『それでも、愛してる』(原題:The Beaver)
監督:ジョディ・フォスター
出演:メル・ギブソン,ジョディ・フォスター,アントン・イェルチン,
ライリー・トーマス・スチュワート,ジェニファー・ローレンス他
梅田ガーデンシネマにて。
『少年は残酷な弓を射る』を観に行ったときに、
新梅田シティに怪しげな小屋が建ちかけていましたが、
これは夏限定営業のお化け屋敷“ゆびきりの家”というやつなのだそうで。
なんぼなんでもひとりでお化け屋敷には入れず、おとなしく映画のみ。
2009年の製作で、監督はジョディ・フォスター、主演はメル・ギブソン。
なのに公開が今ごろというのはどういうわけなのか。
観てなんとなく納得、売り方がむずかしかったのだと思われます。
玩具会社の二代目社長ウォルターは、重い鬱病に苦しんでいる。
さまざまな治療も効果が見られず、日がな一日寝てばかり。
そんな父親をとことん嫌う長男ポーターと、
父親に相手にしてもらえなくて悲しむ次男ヘンリー。
妻メレディスにはどうにもできなくなり、別居を決める。
別居初日、ウォルターはしこたま酒を飲んで自殺を図る。
首を吊ろうとして失敗し、飛び降りようとした矢先、
たまたま左手にはめていたビーバーのぬいぐるみが話しかけてくる。
それは幻想でも妄想でもなく、人づきあいが億劫になっていたウォルターが、
ビーバーを手にしていれば別人のようにしゃべれるということ。
みなぎるような自信に、ウォルターはただちに家族のもとへ帰る。
一緒に遊んでくれるようになった父親とビーバーにヘンリーは大喜び。
ポーターは鬱陶しそうに懐疑の眼を向けるが、
治療法のひとつだということで、メレディスもとりあえず受け入れる。
片時もビーバーを手放さなくなったウォルター。
それは異様な光景ではあるが、それにさえ目をつむれば、状況は明るい。
仕事に復帰すると社員の信頼を取り戻し、大ヒット商品を生む。
すべてが順調に回りはじめたかに思えたが……。
しんどい作品で、ものすごく考え込まされました。
ジョディ・フォスターにはどうしても優等生的なにおいを感じますが、
それはこちらの見る目がそうなってしまっているのかも。
彼女自身が演じるメレディスの行為は、「~してあげている」感じで、
「あなたのためを思ってやっている」という押しつけがましさがチラリ。
けれども、それこそが彼女の演技の意図するところなのでしょう。
相手のことを理解しているなんて思うのは傲慢だと見せつけられます。
ウォルターがメレディスから懐かしの写真を無理に見せられて、
「記憶喪失と鬱はちがう。過去のせいでこうなったのに、
どうして思い出させようとするのか」と叫ぶシーンは痛々しい。
ビーバーと決別しようとウォルターが取った手段は凄絶。
『セイジ 陸の魚』と同じようなシーンでありながら、まるでホラーです。
こうしてまでも家族のもとへ帰ることを選び、
その気持ちを心の深いところで汲み取った長男との抱擁は心に染みたけれど……。
どうしたらいいのかわかりません。
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