『アダムズ・アップル』(原題:Adams Æbler)
監督:アナス・トマス・イェンセン
出演:マッツ・ミケルセン,ウルリク・トムセン,パプリカ・スティーン,ニコラス・ブロ,アリ・カジム,オーレ・テストラップ,ニコライ・リー・コス他
テアトル梅田にて、“マッツ・ミケルセン生誕60周年祭”開催中。大好きな俳優ですが、“北欧の至宝”と呼ばれていたことは知らず。日本では劇場初公開作からキャリアを象徴する代表作までの7作品が上映されるというこの企画、とりあえず未見の1本を観てみようと出かけてビックリ。どんな人気やねん、マッツ。どの作品も満席かほぼ満席じゃあないですか。
デンマーク出身の世界的俳優であるマッツの映画デビューは『プッシャー』(1996)。『偽りなき者』(2012)で第65回カンヌ国際映画祭の主演男優賞を受賞。『007/カジノ・ロワイヤル』(2006)では悪役を演じて知名度アップ。『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(2023)でもやはり悪役を演じましたが、とにかく魅惑的なんですよね。『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』(2022)にジョニー・デップの代役としてマッツが登場したときは嬉しくて嬉しくて。別にジョニーのことが嫌いなわけではありませんけど。(^^;
さて、本作は2005年の作品で、マッツと多くの作品で組んでいるアナス・トマス・イェンセンが監督を務めています。旧約聖書の『ヨブ記』を下敷きとしているそうな。
仮釈放されたネオナチのアダム(ウルリク・トムセン)は、更生プログラムの一環として片田舎の教会へ送られる。彼を迎えたのは牧師のイヴァン(マッツ・ミケルセン)と、アダム同様に前科者のグナー(ニコラス・ブロ)とカリド(アリ・カジム)。態度の悪いアダムに対してイヴァンはムカつく様子もなし。ここで何をすればいいのかとアダムが問うと、それは自分で考えるようにとイヴァンが答える。思いつきで「教会の庭の木に生るリンゴでアップルケーキを作る」と答えたところ、リンゴを育ててケーキを作ることを目標にするようにイヴァンから言われ……。
あきらかにおかしい牧師イヴァン。アダムから鼻が曲がるほど殴られても怒ることなく、次の瞬間からケロッとしています。グナーやカリドや近所の人々もイヴァンがおかしいのは承知のうえで、けれど彼を奇跡の存在と目している。実はイヴァンには除去不能の大きな脳腫瘍があり、そのせいで精神が錯乱しているのです。自分の身に起こることはすべて悪魔の仕業、悪魔に試されているのだからいちいち気にしない。そう言うイヴァンと話しているとイライラするアダムは、これは悪魔の仕業なんかじゃない、神のご意志なのだとイヴァンに意地悪くわからせようとします。そしてそれに見事成功したのに、以降イヴァンは生きる気力が皆無となり、まるで屍。
イヴァンがどれほど人々にとって大きな存在だったかをようやく知るアダム。憎らしくて仕方なかったアダムがなんとかイヴァンを元通りの「変人」に戻そうとする様子に和むのでした。凄くブラックな話なのに、最後はニヤけてしまう。好きだなぁ。
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