的に有名な作家が受賞者として名を連ねるダガー賞で、日本人女性作家が2名もノミネートされたのは快挙ですよね。ついでながら、日本人男性作家でノミネートされたことがあるのは横山秀夫東野圭吾伊坂幸太郎です。

中高一貫の私立女子高校で内部進学した希代子(當真あみ)。目立ちすぎることなく周囲に合わせた学校生活を送っていた彼女の前へ、外部から入学してきた朱里(中島セナ)が現れる。有名なカメラマンである父親に同行して海外暮らしも経験してきた朱里は自由奔放。当然クラスでは浮き気味となった朱里は、なぜか希代子に声をかけてくる。希代子は朱里といるのが楽しくて、中学時代からの親友・奈津子(平澤宏々路)とはついつい距離を置きがちに。

ある日、希代子は朱里から学校をさぼって江の島へ行こうと誘われるが、途中で怖じ気づき、朱里と別れて学校へと戻る。それをよく思わなかったらしい朱里は日記に希代子の悪口を書き綴り、その日記を見つけてしまった希代子が朱里を避けるように。日記には希代子以外のクラスメートたちの悪口も書かれていたため、希代子はわざとその日記を皆の目につくところに置き、朱里を仲間はずれにしようとする。スクールカーストのトップにいる恭子(南琴奈)も自分の大学生の彼氏と朱里が親しげにしていることに腹を立てていたから、今まで目も向けなかった希代子を持ち上げはじめて……。

私にはちょっと難解。朱里は明らかに異質な存在で、ひたすら息を潜めて生きてきた希代子が憧れる気持ちもわからなくはないけれど、別に可愛くもない朱里がクラスメートたちのことを見下して悪口書き放題。それがバレたらそりゃ一緒にいるのは嫌になるでしょう。朱里の自業自得に思えます。恭子とその取り巻きたちは、希代子を散々ヨイショして朱里を外し、いざこれが問題となると、すべて希代子のせいにしようとします。謝罪するならばむしろ朱里のほうだと思いますが、朱里は絶対に謝らないし、希代子が朱里とどうなりたいのかはわからず。

最後に唐突にふたりが踊り出すのも陳腐に映ってしまい、女子の嫌な部分のみが頭と心に残りました。