今週初め、伯母に会いに行きました。
宙を見つめていましたが、
「来たよ」と声をかけた瞬間、伯母が泣き出しました。
一緒に泣いてしまいました。
涙が落ち着いたあと、口を開くのも辛そうなのに、
いっぱい話をしてくれました。
伯母が特に楽しげに話していたのは、
お気に入りだったイタリア料理店のことです。
マンションの6階に住む伯母は、
廊下側へ出れば見えるそのお店が大好きでした。
ランチタイムで混み合うお店を階上から眺め、
お客さんが引けてきた頃を狙って、
ひとりのランチを実に楽しんでいました。
そのお店のディナータイムに、
伯母が倒れる数週間前、一緒に行ったことがあります。
あれやこれやとアラカルトで飲んで食べ、
ワインもたくさん飲んだ伯母は、
「ひとりで来たらいろいろ食べられないもんね。
こんなに食べられて嬉しかった」と幸せそうでした。
先月、私がそのお店におじゃましたさい、
伯母と、数回訪れただけの私との繋がりなど
お店の方は覚えていらっしゃらなくても当然だったのに、
帰り際、マスターが「伯母さん、どうしてはります?
そろそろ来てくれはる頃かと思ってるんですけど」と
声をかけてくださいました。
病室で伯母にその話をしたときのなんと嬉しそうな顔。
「あと2回ぐらいは行けると思ってたのにね。
行けなくて残念やなぁ。本当に楽しいお店だった。
小さな町の小さなレストランだけど、
ずーっと頑張ってほしいって言っておいてね。
みんなであのお店に行ったら、私のことを思い出してね」。
そんな話のあと、伯母が私の顔を見て、
「あんたも行きそうやな」と言うので、
「え?どこへ?」と聞き返しました。
しかし、何が言いたかったのか、伯母自身もわからない様子だったため、
「私も逝きそう?そしたら、私も伯母ちゃんと一緒に逝くわ。
空の上で一緒に誕生祝いしよ」と言ったら、
「そやねぇ。楽しそうやねぇ。あのお店、あるかな」と伯母。
空の上にも開店してくださいって、伝えるよ。
「また来るね」と言うと、
「ありがとう。そのときはもう息がないかもしれないけど、
来てくれたら嬉しいわ」。
そして伯母は、こう続けました。
「この世の中に楽しくないことなんて
ないんじゃないかと思うぐらい、毎日楽しかった。
いろいろ楽しい話ができてよかった。いい日だった」。
そう言って、伯母は目を閉じました。
今晩、空へ行ってしまうかもしれません。
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