『海よりもまだ深く』
監督:是枝裕和
出演:阿部寛,真木よう子,小林聡美,リリー・フランキー,
池松壮亮,吉澤太陽,橋爪功,樹木希林他
平日、晩ごはんは西天満で外食予定の日、午後休を取りました。
最近やみつきの、「晩の予定の前に映画のハシゴ」というやつ。
最終目的地は西天満なのだから、梅田かなんばで映画を観られたらよかったのですが、
そこでは観たいものがない。というのか、もう観るものがない。
で、この日のために取っておいた伊丹で2本。
駄目駄目だった『エヴェレスト 神々の山嶺』はともかくとして、
真面目な役も三の線で出ているときも基本的には良い阿部寛。
是枝裕和監督作品には数度出演している彼の効果的な使い方を
やはり監督はよくご存じのようです。
作家の篠田良多(阿部寛)は、15年前に新人賞を受賞したきり、鳴かず飛ばず。
小説の取材と称して探偵事務所で働いている。
だが、給料はすべてギャンブルにつぎ込む始末で、そんな夫に愛想を尽かし、
妻の響子(真木よう子)は一人息子の真悟(吉澤太陽)を連れて出て行ってしまう。
響子に未練たらたら、月に一度の真悟との面会が楽しみでならないのに、
月5万円の養育費を滞納するわ、ギャンブルのせいで面会には遅れるわ、
そのくせ真悟にいい顔をしようとするから、響子は呆れっぱなし。
なんとか金を工面しようと、探偵事務所の仕事で悪だくみ。
所長の山辺康一郎(リリー・フランキー)にはバレぬよう、
同僚で後輩の町田健斗(池松壮亮)の協力を仰いでいる。
探偵としての腕を活かして、響子の身辺調査をしてみれば、
どうやら新しく男ができた様子。
健斗を伴ってデートの席に張り込み。相手の男(小澤征悦)に嫉妬あらわ。
そんな良多の頼みの綱は、団地で気ままに一人で暮らす母親の淑子(樹木希林)。
母親の懐を当てにするなと姉の千奈津(小林聡美)に怒られるが、
もはや母親しか頼れないのだから仕方がない。
真悟との面会日も母親を当てにして実家へ。
響子にも実家へ真悟を迎えにくるようにと連絡を入れる。
すると、折からの台風で3人とも実家から動けなくなり……。
なんということはない話です。
なのに眠気に襲われなかったのはどうしてなのでしょう。
やはりこの手の話が私は好きなのだと思います。
優しさに満ちた是枝監督の本作は、心に残る台詞がいっぱい。
やきもちと責任感と未練は、見方によっては同じだというのが新鮮。
「いったいどこで間違っちゃったんだろう、自分の人生」と思いはしても、
そんな間違いも丸ごとひっくるめてその人の人生。
「ほんとに男ってやつは」という言葉に笑った女性は多いはず。
是枝監督だって男なのに、こんなだけど勘弁してってことかしらん(笑)。
未来にやきもちを焼いても仕方ない。
今を生きるのが大事。
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