読んだ本の数:12冊
読んだページ数:4506ページ
ナイス数:1144ナイス
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■オブリヴィオン (光文社文庫)
どうしようもない暗さにどんどん気持ちが沈むけれど、救いのないまま終わることはないのが遠田潤子だとわかっているから、その一条のひかり見たさに最後まで。ある特殊な才能のせいでギャンブル狂の父親を死なせてしまった主人公。ようやく掴んだ幸せも自らの手で終わらせてしまう。出所後の彼を待っていたのは、自分に敵意剥き出しの娘と、切れないしがらみ。非科学的なその才能が遠田作品の中にあっては異質に感じられましたが、特異な才能のせいで虐待を受ける子どもはいるかもしれません。最初と最後では実兄を見る目が180度変わる。泣いた。
読了日:05月04日 著者:遠田 潤子
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■京都スタアホテル (小学館文庫)
最近コロナ禍を反映した小説にしばしば遭遇します。そのたびに、ちゃっちゃと時世を盛り込んで書ける作家ってすげぇなと思います。コロナで客もまばらなホテルのレストラン。たとえ客がひと組であっても開けるであろうそれぞれの店。ただ食事に来ただけではない客たちは、今日この席にさまざまな想いを抱いています。その想いを汲み取り、最大限のもてなしに努めるスタッフの面々。さすがの作家も終日酒類提供禁止の日まで来るとは想像しなかったでしょうから(^^;、お料理とアルコールをきっちりペアリング。今だからこその心洗われる話ばかり。
読了日:05月05日 著者:柏井 壽
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■角の生えた帽子 (角川ホラー文庫)
これまでに読んだ宇佐美さんの著作の中ではやっぱり『愚者の毒』がいちばん読み応えがあったように思うのですが、短編もお得意の様子。怖さとしてはホラー苦手の私でも全然平気な程度。映像化すればそれなりに怖いでしょうけれど、想像力を働かせて読まなければ夢に見ることもありません(笑)。嫌ミス的なオチもあれば、少し切ないオチも。怨念がその地に棲み着いたかのような話がいくつかあって、ヤン・シュヴァンクマイエルの『オテサーネク』を思い出したりもしました。ちょっと物足りない気もしつつ、サクサク読めてまぁいっか、てな感想です。
読了日:05月07日 著者:宇佐美まこと
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■最後の証人 (角川文庫)
プロローグは今まさに殺人がおこなわれようとしている場面。次章からはその殺人に至るまでの過程と法廷の場面。ないアタマで真相について推理しながら読んでいたのに、そっちか!中山七里の『能面検事』の「検察は被疑者に罪を与える機関ではない」という一文を思い出し、罪を与える気バリバリの庄司検察官のことが好きになれません。罪はその罪で裁かれなければならないという佐方弁護士の持論に、能面検事との共通点を感じます。被告人が責任を転嫁して、その罪で裁けない現実を見ると、どんな形であれ天罰を下してほしいと思ってしまうけれども。
読了日:05月09日 著者:柚月裕子
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■失礼な敬語 誤用例から学ぶ、正しい使い方 (光文社新書)
先週首相が「さ入れ」で答弁しているのを聞きました。舞台挨拶付きの映画上映会に行けば、「○○役をやらさせていただきました」という俳優も「いらっしゃいます」。社会に出れば自分が敬語を使えないことに気づくでしょうか。気づくことすらないかもしれません。しかしこの本を手に取るのは、正しい日本語を使いたいと常日頃から思っている人であって、何でもかんでも「~させていただく」と言って丁寧な日本語を喋っているつもりになっている人は読まないのではないでしょうかね。あぁ、何だか上から目線のレビューになってしまった。すみません。
読了日:05月10日 著者:野口 恵子
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■TAS 特別師弟捜査員 (集英社文庫)
初期の中山七里をすっ飛ばして御子柴弁護士シリーズからずっぽりハマった身としては、初期寄りの登場人物たちに軟らかさというのか軽さを感じて、そこまではハマれません。単に面々が若いだけで、その若さに私が戸惑っているのか(笑)。しかし思いの外、彼らの演劇への情熱にほだされ、脚本がよければどうにかなるところを見せてもらえました。誰にでも優しくて努力家で自分をひけらかすような真似をしない人だからこそ恨まれる。こうして考えてみると、世間の殺人の動機のほとんどが「嫉妬」で括れてしまうのかも。若い子と組むなら葛城刑事!?
