『九龍ジェネリックロマンス』
監督:池田千尋
出演:吉岡里帆,水上恒司,栁俊太郎,梅澤美波,フィガロ・ツェン,花瀬琴音,諏訪太朗,三島ゆたか,サヘル・ローズ,関口メンディー,山中崇,嶋田久作,竜星涼他
6月に1週間、タイから帰国していたダンナが、どうしてももう一度帰国せねばならない用事ができて、8月の最終土曜日の朝帰国、日曜日の朝にはまたタイに戻るという24時間滞在。同じ週末、向こうが幼稚園児の頃から知っている男子(もう40代半ばだけれど(笑))が来阪中で、わぁ、せっかくダンナの帰国日と重なっているのに、双方忙しくてどうにも都合があわないよねぇと会うのは断念。と思いきや、その男子から「日曜日の朝、関空で会うのは無理ですかね」と再び連絡あり。「それ、ええやん!」と朝7時半すぎに関空で待ち合わせることに。ダンナの帰国時はいつもなら蛍池駅のリムジンバス乗り場まで送るところ、この日は私の運転で関空まで行きました。3人でモーニング。機会は作る気になりゃ作れるものですねぇ。
3人で約3時間しゃべり倒し、それぞれ搭乗口に向かうのを見送って私は帰る。そのまま帰ってもよかったのですけれど、せっかくこんなところまで来たんだから普段は行かない劇場へ行ってみたくなり、イオンシネマりんくう泉南へと向かいました。ここに来なきゃ観られない作品を上映しているわけでもないのに。でもなんか楽しいじゃないですか。そしてたまげたのは、イオンモールりんくう泉南は駐車場代をいっさい取らないということ。もぎりのお姉さんに「駐車サービスはどちらで受ければよいですか」と尋ねたら、「ウチ、駐車場はタダなんで」。ひょえ〜。土日もタダなんすか。精算機すら設置されていないことに驚く。
原作は眉月じゅん(♀)が『週刊ヤングジャンプ』にて2019年から連載中の同名人気漫画。監督は『君は放課後インソムニア』(2023)の池田千尋。『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』で九龍の魅力を見せつけられた私は、タイトルを聞いただけでテンションがあがる。
九龍城砦に暮らす鯨井令子(吉岡里帆)は勤務先も城塞にある不動産屋。なぜか令子にはいっさいの記憶がない。この街のことを何でも知っている先輩社員の工藤発(水上恒司)にあれこれ聞くうち、令子は発に恋をするが、どうも発が令子の中に別の女性を見ているような気がする。そんな折、発と親しいタオ・グエン(栁俊太郎)と知り合いになり、かつて発には令子そっくりの婚約者がいたことを知らされて……。
寝不足で鑑賞に臨んだことを言い訳にします。はい、だいぶ寝ました(笑)。それでも話について行ける程度には起きていたはず。九龍の住人はクローンを作ることができるらしくて、発の婚約者だった令子が死んでしまったときに、令子のクローン“鯨井B”が誕生。普通はオリジナルとクローンがいて、オリジナルが死ぬとクローンも死んでしまうのに、令子の場合はオリジナル不在の状態でクローンが生きている。そこに目をつけたのが美容外科医の蛇沼みゆき(竜星涼)。令子を調べ上げてクローンのみになっても生きられる理由を解き明かそうとしています。
クローンは九龍から一歩出た瞬間に人間の体を失って霧散する。自分がクローンであることを知った令子Bが、クローンであっても発への気持ちは確かなものだからきっと消えることはないと九龍から外へ飛び出します。やっぱり消えちゃったかぁと思った後のエンドロール、そしてその後。きっちり最後までご覧ください。
2回目の『国宝』
観るものがないんだってば。109シネマズ大阪エキスポシティにて『大長編 タローマン 万博大爆発』を観たあと、ハシゴするものはないなぁと思ったけれど、『国宝』は封切り日に観たきり。大ヒット中のこれをもう一度観ることにして、109シネマズ箕面へ。
