《ら》
『ランサム 非公式作戦』(英題:Ransomed)
2023年の韓国作品。今はなきシネマート心斎橋で観損ねた作品です。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
1980年代、内戦下のレバノンで実際に起きた韓国人外交官誘拐事件を基にしたフィクション。監督は『最後まで行く』(2014)、『トンネル 闇に鎖された男』(2016)のキム・ソンフン。
外交官イ・ミンジュン(ハ・ジョンウ)は米国駐在を志望していたのに、ソウル大卒の後輩にそれを持って行かれ、自身は外務部の中東担当に回されてがっかり。ある晩、退出しようとしたさいに受けた電話から外交官しか知らない暗号が聞こえてくる。それは2年前にベイルートで拉致されたままのオ・ジェソク(イム・ヒョングク)からの発信だった。ミンジュンは米国駐在を条件に外務部長官(キム・ジョンス)に派遣を直訴。外務部と犬猿の仲の安全企画部を出し抜きたい長官はそれを飲む。現地入りしたミンジュンだったが、ベイルートでは誰も信用ならない。早速空港でも危険に見舞われ、飛び乗ったタクシーの運転手が韓国人キム・パンス(チュ・ジフン)で……。
『極限境界線 救出までの18日間』(2023)と似た話。本作のオ・ジェソクは日本人と間違われて誘拐され、間違いなら解放すればよいものを、そのまま拉致されて酷い日々を送らされていたという不運。交渉するにはCIAやらスイスの実業家やら、あらゆる方面で用意することが必要です。ミンジュンとパンスのやりとりが最高で、韓国作品の面白さを再認識。
《り》
『リトル・シベリア』(原題:Pikku-Siperia)
2023年のフィンランド作品。Netflixにて配信。
フィンランドの田舎町リトル・シベリア。元ラリー選手だったタールヴァイネンが自殺するつもりで雪道を失踪中、突然堕ちてきた隕石が車の屋根を破って車内へ。そのおかげでタールヴァイネンが自殺を遂げられなくなったが、隕石の価値は100万ユーロらしく、町は大騒ぎに。自分のものだと主張するタールヴァイネンから隕石は取り上げられ、博物館に展示されることになる。一方、牧師ヨエルとその妻クリスタは隕石墜落の日に妊活に励んでいたところ、クリスタの妊娠がわかる。しかしヨエルはアフガニスタンに出征したときに被爆したせいで生殖能力がなくなってしまったことをクリスタに打ち明けられずにいた。クリスタの浮気を疑うヨエルは、ひそかに相手を探しはじめると同時に、不眠症に陥って夜間の隕石の見張りを請け負うのだが……。
『トム・オブ・フィンランド』(2017)のドメ・カルコスキ監督の作品。北欧の映画は結構好きだけど、ヨヘルの顔とヨヘルに相談にやってくる住人の顔が似すぎていて困りました(笑)。もっと緩い作品を期待していたら、隕石を狙う者が現れてかなり痛々しい。そんな輩とヨヘルがしょっちゅうやり合うはめに陥って毎度血まみれに。しかも血まみれの上着そのまま毎日過ごすって、服1着しかないんかい。結局、妊娠は隕石の日の奇跡で浮気相手はいません。なくなった隕石の行方を知るのはヨルヘとクリスタのみで、趣味にダイビングを始めるというオチは好き。
《る》
『ルツ&ボアズ』(原題:Ruth & Boaz)
2025年のアメリカ作品。Netflixにて配信。
ルツとブリアナはジョージア州アトランタのクラブで活躍中の女性2人組ヒップホップアーティスト。メジャーデビューして売れるに売れることが予想される段になって、これは自分が歌いたかったものではないと感じていたルツは、マネージャーのサイラスに辞めると宣言。多額の契約金を手に入れるつもりだったサイラスは激怒し、ルツの恋人マローンとその父親イーライを強盗事件と見せかけて殺すと、次はマローンの母親ナオミの心配をするがいいとルツにつぶやく。夫と息子を一度に失って悲嘆するナオミがテネシー州ペグラムに帰郷すると聞き、ルツはナオミのそばにいるためについて行く。なかなか仕事を見つけられずにいたところ、ワイナリーで葡萄を収穫する仕事があると知り、やってみるしかない。ワイナリーを父親だった先代から受け継いだ経営者ボアズはルツを一目見る気に入り、ボアズを子ども時代から知るナオミも、ルツが息子の恋人だったことを忘れてついついふたりの恋を応援するのだが……。
