『女はみんな生きている』(原題:Chaos)
監督:コリーヌ・セロー
出演:カトリーヌ・フロ,ラシダ・ブラクニ,ヴァンサン・ランドン他
『赤ちゃんに乾杯』(1985)の女性監督の作品です。
学生だった私はいたって単純に楽しみました。
しかし、当時この作品が評価されたのは、
ほんわかしたコメディながら子育てが女性だけの仕事ではないと
社会に提起したことがあったようです。
この新作の原題は“Chaos”(「混沌」の意)。
でも邦題がこれですから、ジェンダー問題満載だったらキツイなぁと思っていました。
そしたらそんな心配無用で、痛快そのもの。
男女問わず、これはぜひ。
エレーヌは平凡な主婦。
会社経営者の夫ポールの接待ディナーに今日もつきあう。
ある晩、エレーヌとポールが車で帰宅する途中、
男たちに追われている女性が助けを求めて駆け寄る。
しかし、トラブルに巻き込まれたくないポールは、女性の鼻先でドアをロックする。
結果、女性は車に頭を強く打ちつけられ、瀕死の状態のまま、通りに放置される。
女性を助けたいエレーヌだったが、
ポールは血のついた車を早く洗いたくてたまらない。
騒ぎで駆けつけたパトカーを見て、その場を走り去るのだった。
翌日、じっとしていられないエレーヌは、
片っ端から病院に電話をかけ、昨日の女性の居場所を突き止める。
彼女は娼婦で、名前をノエミというらしい。
何らかの理由で組織に追われているようだ。
昏睡状態の彼女をエレーヌはつきっきりで介護する。
やがて、彼女の生存を知った男たちが病院に現れて……。
登場人物がみんな愛らしい。
笑っちゃうぐらい嫌なヤツのポール。
女遊びに忙しい息子のファブリス。
自分の母親を煙たがるのはどの息子も一緒。
自分の母親と妻は折り合いが悪いと勝手に信じ、
妻が家出をしたときに、母親のところにだけはいくわけがないと思い込んでるのもおもしろい。
サスペンスながらお笑いもたっぷり、台詞も楽しく、
スピード感に溢れる逸品です。
さすがフランスだと思ったのは、
食事できるようになったノエミにエレーヌが食べたいものを尋ねるシーン。
「リンゴのコンポートを試してみる?
それともフロマージュ・ブラン?
クレーム・オ・ショコラ?」
日本ならせいぜい「ヨーグルト?プリン?ゼリー?」、
それとも「水羊羹?ところてん?」。
妻不在でチーズおろし器が探せず、
粉チーズで妥協する父子の会話もさすが?
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