『ジョーカー』(原題:Joker)
監督:トッド・フィリップス
出演:ホアキン・フェニックス,ロバート・デ・ニーロ,ザジー・ビーツ,フランセス・コンロイ,
マーク・マロン,ビル・キャンプ,グレン・フレシュラー,シェー・ウィガム他
TOHOシネマズ梅田にて。
ずいぶん前から劇場で予告編を目にしていました。
あのジョーカーなのだと知ったときは驚きました。
かつて映画実写版でジョーカーを演じたことがある俳優は、
『バットマン』(1989)でジャック・ニコルソン、
『ダークナイト』(2008)でヒース・レジャー、
『スーサイド・スクワッド』(2016)でジャレッド・レトーなど。
ジャック・ニコルソンはもとからおかしいとして(笑)、
ジョーカーを演じると取り憑かれたようになるふしがあります。
本作のホアキン・フェニックスもそう。
取り憑かれた結果なのかどうかはわかりませんが、
ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞の受賞を果たしました。
アメコミが原作の作品としては史上初となる快挙だそうで。
さらには本作の内容がアメリカで物議を醸しているらしく、
ものすごい話題作となっています。
監督は『ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える』(2009)のトッド・フィリップスで、
この人、『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』(2006)の原案者。
いやはや、すごく多彩であることは明らか。
アメリカの大都市ゴッサム・シティ(架空の都市)。
コメディアンとして成功することを夢見る中年男アーサー・フレックは、
病弱な母親ペニーは、30年前にゴッサムの名士トーマス・ウェインの屋敷で働いていたと言い、
この貧しい暮らしから助け出してほしいと毎日のようにトーマスに手紙を書いている。
当然のことながら、トーマスからの返信はない。
真面目で優しいアーサーだが、ピエロとして派遣された先で時に不気味がられ、
また、不良少年たちから暴行を受けたりも。
ある日、そんなアーサーのためを思ってか思わずか、同僚が彼に銃を押しつける。
その銃が派遣先の施設でポケットから滑り出てしまい、場は騒然。
雇い主からクビを宣告される。
うちひしがれて帰る途中、地下鉄で金持ちの酔っぱらい3人が女性に絡んでいるのを見て、
注意を引こうと笑い声を上げたところ、3人から殴られ蹴られる。
つい銃を発砲すると思いのほか気分がスッキリ、3人とも追いかけて撃ち殺すのだが……。
貧富の差が激しく、街には不満を抱く者がいっぱい。
そこへ登場した正体不明のピエロを英雄視する貧困者たち。
人生に絶望した男が無差別に銃を乱射する事件を思い起こさせ、
それをまるで称賛しているかのようだと批判があるようです。
私はといえば、あのジョーカー誕生の物語として観ているから、
そことはまったく繋げて考えることはしませんでした。
ただ真面目につましく生きている人が虐げられ、
援助も打ち切られて誰も頼ることのできない状況に、
これって貧乏人は死ねと言われているのと同じやなと辛くなりました。
アーサーの憧れのコメディアン役にロバート・デ・ニーロ。
彼の番組でアーサーを取り上げたら、反響大きくアーサーに出演要請。
しかしアーサー自身が言うように、善意で呼ばれたとは思えない。
彼を笑い者にしようという意図が見え見えで、これも辛い。
金持ちの、人気者の、奢った様子が透けて見えます。
あばら骨が見えるほど痩せたホアキン・フェニックスの役者魂に脱帽。
これ、最初はレオナルド・ディカプリオに打診されていたのですね。
ディカプリオだったらどうなっていたかなぁ。
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