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『サウルの息子』

『サウルの息子』(原題:Saul Fia)
監督:ネメシュ・ラースロー
出演:ルーリグ・ゲーザ,モルナール・レヴェンテ,ユルス・レチン,
   トッド・シャルモン,ジョーテール・シャーンドル他

先週の日曜日にシネ・リーブル梅田で2本ハシゴの1本目。
観た翌日が第88回アカデミー賞の発表で、本作はみごと外国語映画賞を受賞。
監督はこれが長編デビュー作となるハンガリーの新鋭。

1944年10月、ポーランド南部のアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所
ハンガリー系ユダヤ人のサウルは“ゾンダーコマンド”として働いている。

ゾンダーコマンドとは、同胞のユダヤ人をガス室へと送り込み、
処置後のガス室を清掃したり、折り重なる死体の処理をおこなったりする係。
収容所運営のための協力を任されているわけだが、
時機が来ればゾンダーコマンドも殺されてしまう。
それがわかっていながら黙々と仕える彼ら。

ある日、ガス室でまだ息のある少年を発見。
ガス室に送られたにもかかわらず、死なない者がわずかだがいる。
しかし死ななかった者は結局ただちに殺され、解剖されるのだ。
すぐに息の根を止められた少年の顔を見て、サウルは自分の息子だと確信する。

せめて解剖を回避して、ユダヤ教の教義に則った方法で弔いたい。
火に焼かれることなく埋葬してやりたい。
そう考えたサウルは、ナチスの目をかいくぐり、遺体を持ち出そうとすると同時に、
同胞の中からラビを探し出そうと躍起に。

一方、ゾンダーコマンドたちはひそかに脱走を計画。
騒ぎを起こすために火薬などを入手しようと策を練るのだが……。

収容所といえば相当広かったはず。そう思って後日調べてみたら、
ビルケナウの総面積は1.75平方キロメートルで、東京ドーム約37個分の大きさ。
しかし、ネメシュ・ラースロー監督は全景を見せることはあえてしません。
広いはずなのに暗くせせこましい。ただならぬ圧迫感。
見える空間を抑えることによって、ユダヤ人たちの息苦しさを表現しているかのよう。
また、虐殺シーンも全容は見せません。
観客が想像するに足る程度は見せておく、映像の切り取り方が上手い。

本当にサウルの息子だったかどうかすらわからない。
いや、たぶん本当はそうではないのだと思います。
けれど、少年に尊厳ある死をもたらせたかった。
そのために奔走するサウルの姿は狂気じみていて、切ない。

とても印象に残るラストシーンです。
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