『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』(原題:Un P’tit Truc en Plus)
監督:アルテュス
出演:アルテュス,クロヴィス・コルニアック,アリス・べライディ,マルク・リゾ,セリーヌ・グルサール,ルドヴィック・ブール,テオフィル・ルロワ,マリー・コラン,ソフィアン・リベス他
東福寺の蕎麦茶寮で忘年会の日、久しぶりに京都で映画を観ることにしました。まずは京都シネマで1本。会員になってはいるもののいつぶりでしょう。このとき以来だからほぼ8カ月ぶりか。本国フランスで『最強のふたり』(2011)の記録を塗り替え、年間第1位の大ヒットを飛ばした作品なのだそうです。
父親ルシアンと息子パウロは親子で宝石店に押し入って強盗を働くが、逃走用の車を身障者用スペースに駐めていたものだからレッカー移動されてしまう。駐禁だと通報したのは障害者施設の職員アリスで、毎年恒例のサマーキャンプに出発するところ。入所者たちが次々とバスに乗り込むなか、今日から入所予定のシルヴァンがまだ姿を現さない。ちょうどそこで立ち尽くしていたパウロを見たアリスは、彼がシルヴァンだと思い込む。パウロのみが連れて行かれそうになり、咄嗟にルシアンは自分が彼の介助者だと嘘をつく。介助者が同行することは通常はないのだが、シルヴァンには絶対に介助者が必要だとアリスを説得。ちゃっかり一緒にバスに乗り込んだふたり。ルシアンの名前を問われるも本名を明かすわけにはいかない。バスの外に見えた店の名前オルピを頂戴し、しばらくサマーキャンプに紛れて身を隠すことにするのだが……。
監督と主演を務めるアルテュスは38歳、フランスの人気コメディアンなのだそうです。本作は本国では2024年に公開されて年間の興行収入1位を記録しただけではなく、フランス映画史上でもトップ20に入るらしい。はたしてそれほどのものかと思わなくはないものの、知的障害者たちを主役にしたコメディとなると、笑ってもよいギリギリの線を攻めたということになるでしょう。
そもそもパウロが新しい入所者だと思われた原因は、パウロが着ていた服。強盗の後、ルシアンとパウロは逃走用の服に着替えますが、パウロが持ってきた服が怪しい。本人は「ドイツ人観光客に見えそうな服」のつもりだけど、ルシアンにするとふざけているとしか思えない服装。「なんだその服は」と呆れるルシアンとおどおどするパウロを見ていると、父親のもとでずっとこんなふうに怯えながら人生を送ってきたのだろうかと推測できます。
パウロはほかの入所者の話し方や動き方を真似て知的障害者のふりをしようとしますが、職員以外にはバレている。「君、障害者じゃないよね」と当の障害者たちは最初から見抜いているのです。問われたパウロは驚きつつ、内緒にしておいてほしいと頼みます。バレていることを知らないルシアンの前では「ふり」をしたまま行動するけれど、入所者たちだけがいる前では物語を楽しく話して聞かせてくれる良き兄ちゃん。パウロがすっかり溶け込む一方、ルシアンは早く宝石を持って逃げる方法を考えたい。とても横柄で許しがたいぐらいですが、予想外に懐かれる。最初はただただ鬱陶しそうにしていたのに、いつしか一緒にサッカーボールを蹴るのが楽しくなります。
パウロの服にしろ、考えてみれば「障害者が着ていそうな格好」とどこかに私たちの勝手な想像があります。こんな役を演じさせていいのかと思うシーンも多々あって、だけどこれって逆に差別しているということかなと思ったりも。健常者なら問題ない役だと頭の中で振り分けているのかもしれません。本物のシルヴァンはどうなったのかというと、集合場所に行ったときにはすでに施設のバスは出発した後で、ちょうどそこへやってきた普通高校のサマーキャンプのバスに乗り込みます。シルヴァンはシルヴァンでそのキャンプを謳歌する様子が楽しい。ノリノリで踊り狂ってみんなからリフトされている様子などを見ると、健常者と障害者の垣根は思い込みで作られているのかもしれないとすら思う。
最後は私が必ず泣いてしまう展開に持ち込まれました(笑)。まんまと泣かされちゃったなぁ。
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