読了日:05月16日 著者:中山 七里
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■完璧すぎる結婚 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)
分厚い。重い。手が疲れる。酒飲みながら読んだら寝るよねぇと思っていたのに。眠くなる隙一瞬たりともなしの3部構成。27歳のキュートな保育士は36歳のイケメン金持ちと婚約中。しかし前妻が彼に執着している模様。血生臭いことは起きず、修羅場にもならず、だから余計にこの先どうなるのかが気になって仕方がない。そして第1部が終わるとき、えっ、えっ、えーっ。これ以上は書けません。酔っぱらいの頭も覚醒するほど驚いた。『完璧な家』と併せて読めば、世間から完璧に見えている夫というものがいかに怖いかを考えてぞっとします。ご用心。
読了日:05月19日 著者:グリア・ヘンドリックス,サラ・ペッカネン
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■真犯人 (小学館文庫)
長い年月にわたる話ゆえ関係者がやたらと多く、とっとと読まないと誰が誰やらわからなくなります。そしてとっとと読まなかったから、ほとんど錯乱状態(笑)。けれどもようやく頭の中で登場人物を整理できた頃には、その真相に胸が痛む。ちょっと古めかしい気はするものの、ごつごつした警察小説でした。「時効」は警察小説には有効な存在ですが、時効の廃止が捜査を停滞させることなく進められていると思いたい。大阪で営業中の映画館は2つしかない今、『狼をさがして』を観たばかり。東アジア反日武装戦線の話があまりにタイムリーで驚きました。
読了日:05月21日 著者:翔田 寛
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■ゴーストハント1 旧校舎怪談 (角川文庫)
本作が1989年に“悪霊シリーズ”の第1巻として刊行されていたことを解説を読むまで知らず。中山七里といい小野不由美といい、還暦だというのに高校生を主人公にしたシリーズを書けるなんて凄いなぁと思っていました。いや、今でもきっとお書きになれるでしょうけれど、道理でケータイもスマホも出てこないわけですね。麻衣の素振りが癇に障ったりしつつ、しかし彼女がこんなふうでなければ、基本的にホラーが苦手な私はビビって読めなかったかも(笑)。連絡手段に困る時代の話であっても過ぎ去る青春は同じ。何十年経とうが色褪せない楽しさ。
読了日:05月24日 著者:小野 不由美
https://bookmeter.com/books/15926386
■蚊がいる (角川文庫)
今日はもうとっとと寝たいんだけど、ほとんど義務感からちょっとだけ何か読んで寝ようかなぁというとき、穂村さんってピッタリ。第1章の「蚊がいる」はだいたい4頁前後。第2章の「かゆいところがわからない」なんてそれよりさらに短いから、ちょっとだけのつもりがどんどん読める。いるよ、私も「お土産はブールミッシュかスイカの人」とかイメージの固まっている人が(笑)。「あるある」な話にきっちりオチがあって、笑って心地よく眠れます。映画『花束みたいな恋をした』にも彼の名前がチラリ出てきたから、ますます人気者になっているかも。
読了日:05月26日 著者:穂村 弘
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■検事の本懐 (角川文庫)
弁護士に転向してからの佐方を描いた『最後の証人』を読んだのがついこの前。あまりに面白くてその前日譚だという本作に突入。結局、検事であろうが弁護士であろうが、彼の仕事との向き合い方は変わらない。事件の上っ面だけ見るのではなく、人を見る彼にしょっちゅう胸が熱くなります。この若さで経験も浅いのに手練れの刑事みたいな趣は出来過ぎ。でも、だからこそ読まされるのでしょうね。髪の毛ぼさぼさスーツしわくちゃなのは残念だけど、もとは精悍な顔つきらしい。やはりそれなりのイケメンでいてほしいような、だらしないままでいいような。
読了日:05月28日 著者:柚月裕子
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■明日の食卓 (角川文庫)
児童文学のイメージしかなかった作家なのに一転。仮名で書けば同じ名前の少年3人。殺されたのはこのうちの誰だろうというサスペンスを想像していたら、そうではないのですね。幼稚園のときにいじめられっ子だった私は、自分の子どもがそんな目に遭うのも、ママ友同士のつきあいに神経をすり減らすのも、絶対に耐えられるはずがないと、子どもを持とうとせずに来ました。本作を読んでやはり私には無理だったろうと思うと共に、自分の母親には深い感謝の念をおぼえます。ひとりの「ユウ」の、人間は試さずにはいられないものでしょという言葉が怖い。
読了日:05月30日 著者:椰月 美智子
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