『まぼろし』(原題:Sous le Sable)
監督:フランソワ・オゾン
出演:シャーロット・ランプリング,ブリュノ・クレメール,ジャック・ノロ他
マリーとジャンは仲睦まじい熟年夫婦。
毎夏、浜辺にあるジャンの別荘に出かける。
ある日、ふたりでひと気のない浜辺へ。
マリーがうたた寝している間に、ジャンは「泳ぎに行く」と海へ入るが、
そのまま帰ってくることはなかった。
溺死したのか失踪したのか。
夫の不在を受け入れられないマリーは、
常に夫と家にいるかのように周囲にふるまう。
精神科にいくことを薦めたり、ほかの男性を紹介しようとする友人。
マリーのそばにはいつもジャンのまぼろしが。
警察から「溺死体を発見した」との電話を受けて
現実に少し目を向けたマリーは夫の自殺を疑う。
それに対し、「自殺や事故死なんかじゃない。
現実はもっと残酷だよ。おまえから逃げたんだ」という義母。
ほんとに残酷。
ひたすら何事もなかったようにふるまい、
いまにも壊れそうな(というのか、壊れている)マリーを
シャーロット・ランプリングが熱演。
たびたび姿を現すジャンがまぼろしなのか現実なのか見まがいそうになるけれど、
マリーに食事を勧められても、決して食べたり飲んだりしない。
まぼろしと話はできても一緒に食事はできないところに妙に納得してしまいました。
文庫本で『消えた娘』というミステリーがありました。
行方不明になった娘をひたすら待つ母の話。(現在絶版。)
この映画もこの話も、終始「待つ」女性に狂気を感じつつ、目が離せません。
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