平日の晩21:40上映開始の回で終了は23:45。私は車だからいいとして、電車で観に来ている人とかいらっしゃるんですかね。終電に間に合わないでしょ。なのに凄い混雑ぶり。『F1/エフワン』の再上映がババ混みなのも嬉しいし、こうして『国宝』が大ヒットを飛ばしているのも嬉しい限り。
2回目になかなか手が出なかったのは、複数回観るには体力を要する作品だと思ったからです。物理的に約3時間の長尺だというだけなら、『国宝』の175分よりも『RRR』(2022)はさらに長い179分だけど18回観たし、そこまで長くはないけれど135分の『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)は31回、131分の『トップガン マーヴェリック』(2022)は36回観ました。今年に入ってからは124分の『ファーストキス 1ST KISS』も6回観ています。『F1/エフワン』だって155分あるのにすでに5回観ていますし。
『国宝』はなんとなく軽い気持ちでは観られない。日本の伝統芸能ということもあるのかもしれませんが、背筋を張って観なければいけない気持ちに駆られます。2回目は寝るよねぇと思ったのに寝ませんでした。吉沢亮と横浜流星の美しさに魅了されるし、そこにいる誰もが真摯に撮影に臨んだ空気が伝わってきて、見入ってしまいます。
1回目に観たときに好きだったシーンがやっぱり好きです。渡辺謙演じる花井半二郎が事故に遭って入院し、自身の公演『曽根崎心中』の代役に息子の俊介(横浜流星)ではなく喜久雄(吉沢亮)を抜擢したとき、俊介が喜久雄に「泥棒やないか。……とでも言うほうがおもろいんやろうけど」と言う。逆に喜久雄が出て行くことになったときに追いかけてきた俊介に向かって、喜久雄が「結局血ぃやないか。……とでも言うほうがおもろいんやろうけど」と言うやりとり。その後で殴り合いにはなってしまうけれど、このふたりの絆には血以上のものを感じます。
田中泯の凄みに圧倒されるのは言うまでもなく、冒頭だけ登場の永瀬正敏の組長っぷりも圧巻。三浦貴大の役も好きだなぁ。かねてから注目していた見上愛(藤駒役)が本作でブレークした感があって嬉しい。最初は小松菜奈に似ていると思って気になっていただけでしたが、本作をきっかけに違う目で見ることができそうです。
こうして2回目に足を運ぶと弾みがついてまた行こうかなという気になる。観るものがなくなれば検討します。
『大長編 タローマン 万博大爆発』
『大長編 タローマン 万博大爆発』
監督:藤井亮
出演:山口一郎
数カ月前から予告編はさんざん目にしていました。ばーくはつだ、ばーくはつだ♪という歌詞とメロディーが頭にこびりついて離れず、仕事中もよく口ずさんでいたけれど、これがどういう作品なのかさっぱりわからず。109シネマズ大阪エキスポシティでは公開週に舞台挨拶付きの回が上映され、チケットが販売開始となっていることに私が気づいたときにはすでに完売。何この人気!?と思いつつ、普通上映開始になってからでいいやとスルー。割引のある翌週水曜日に観に行きました。
観はじめてからもなんだかよくわからない。予告編にも登場していたサカナクションのフロントマン・山口一郎と本作はどういう関係なんですか。本編前に自己紹介があり、本編終了後にまたお会いしましょうとの台詞。私はどういう姿勢で鑑賞に臨めばよいのか困惑してしまい、結局最後までそんな感じのままでした。もうちょっと予習してから行けばよかったと後悔。
作品自体の色調はレトロ。旧作の再上映なのかなと思ったけれど、鑑賞前に唯一名前を調べていた藤井亮監督は1979年生まれだから、1970年の大阪万博のときにはまだこの世に誕生していない。ならば新しく撮影したモキュメンタリー作品ってことでしょうか。それにしたって出演陣は知らない俳優ばかり。ここに出てくる岡本太郎はご本人なのかしら。わからない~。
