前々述の『クリスティーナの好きなコト』で、
原題は作品中に出てくることが多いとお話しました。
ここ数か月のあいだに観た映画のなかから、
同じく原題が作品中に出てきたもので、なおかつ興味を引かれたものをご紹介。
2001年度のアカデミー賞で、
ハル・ベリーが黒人初の主演女優賞を受賞して話題になった『チョコレート』(2001)。
主人公は人種差別主義の刑務官。
彼に似ず、誰をも愛した息子が彼の目の前で自殺。
その死をきっかけに、黒人の女性と心を通わせるようになります。
彼はよく立ち寄るカフェで必ずホット・チョコレートを注文します。
邦題はおそらく、チョコレートと黒人からヒントを得てつけられたものと思われます。
そういえば、『パルプ・フィクション』(1994)でも、
シェイクを注文した客に対して、ウェイターがタレントの名前を2人挙げていました。
名前を挙げられたタレントは誰だったか忘れたけど、黒人と白人で、
つまりは「ミルク・シェイクかチョコレート・シェイクか」と聞いたわけでした。
で、この作品の原題は“Monster’s Ball”。
直訳すると「怪物の舞踏会」です。
死刑囚が刑を執行される前日、穏やかな気持ちで刑を受け入れることができるように
刑務官たちで開くパーティーのことを指していて、
物語の早いうちに会話のなかに出てきます。
このまま邦題にしたら、さっぱり何のことやらわかりませんね。
『イン・ザ・ベッドルーム』(2001)は、息子を亡くした夫婦の寝室が頻繁に出てくるので、
「寝室で」という意味なのだと当初は思っていました。
ところが、物語が始まってまもないころに、それだけの意味ではないことが示されます。
「ベッドルーム」とはエビ漁に使われる仕掛け罠のこと。
2匹入ればいっぱいになってしまう籠のなかに3匹のエビが入れば、
エビは争って1匹は殺されてしまう。
この映画では常に3人がポイント。
夫婦と息子、息子とその彼女と彼女の夫。夫婦と彼女、夫婦と彼女の夫。
原題そのままの邦題ではありますが、
この会話を聞き逃すと、映画のポイントも逃してしまいそうです。
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