『さよなら夏休み』
監督:小林要
出演:緒形直人,立花美優,要潤,中山忍,千阪健介,
大場久美子,白竜,夏木陽介,古谷一行他
公開は昨秋。レンタル新作です。
文部科学省の推薦する文部科学省選定〈少年向き・家族向き〉だけあって、
出演者の顔ぶれも、空の色が鮮やかすぎるジャケットも、超優等生。
もちろん内容も優等生。
これは皮肉じゃなくて、いまどき珍しいほど安心できる作品でした。
現在の東京。
人生に迷いを感じている40歳の男、裕史のもとへ、
岐阜県郡上八幡から便りが届く。
それは町医者、鶴来の訃報だった。
妻のゆきと子どもたちを連れて、30年ぶりに訪れる郡上。
彼の脳裏に当時の光景がよみがえる。
昭和52年の夏。
父親を亡くした裕史、小学校5年生。
そもそも父親の連れ子だった裕史は父親の再婚相手になつかない。
独り身となった継母は裕史のことを持て余し、
父親の実家である郡上の寺に連れてゆく。
誰とも口を利かず、趣味のカメラに没頭する裕史。
寺には、ほかにも何らかの事情で預けられた子ども数人が暮らしているが、
彼らの誘いにも気のないそぶり。
しかし、転入先の小学校の若い女性教師、水帆に一目惚れ。
彼女を撮影したいがために走りまわるようになる。
また、寺の子どもたちは「捨て子」と言われ、いじめっ子の標的だったが、
雄大な自然に囲まれて過ごすうち、喧嘩する力も湧いてきて……。
物語はほぼ想像どおりに進みます。
一目惚れしたというものの、裕史は先生の恋人に嫉妬したりはしません。
先生の恋人というのがこれまたよくできた若い医師で、
子どもたちも医師に全幅の信頼を置いています。
この辺りもとてもかわいい。
大好きな先生が難病を患っていると知ると、
「先生の病気を治して」と医師に懇願します。
けれども、その医師にも先生の病は治せません。
なんとか先生に元気になってもらうには、
カナヅチの自分が泳げるようになるしかないと、
こっそり友だちに頼んで練習する姿は泣きたいぐらいけなげです。
いじめっ子との喧嘩も、一方的にやられるわけではなくて、
体と頭を使った喧嘩を繰り返したら、
最後はいじめっ子がビシッといいところを見せます。
やはりそう来るかと思いながら、泣くでしょ、これは。
先生の死に直面した悲しさが拭いきれず、
郡上の夏休みにフタをしていた裕史。
けれど、予期せずして30年後に再び訪れた郡上の夏に、
昔と変わらず迎えられて、心が解けてゆきます。
彼らの過ごした時代が私の小学校時代とほぼ一致しているゆえの感慨かも。
放課後といえば河川敷や神社の境内で遊んだあの時代。
この懐かしさはたまりません。
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