『わたしを離さないで』(原題:Never Let Me Go)
監督:マーク・ロマネク
出演:キャリー・マリガン,アンドリュー・ガーフィールド,
キーラ・ナイトレイ,シャーロット・ランプリング他
なんとなく観に行ったら満席でした。
原作は、英国の文学賞の最高峰、ブッカー賞の最終候補作。
著者のカズオ・イシグロは、長崎で生まれたものの、幼少時に渡英。
日本語はほとんど話せないそうで、成人してから英国に帰化しました。
彼は本作以前に『日の名残り』ですでにブッカー賞を受賞しています。
前知識なく、純文学が原作だからと思っていると、
かなり突飛な前提にとまどい、入り込むまでにしばし時間を要します。
でも、そのとまどっている時間が結構楽しかったので、
何も知らずに観るほうがいいかもしれません。
と言いつつもあらすじを。
冒頭は1994年の病院らしき建物の中。
ガラスのこちらには、27歳の介護士だという女性キャシー。
ガラスの向こうの手術台に横たわって微笑む男性患者を見つめる。
時代は20年前にさかのぼる。
緑豊かな田園地帯にひっそりとたたずむ寄宿学校“ヘールシャム”。
外界からは完全に隔離され、生徒たちは徹底した管理下に置かれている。
ここでずっと一緒に育ってきた少女キャシーとルース、少年トミー。
想いを寄せ合うキャシーとトミー。ルースもそれを知っていたはずなのに、
あるときからルースがトミーに寄り添うようになる。
トミーへの想いを必死で抑え、ルースとの友人関係を保ち続けるキャシー。
18歳を迎えた3人は、ヘールシャムを卒業して、農場のコテージへ。
他の学校の卒業生たちと共に、共同生活を送る。
コテージでの生活は、基本的には自由。
初めて外の世界と接し、3人の関係にも変化が現れるのだが……。
あとはどこから書いてもネタバレになってしまいます。
これはわかって驚きの、近未来ではなく、過去を舞台にしたSF。
今から半世紀前には人間のクローン製造がなされていたという設定です。
ヘールシャムの子どもたちは、みんなクローン。
オリジナルが病魔に冒されたときに、臓器を提供するための。
その運命を、当然のように受け入れているのです。
それでも、もしかしたら「終了」を延期させられるのではないかと、
飛び交う噂を好意的に考えようとする生徒たち。
自分のためではない、人のために受けた生。
せつなさと、やりきれなさでいっぱいになります。
そして、人と向き合うことの意味を考えました。
近日中に原作を読みます。
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