で、鑑賞後に調べてようやくわかる。本作自体はやはりモキュメンタリーなわけですね(と言っていいのかどうか自信はないけど)。「太陽の塔をはじめとする岡本太郎の作品群をモチーフにした特撮ヒーロー番組が1970年代に放送されていた」という架空の設定。で、当時放送されていたとする架空の特撮番組を実際に制作し、これまたタローマンマニアという設定の山口一郎が解説を担当する形で放送したのがNHKの『TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇』。その劇場版が本作なのだそうです。
2025年の未来から1970年の奇獣がやってきます。彼らの目的は2025年の関西万博を消滅をさせること。その阻止に立ち上がったのが地球防衛軍とタローマンらしい。あまりにわからなくて私は寝ちゃったんですが、こうして調べて書いてみてようやくわかりました。わかったうえでもう一度観に行きましょうかね。
居眠りはしたけれど、岡本太郎の金言はわりと心に残ります。そして「でたらめ」であることが時には大切だということも。気を張ってばかりじゃなくて、でたらめに生きてみよう。他人様には迷惑をかけない程度に(笑)。
5回目の『F1/エフワン』と2回目の『バレリーナ:The World of John Wick』
仕事帰りにシュッと寄れる劇場では本当に観るものがなくて。『F1/エフワン』なんてまだまだ客が入りそうだったのに、追いやってくれちゃった『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が恨めしいと思っていたところ、109シネマズ大阪エキスポシティで1週間限定の再上映。
1回目は同劇場でIMAXレーザーGT版を観て、2回目は109シネマズ箕面でScreenX版、3回目は109シネマズ大阪エキスポシティで4DX2D版、4回目はシアタス心斎橋のグランシアターで鑑賞しました。5回目は1回目と同じくIMAXレーザーGT版。平日の晩1回のみの上映で連日大入り、ほぼ満員。私と同じく上映終了を寂しく思っていた人が多いんだと思うと、嬉しくて涙が出そうになります。
何度観てもオープニングからテンションが上がる。ハンス・ジマーの音楽が本当に良いし、クイーンの“We Will Rock You”がかかるシーンなんかはさらに気分が高揚。もしかすると36回観た『トップガン マーヴェリック』(2022)よりも私はこっちのほうが好きかもしれないと思うほど。
以前にも書いたことがありますが、日本人俳優って、笑うのがあまり上手でない人が多いような気がします。泣くのはみんな上手い。でも私たちだって、たぶん泣きマネはできるけど、心底笑っているふりをするのは難しい。すぐバレる。人の不幸には共感しやすいけれど、人の幸せを一緒に喜ぶのは嫉妬も絡んだりして簡単ではないということもあるのかなと思います。それを思えば、このブラピの笑顔は凄い。優しい笑顔のときもあれば、阿呆みたいな笑い方のときもあって、でもどれも演技という感じがしないんです。ジョシュアとソニーが映る写真のアホ面にはいつも笑ってしまう。ジョシュアがいとこから「あのチャック・ノリスに勝てよ」と言われているのも可笑しい。
客がめちゃめちゃ入っているから、もしや1週間限定の再上映が延長になるかもしれないと思っていたら、はい、そのとおり。ただし、今度は上映終了時刻が24:00という回のみで、さて、客入りはどうなるでしょう。きっとそれでも入ると思う。もういっぺん観に行こう。(^o^)
