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『声をかくす人』

『声をかくす人』(原題:The Conspirator)
監督:ロバート・レッドフォード
出演:ジェームズ・マカヴォイ,ロビン・ライト,ケヴィン・クライン,
   エヴァン・レイチェル・ウッド,トム・ウィルキンソン他

テアトル梅田にて3本ハシゴ。その1本目。

ぶっ飛びの設定に引き気味ながら笑った『リンカーン/秘密の書』
その後にこんなのを観ると、リンカーンが暗殺されたのは、
ヴァンパイアの祟りなのではと思ってしまいそうです。(^^;

クリント・イーストウッド監督作品に比べると、
ロバート・レッドフォード監督作品はさらに地味なイメージがあります。
なんだか土臭くどっしりしていて、娯楽性は低いけれど見応え十分。

アメリカ人女性で初めて死刑に処せられたメアリー・サラットの史実を基に、
その裁判過程について詳しく描かれています。

1865年、南北戦争が終結してまもない頃。
北軍の大尉を務めた、本業は弁護士のフレデリック・エイキンは、
軍主催の慰労パーティーに出席。
英雄として褒め称えられ、戦友たちと肩を組んで帰還を祝う。
大統領リンカーンから労いの言葉でも貰えるかと思っていたが姿は無し。
最近の大統領は芝居に夢中で、今日も劇場へと足を運んでいるらしい。

ところが、その観劇中の大統領が、南軍の残党により殺害される。
国務長官スワードと副大統領ジョンソンもほぼ同時に狙われる。
主犯だった著名な俳優ジョン・ブースは逃亡中に射殺されるが、
共犯として7人の男と1人の女が逮捕された。

唯一の女の名前はメアリー・サラット。
下宿屋を営みながら息子と娘を育てる未亡人だった彼女は、
息子を含む犯人らに密談の場を与えたとして罪に問われ、
民間人であるにもかかわらず、軍法会議にかけられることに。

そんな彼女の弁護を引き受けるようにと、
元司法長官の上院議員リヴァディ・ジョンソンから命令されたフレデリック。
北軍大尉だった自分が、なぜ南軍の大統領暗殺犯を弁護せねばならぬのか。
しかも裁く側にずらり並ぶのは北軍の関係者ばかりで勝ち目などない。
それでも弁護しろとリヴァディから言われ、フレデリックは困惑するのだが……。

裁判に負ければ弁護士の力量が足りなかったということになりますが、
勝てば裏切り者呼ばわりされるわけで(弁護を引き受けた時点でそう言われるのですが)、
どちらに転んでもフレデリックにとって良いことは何もありません。
頑なメアリーには不信感があるし、本当に彼女が大統領暗殺に無関係なのかどうかもわからない。
こんな役目を仰せつかるなんて不条理だと、
当初フレデリックが感じているのは痛烈に伝わってきます。

その不条理な思いは最後まで消えることはありませんが、
法をことごとく無視して関係者全員を死刑に処そうとする上層部の態度や、
弁護側の証人を脅したり金品を与えたりしてまで取り込む手段に憤り、
人権を尊ぶリンカーンは自分の暗殺犯に対してすらこんな裁判は望まなかったはずだと考えます。

メアリーを演じるロビン・ライトは、
別れた旦那のショーン・ペンを思わせるような作品選びで抑えた演技が光ります。
だけど、私がいちばん惹かれたのはリヴァディ役のトム・ウィルキンソン。
正義とは何なのか。この人に考えさせられました。
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