旧約聖書の『ルツ記』がモチーフになっているのだそうですが、現代のフツーの話です。歌手が畑違いの仕事に就いて、それでも真面目に勤しむうち、さまざまな幸運がもたらされます。ボアズがベビーフェイスと知り合いなんですよね。ベビーフェイスに紹介してもらって一気に歌手への道が拓きます。黒人にワインが造れるわけがないという偏見を吹き飛ばすのも面白いところ。上手く行きかけたところにサイラスが登場するのは予想どおり。ハッピーエンドも予想どおり。後味の良い作品です。
《れ》
『霊薬』(原題:The Elixir)
2025年のインドネシア作品。Netflixにて配信。
業績不振に陥る製薬会社ワニワラスの社長サディミンから招集をかけられた親族一同。てっきり他社と合併してサディミンは引退する話を聞かされるのだと思っていたが、姿を現したサディミンは髪の毛フサフサお肌ツルツルでやたら若返っている。満面の笑みを浮かべて彼が言うには、永遠の若さを保てる新薬の開発に成功したから、会社はこのまま継続すると。ところがその後すぐにサディミンは血を吐いて倒れ、ゾンビとして蘇る。噛みつかれた使用人たちもゾンビ化し、サディミンの長男バンバン、長女ケネスとその夫ルディおよび幼い息子ライハン、サディミンの後妻でかつてはケネスの親友だったカリナがなんとか邸から脱出。しかし、邸の外にもゾンビが大量発生して、村は阿鼻叫喚の様相を呈していた。逃げ惑ううちにバンバンとケネス、ルディとライハンとカリナの二手に分かれてしまい、前者は地元のワニレッジョ警察署へ、後者は民家へとたどり着いてそれぞれ身を潜める。その民家の住人ニンシーの恋人がたまたまワニレッジョ勤務の警察官ラフマン。それぞれを心配しながら連絡を取り合っていたが、ルディもゾンビに噛まれて……。
この手のB級作品で116分は長い。中だるみもあるけれど、インドネシアのゾンビ映画を観る機会はなかなかないと思われ、この機会に観ておくのもいいのではないでしょうか。エンドロールでは、村のこのような状況など知らずに都会でサディミンからの連絡を待つタワマン暮らしの夫婦の姿。あの新薬が映し出されて、あら、次の舞台は都会なのね。楽しそう(笑)。
《ろ》
『ロイヤル・ネイビー 全滅地帯』(原題:Sunray: Fallen Soldier)
2024年のイギリス作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。日本では“未体験ゾーンの映画たち 2025”にて上映。
元エリート海兵隊員アンディは仕事柄家を空けがちだったが、一人娘のレイチェルは父親の仕事を理解し尊敬していた。アンディの言いつけを守ってレイチェルは麻薬には絶対に手を出さなかったのに、恋人のキャッシュと出かけた晩、キャッシュが不在にしている間にほかの女性たちから勧められてノリで麻薬を吸ってしまう。するとすぐに過剰摂取反応を起こし、泡を吹いて死亡。アンディはレイチェルを死に至らしめたのはキャッシュに違いないと考え、まだ会ったことのないキャッシュを探しはじめる。一方のキャッシュがレイチェル死亡を知ったのは葬儀の後。キャッシュの父親は犯罪組織のトップで、キャッシュに自分の後を継がせるべく麻薬取引にも関わらせていたが、キャッシュは決してレイチェルに麻薬を渡そうとはしなかった。しかしそんなことを知る由もないアンディは麻薬に関わる輩を激しく憎み、キャッシュのいそうな場所を探してはその場にいる者たちを殺してゆく。アンディのチームだった海兵隊員たちもそれに協力するのだが……。
かなり酷い作品でした(笑)。最初に出てきたのは間抜けな男たちだったから、こいつらが主人公のコメディかと思ったら、こいつら速攻で殺される。殺すほうが主役のアンディだったわけですが、話がぶつ切りで破綻しています。麻薬を吸っていそうな者が集う場へ乗り込んで皆殺しにして行くって、その死体はどうするんだ。引退した海兵隊員がここまでできるものですか。こんな神妙な顔をして行為を正当化されても。チームの面々はそれなりに格好いいけれど、邦題とまるで合っていません。劇場で観ても面白くなかったでしょうが、大画面のほうがまだよかったかなと思う。
目次