さて、これだけ観たら帰ってもよかったのですが、ららぽーとEXPOCITYの営業終了時間と重なると出庫に時間がかかる。で、ついでにもう1本観て帰ることにして、2回目の『バレリーナ:The World of John Wick』。1回目は通常版で今回は4DX2D版。洋画は字幕で観る派とはいうものの、字幕版は鑑賞済みだから吹替版を観たかったのに、字幕版しか上映していません。どんな作品でもたいてい客のよく入る4DX2Dだけど、時間が遅いこともあってか客は私を含めて3人のみ。たぶんあとのおふたりは初見でしょう。私のようにこんな短期間に2回目を観に来る奴はそうそういない(笑)。
劇場ではいつも靴を脱いで座席に体操座りをして観ていますが、4DX2Dシアターの座席は動くから、そんな体勢で観たことはありませんでした。今回は客も少ないし、疲れているし、いつもと同じ体勢で観ようと靴を脱いだら、あらら、座席が動くたびにずり落ちそうになります。隣2つ向こうの座席の「水噴射」のスイッチも切ってやったけれど、それでも水って飛んでくるのね。しかもやっぱりエアコン効き過ぎで寒い。上着を着込んでもまだ寒くて凍え死にしそう。このシアターで半袖でいられる人って何!?と思いました。
はい、こちらも2回目でも面白かったです。新たな発見は何もないけれど。観るものがなくなったらまた観てもいいぐらい面白いです。
『リンダ リンダ リンダ』【4K】
『リンダ リンダ リンダ』
監督:山下敦弘
出演:ペ・ドゥナ,前田亜季,香椎由宇,関根史織,三村恭代,湯川潮音,山崎優子,甲本雅裕,松山ケンイチ,小林且弥,小出恵介,三浦哲郁,三浦誠己,りりィ,藤井かほり,浜上竜也,山本浩司,山本剛史,近藤公園,ピエール瀧他
芦屋でランチしてべろべろに酔っぱらった後、朝イチで『パルテノペ ナポリの宝石』を観た大阪ステーションシティシネマに戻り、2005年製作の本作を観ました。2005年当時、『バカのハコ船』(2002)や『リアリズムの宿』(2003)を観て山下敦弘監督のことを面白い作品を撮る人だなぁと思っていました。なのにそれよりもずっと話題になった本作はなぜか観ていなかったのです。20年経った今、再上映してくれて嬉しい。
芝崎高校軽音楽部。高校生活最後の文化祭を3日後に控えて途方に暮れる女子3名。もとは5名だったのだが、ギター担当者が指を骨折したことに端を発してメンバーが決裂。ギターとボーカルがバンドを抜け、残ったのはドラムの響子(前田亜季)、キーボードの恵(香椎由宇)、ベースの望(関根史織)。そんなとき、偶然耳にしたブルーハーツの“リンダ リンダ”。これなら3人しかいなくても演奏できるんじゃないだろうか。そこをたまたま通りかかった韓国人留学生ソン(ペ・ドゥナ)に声をかけ、ボーカルに抜擢。ギターは必須だから、キーボード担当だった恵がやむを得ずギターを弾くことに。こうして誕生した急造バンドは、本番に向けて猛練習を開始する。
韓国から来てなかなか周囲になじめずにいたソンが恵から突然声をかけられてふたつ返事で引き受けるところに笑う。ソンには何でも適当に返事をしてしまうところがあって、このときも深く考えずにした返事。けれど終盤、恵に「ありがとね。バンドに誘ってくれて」と言うシーンを見れば、やっぱり嬉しかったのだろうなぁと思います。青春って素敵だなと思わずにはいられない。
この4人ももちろん今でも活躍中ですが、それよりもむしろ脇役だった男子たちが成長して俳優としていま活躍しているのが興味深い。響子が片想い中の一也を演じる小林且弥は『水平線』(2023)で俳優としてのみならず監督デビューを果たし、ソンに好意を寄せる裕作役の松山ケンイチの売れっ子ぶりについては言わずもがな。恵の元カレ役が三浦誠己で、小出恵介とピエール瀧はいろいろあったけど復活していますし。今の彼らを知っていれば、かつての彼らを見られるのはうんと楽しいものですね。あ、周知の事実でしょうが、ブルーハーツの甲本ヒロトの実弟である甲本雅裕の先生役もとても良い。
カラオケ店が出てくるのは同監督の『カラオケ行こ!』(2023)の伏線かしらと思っちゃいませんか(笑)。