『架空の犬と嘘をつく猫』
監督:森ガキ侑大
出演:高杉真宙,伊藤万理華,深川麻衣,安藤裕子,向里祐香,ヒコロヒー,鈴木砂羽,後藤剛範,松岡依都美,森田想,高尾悠希,長友郁真,はなわ,安田顕,余貴美子,柄本明他
前述の『CHA EUN-WOO:MEMORIES IN CINEMAS』の次に同じく109シネマズ箕面にて。
寺地はるなの同名小説を『愛に乱暴』(2024)の森ガキ侑大監督が映画化。ある一家とその周辺の人々を30年に渡って描いています。観ながら高杉真宙って最近結婚したんだったよな、相手は誰だったっけと考えていたのですが思い出せず。そうか、波瑠でしたね。なんか「正しいカップル」って気がしませんか。
羽猫家は祖父母の正吾(柄本明)と澄江(余貴美子)、父母の淳吾(安田顕)と雪乃(安藤裕子)と子どもたち三世代で暮らしている。子どもは長女と長男次男の3人いたが、次男が不慮の事故で亡くなってからというもの、雪乃の精神は壊れ、何年経ってもそこにまだ次男も存在するように振る舞う。そんな状況に耐えられないのか、淳吾は行きつけのスナックのママ(松岡依都美)のところへ入り浸り。あてにならない両親のせいで長女が長男の面倒を見ている。
視点は長男の山吹。それぞれの年代に応じた俳優が演じ分けています。小・中学生時代の山吹と高校生時代の彼を演じる子役が、大人になった山吹を演じる高杉真宙と顔の雰囲気が極似。鑑賞後に森ガキ監督のインタビューを読んだところ、30年を追うスタイルで本作を撮ろうと決めて子役のオーディションをしたそうです。山吹の子ども時代については高杉真宙に似た子役を見つけられたけど、長女の紅が大人になってからを演じる向里祐香に似た子役は小学5年生だった子ひとりしか見つけられなかったそうで、メイクでなんとか高校生まで演じてもらったとのこと。ほんと、高校生に見えました。
私は本作がとても好きでした。30年をゆるゆると追っているように見えて、いろんなことが起きている。まず、現実を受け入れようとしない母の存在が大きくのしかかり、山吹はずっと亡くなった次男のふりをして母に手紙を書き続けています。祖父が亡くなり、姉が出て行き、父は相変わらず浮気三昧だけど、かといってDVでもモラハラでもなくて、山吹の成績相談にも乗る。みんなから「優しいね」と言われてきた山吹が心の底に貯めていたものを推し量ると苦しい。
その優しさにつけ込んで山吹を良いように利用する遠山かな子(深川麻衣)のあざとさには虫酸が走る。あの母親(鈴木砂羽)のもとで育ったという気の毒な環境ではあるけれど、それにしたって山吹をナメるにもほどがある。だから「どれだけ見くだしとったら気が済むんですか」という山吹の言葉にはスッキリ。小学校のときの同級生で、引っ越していった佐藤頼(伊藤万理華)との再会。彼女と結婚して、何度目かの流産に見舞われたことを嘆く彼女に山吹がかける言葉は、本当にこう言いそうだと思わせる何かが高杉真宙にはあります。そして余貴美子の圧倒的な存在感。彼女がいなくなったら映画界はどうなっちゃうんだろうと今から心配です(笑)。
ひとつの家族の30年間を見せてもらいました。
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