『不撓不屈』
監督:森川時久
出演:滝田栄,松坂慶子,三田村邦彦,田山涼成,
中村梅雀,北村和夫,夏八木勲他
昨年公開され、DVDは明々後日に発売なのですが、
先週末にスカパーで既に放映されていました。
高杉良の同名経済小説の映画化です。
こんな税理士が実在したのだということを初めて知りました。
栃木県鹿沼市と東京に会計事務所を構える税理士、飯塚毅。
「一円の取りすぎた税金もなく、
一円の取り足らざる税金も無からしむべし」を信条とする飯塚は、
顧客の大半を占める中小企業の経営者を支え、
合法的な節税法を教授している。
ところで、別件で飯塚が国税局相手に起こしていた訴訟があり、
敗訴が濃厚であった国税局は、
自分たちの面目が丸つぶれになることを懸念し、
なんとか飯塚の税理士資格を剥奪しようと画策していた。
そこで、彼の教授する「別段賞与」が脱税行為だとして、
事務所と自宅、顧客の会社の強制捜査に踏み切る。
動揺を隠せない所員や家族たちに、
飯塚は「調べられて困ることは何もないのだから」と言い、
毅然とした態度で臨むよう求めるが、
じきに終了すると思われていたこの捜査は、
その後7年(1963~1970年)にも及ぶことになる、
飯塚と国税局との闘いの幕開けにすぎなかった。
「別段賞与」とは、決算時に社員への業績分配の賞与を
未払金として計上し、すぐには支払わないで、
その資金を借り受ける形にすることだそうです。
こうすれば、未払金を会社の運転資金として利用でき、
なおかつ節税もおこなえるという方法。
現在は規制されているものの、当時は立派な合法的節税でした。
叩けばホコリの出ない人間はいないと、徹底的に飯塚を調べる国税局と、
不屈の精神を持つ飯塚のやりとりは見応え十分。
嫌みたっぷりな国税局の職員、脅されて涙する蕎麦屋のおばあちゃん、
飯塚を助けようと奔走する社会党の代議士、
飯塚の家族、恩師、寺の住職など、
事件の関係者たちもかなり丁寧に描かれています。
何しろ最近、「ボソボソ喋っている邦画」が多いなか、
みんな滑舌がいいんです。
古き良き邦画とでも言いましょうか、
これは字幕の必要なし。
印象に残ったのは住職の言葉。
飯塚の息子が「お母さんは呑気ですから」とぼやくのに対し、
「こんなときに呑気でいられるのはたいしたものです」。
そうありたいなと思いました。
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