『シリアにて』(原題:Insyriated)
監督:フィリップ・ヴァン・レウ
出演:ヒアム・アッバス,ジャマン・アブー・アブード,ジュリエット・ナヴィス,
モフセン・アッバス,ムスタファ・アル・カール他
そろそろ1カ月前の話になってしまいますけれども。
シルバーウィーク中は毎日映画を観るつもりが、体調を崩しました。
単純に疲れていたので、ゆっくり昼寝する日まで設けた翌日、
もう映画を観に行ってもええやろとテアトル梅田へ。
ベルギー/フランス/レバノン作品。きつかった。
内戦が続くシリアの首都ダマスカス。
アパートメントの一室で息を潜めて暮らすある家族。
仕切っているのは中年女性のオーム。
戦地に赴いた夫に代わり、家族を守ろうと必死。
室内にいるのは、オームと子ども3人、義父、家政婦と、
娘に会いに来たまま帰れなくなった彼氏。
そして、階上の部屋で爆撃に遭ったために住居を失った家族。
その家族は若夫婦と生まれたばかりの赤ん坊で、
夫婦は知人の仲介で今晩ベイルートへ逃亡することを決めている。
ところが、若夫婦の夫サリームが出かけたところ、
スナイパーに撃たれて車の影に倒れ込む。
家政婦のデルハニがまさにその瞬間を目撃し、
震えながらオームに知らせたところ、
オームはサリームの妻ハリマには絶対に知らせるなと言う。
まだ生きているかもしれないのに。生死を確認しないのか。
とにかくハリマに知らせるべきではないのか。
だからと言ってデルハニには表に出る勇気はなく……。
86分と短めの作品なのに、濃い、重い。
家政婦を雇っているぐらいですから、そこそこ富裕だと思われます。
家の中の家具などを見てもチープな感じはしない。
とっとと安全な場所へ移ることはできなかったのかとも思うけれど、
オームはここは自分の家だからと決して動こうとしません。
夫が殺されたであろうことを知らされないままのハリマが哀れ。
住人のいなくなった部屋に盗みに入る男たちがオーム宅に押し入ったとき、
オームは家族全員に台所に隠れるように言いますが、
隠れ損ねたハリマが男たちに強姦されかけてもオームは出て行かない。
相手は2人なんだから、家族全員で反撃すればいいのに、酷いオバハンやと思ったりも。
でもそれは内戦のない平和な国で生まれ育ったから思うことで、
きっとシリアの人たちはいつも死をそばに感じ、生き抜こうとしているのでしょう。
戦争の終わるときがわかっていればまだいいのに。
いつこれが終わるかわからないまま暮らすって、つらすぎる。
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