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今年観た映画50音順〈は行〉

《は》
『84m²』(英題:Wall to Wall)
2025年の韓国作品。Netflixにて配信。
ソウルにマイホームを持つのが夢だった平凡なサラリーマンのウソン(カン・ハヌル)は、いずれもらえる予定の退職金などすべての資産をフル投入して、17階建てのマンションの14階の1401号室を購入。しかしローンの返済が滞るようになり、一緒に入居した彼女には逃げられ、今はエアコンも使えず電気も極力点けずに過ごす毎日。終業後はウーバーイーツで多少は稼ぐも焼け石に水状態。そこへビットコインで大成功した同僚から儲ける方法を聴き、マンションを一旦売って作った金を元手にビットコインを購入する。1週間後に売却すれば800倍以上になって返ってくるはずだから、マンションを売るのをやめて違約金を請求されたとしてもじゅうぶんの儲けが出るはず。ところが、近頃マンションで噴出している騒音問題について、犯人はウソンだと疑われたうえに暴力をふるったとして警察に連行され……。
1301号室の住人から騒音を訴えられ、自分じゃないんだと1501号室に出向けば、1501号室の住人からさらに上階のせいだろうと言われる。1601号室まで上がるもまた怒られ、最上階のペントハウスにいるのが賃貸に出されているそこらじゅうの部屋の大家かつ住民代表(ヨム・ヘラン)だと教えられます。代表は、高速鉄道の開業時には地価が高騰すると見込んでマンションごと自分のものにするために、ウソンを追い出そうとしているのでした。それに手を貸しているふりをして、その実、スクープを書こうとしているのが1501号室を賃借するチンピラ記者(ソ・ヒョヌ)。面白いけど、ダークすぎて。もうちょっと笑える作品であってほしかった。同様にマンションの騒音を扱ったホラー『層間騒音』と併せて観るのが面白いかも。

《ひ》
『秘密 許せない真実』(英題:Unforgivable)
2023年の韓国作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。日本では劇場未公開。
公衆トイレで惨殺された男性の口に紙切れが詰められているのを発見した刑事ドングン(キム・ジョンヒョン)は、そこに記された日付を手掛かりに捜査を進める。紙切れは10年前に自殺した青年ヨンフンの日記の一部。ヨンフンは被害者の兵役時代の後輩で、当時被害者から酷いいじめに遭っていたらしい。やがてドングンはヨンフンがかつての同級生だったことに気づく。ドングンとは親友と呼んでもよい仲だったにもかかわらず、あるときヨンフンがゲイではないかと思い、以来ドングンはヨンフンを遠ざけて誰かにいじめられるのを見ても知らん顔していたのだ。最初の殺人事件を皮切りに、ヨンフンのいじめに関わっていたとおぼしき人間がひとりまたひとりと殺され、現場には次の殺人を匂わす手掛かりの紙切れが残されている。最後にはドングン自身が犯人のターゲットとなって……。
犯人はヨンフンの母親。心優しき一人息子が自ら命を絶ち、真相にたどりついた彼女は憎き相手を全員殺す決意をします。スリリングな展開の中にドングンの後悔も伝わってきて話に没入した作品でした。と同時に、ゲイのみならず多様な性的指向が世の中には存在すること、そしてこちらがそうではない場合にどのように接すればよいかの難しさについても考えさせられました。

