『苦役列車』
監督:山下敦弘
出演:森山未來,高良健吾,前田敦子,マキタスポーツ,田口トモロヲ他
なんばパークスシネマで、前述の『リンカーン弁護士』とハシゴ。
原作である芥川賞受賞作の同名小説は未読ですが、
話題となった受賞会見のさいの「そろそろ風俗へ行こうと思っていた」発言にニヤリ。
西村賢太氏の私小説と言われる本作のキャッチコピーは、
「友ナシ、金ナシ、女ナシ。この愛すべき、ろくでナシ」。
ほんと、主人公は情けないほどこのコピーどおりです。
1986年の東京。
19歳の北町貫多は、中学を卒業以来、日雇いの肉体労働でその日暮らし。
5歳のときに父親が性犯罪で捕まり、母に連れられて姉と貫多は逃げ暮らす。
学がないからせめて読書をと、本だけはものすごい勢いで読んでいる。
そんなある日、職場に同い年の専門学校生、日下部正二が新入りでやってくる。
これまで友だちと呼べるような相手もいなかった貫多だが、正二とは意気投合。
一緒にメシを食いに行ったり、飲みに行ったり、
ときには貫多が無理やり正二を風俗(覗き部屋)へ連れて行ったり。
貫多が密かに想いを寄せるのは、古本屋でバイトする苦学の女子大生、桜井康子。
どうしても自分で声をかけることができない貫多は、正二に協力を要請。
友だちになってほしいと頼んだところ、意外にもあっさりと康子はOK。
ようやく到来した人並みの青春に嬉しくなるのだが……。
観たかったいちばんの理由は、監督=山下敦弘。
ダメ男三部作の『どんてん生活』(1999)、『ばかのハコ船』(2002)、『リアリズムの宿』(2003)、
それから『松ヶ根乱射事件』(2006)と、オフビートなノリが好きでした。
『リンダ リンダ リンダ』(2005)や『天然コケッコー』(2007)は、
それまでの作品とは全然ちがう清爽さに驚いたけれど、やっぱり好きでした。
観たかったもうひとつの理由は、脚本=いまおかしんじ。
『UNDERWATER LOVE おんなの河童』の監督です。
どうしてこの監督・脚本コンビになったのか知りませんが、
ちょっとピンクなイメージが漂うこのコンビには非常に惹かれます。
エンドロールの“特別協力”に名前を見つけて嬉しくなったのは、
松江哲明、新井浩文、山本浩司。しかし、いったいどんな協力?
ところで肝心の映画の中身はというと、普通に楽しい。
不幸な生い立ちからして同情を感じる余地はあるのですが、如何せん、ろくでナシ。
友だちになってもいいと言われれば「ヤラせてくれる」と思い込み、
ジャガイモみたなブスだと言っていた元カノと再会すれば「ヤラせてくれよ」と頼み込む。
初めて訪れる人並みの青春に妄想が膨らみすぎたのか。
覗き部屋には『やわらかい手』(2007)を思い出して笑いましたが、
あまりにお下劣なので、下ネタOKの私もさすがにドン引き。
森山くんファンなら居たたまれなくて泣いてしまうかもしれません。(^^;
逆にそれがピッタリはまった演技力に脱帽するかも。
昔、ドヤ街で暮らした経験のある知人が、
「仕事が貰えなかった日、そのまま宿泊所に帰る。
体を動かせば腹が減るから、座った場所から一番近い本棚にある本に手を伸ばし、
その日は動かずにひたすら本を読む」と話していました。
いつかその読書の時間が身を結ぶ。
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