『死刑弁護人』
監督:齊藤潤一
出演:安田好弘
ナレーション:山本太郎
ちょっぴり二日酔いの朝、重たい頭と眠い目で第七藝術劇場へ。
現在55件の事件を抱え、そのうちの被告8人が死刑判決を受けている。
そんな弁護士がいるという事実に興味をおぼえて。
弱者保護を主張する弁護士、安田好弘さん、64歳。
新宿西口バス放火事件、オウム真理教事件、和歌山カレー事件、
名古屋女子大生誘拐事件、光市母子殺害事件など、
世にとどろく事件の被告人の弁護を担当しています。
獄中の被告人から依頼された件もあれば、自ら弁護を申し出た件も。
マスコミや検察の情報を鵜呑みにして、
被疑者へのバッシングがくり返されることに対して、
なぜいつも自分たちが正しいと思い込めるのかと疑問を投げかけたい、
そんな思いから本作は撮られたとありますが、私にはやっぱりわからない。
たとえば、和歌山カレー事件について。
安田さん曰く、「被告人夫婦はもともと詐欺師で、詐欺で大いに稼いだ過去がある。
いかにも悪いことをしそうだ。でも、カレー事件の犯人ではない」。
確かに安田さんが並べる事柄を見れば、
犯人ありきで証拠がでっち上げられたと思えなくもありません。
でも、新宿西口バス放火事件に関しては、
「犯人は悪いことをしそうには見えなかった。だから、相応の事情があるはず」。
片方は、過去の人となりと今を分けて考えてやってくれと、
もう片方は、過去の人となりから今を思いやってくれと。
そんなふうに言われているようで、なんだか釈然としないんです。
きっと世の中には多くの冤罪事件があるのでしょうけれど、
安田さんの担当する事件にはオウム真理教事件をはじめとして、
冤罪なんかじゃないというものも多く、
明らかなる極悪人を許してやってくれと言うのはどうなのと思ってしまいます。
これこそが思い込みだと言われればそうなのかなぁ。
殺人が悪いことだと、死刑を以て示してはいけないとはよく言われること。
でも、私は、被害者の遺族にしか死刑廃止を言う権利はないのではとすら思っています。
「自分の子どもが殺されても、死刑廃止と言えますか」という問いに対し、
「言える、と思います」と安田さん。
本当にそうならば最初から断言してほしかった気が。
また、獄中で自殺した依頼人について、
「(彼を救うために)真相をでっち上げればよかった」などという発言もあり、
真相だったら「でっち上げる」なんて言わないのよぉなんて思ったり。
映画としては二日酔いもさめて頭が冴え渡るほどおもしろかった。
けれども、観終わったあとにブーたれた顔になってしまった私なのでした。
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