《ふ》
『フランケンシュタイン』(原題:Frankenstein)
2025年のアメリカ作品。Netflixにて配信。一部の劇場で公開された折に観逃し、結局自宅にて。
イギリス人作家メアリー・シェリーが1818年に匿名で出版したゴシック小説が200年以上経ってもこんなふうに映画化されています。『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)や『ナイトメア・アリー』(2021)のメキシコの鬼才ギレルモ・デル・トロ監督が手がけたとなれば面白いのは当たり前。
ヴィクター・フランケンシュタインは、高名な医師である父親がヴィクターの弟ウィリアムにばかり愛情を注ぐことに沸々と怒りを燃やし、必ずや父親を超えると決める。外科医となったヴィクターがとある場で死体蘇生術を披露したところ、外科医師会から追放されるはめに。それでも生命の創造に固執しつづける彼に協力を申し出たのは武器商人ハーランダー。彼から実験場所用の廃墟と資金を提供されたヴィクターは、極秘に入手した死体を切り貼りして新たな命を創り出すことに成功。しかし生まれた「怪物」には知性が伴わず、いくらヴィクターが教えようとしても発する言葉は「ヴィクター」だけ。ある日、廃墟を訪れたウィリアムと婚約者エリザベス。怪物と遭遇したエリザベスは驚くことも気味悪がることもなく、温かい眼差し。怪物もエリザベスには心を開いたかのようだが、ヴィクターには相変わらず進歩の様子を見せない。怪物を鬱陶しく思いはじめたヴィクターは廃墟に火をつけてすべての消滅を図るのだが……。
冒頭は氷海で動けずにいた船の乗員がヴィクターを見つけて救助するシーンから始まります。船長がヴィクターを船室で介抱していると海から聞こえてくるヴィクターを呼ぶ声。ヴィクターが訥々と語る、自身が創造した怪物の話。これが第1部。そして第2部ではヴィクターを追いかけて船に乗り込んできた怪物が語る、廃墟を燃やされた後に生き延びた自分の話。ヴィクター役にオスカー・アイザック、怪物役にジェイコブ・エローディ、エリザベス役にはミア・ゴス。そして船長役のラース・ミケルセン(マッツ・ミケルセンの実兄)が素晴らしい。怪物の師となる盲目の老人を演じたデヴィッド・ブラッドリーとのやりとりには涙が出ました。怪物を創った人こそ怪物。壮大な許しの物語。ラストシーンも美しい。これはやっぱり劇場で観たかった。

《へ》
『ヘヴンズ×キャンディ』
2024年の日本作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
二次元オタクの天翔(たかと)(大成)は母親を亡くした後、父親の悠輔(竹本泰志)から実はゲイであることをカミングアウトされて衝撃を受ける。悠輔は自身が経営する店の従業員だったシンヤ(結城駿)と恋仲になり、現在は悠輔と天翔、シンヤの3人暮らし。シンヤが母親代わりとなって家事などもすべてこなし、悠輔以上に天翔のことを気遣ってくれるが、まだ打ち解けることはできない。ある日、天翔は大好きなアニメ“ヘヴンズ×キャンディ”のイベントのために久しぶりに外出。その帰り、聖地巡礼に訪れた喫茶店で財布を忘れた天翔を助けてくれたのが永遠(とわ)(向理来)。永遠は人気AV男優でノンケを自認。天翔も自分はゲイではないと思っていたのに、瞬く間に恋に落ちて……。
本作を観る前に“有吉クイズ”で女性向けAVの特集をしていたときに、大人気のAV男優だという向理来のことを知りました。まぁ、演技が上手いとは言えないけれど、AVに演技はそう必要ないですもんねぇ。過激なBLです。話のネタに。

《ほ》
『保安官』(英題:The Sheriff in Town)
2016年の韓国作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。日本では劇場未公開だったところ、なぜか今年DVD化。
熱血刑事のテホ(イ・ソンミン)は麻薬組織の大元締め“ポパイ”が潜伏中だとおぼしき部屋に応援を待たずに踏み込む。そこにポパイの姿はなく、訳も知らずに運び屋をやらされていたジョンジン(チョ・ジヌン)を捕まえるも、テホは過剰捜査でクビに。その後、自らが住む釜山北東部の町・機張の治安を守るボランティア班長を務めていたところ、あのジョンジンが現れる。テホのおかげで懲役20年は食らうところ2年で済んだと言うジョンジンは、テホのことを恩人と呼び、親しげな顔を見せる。機張の住人もジョンジンから商売の話を持ちかけられてほくほく。しかしどこかおかしいと、テホはジョンジンに疑念を抱きはじめる。本当はジョンジンは麻薬の密売に関わっているのではないか。住人たちに警告しても、テホがジョンジンを妬んでいるだけだと思われ、テホの言うことを信じるのは義弟のドクマン(キム・ソンギュン)のみで……。
まぁまぁ魅力的なキャストなので日本でも公開すればよかったのにと思ったけれど、観てみりゃ未公開も納得。テンポがイマイチよくなくて、序盤は特にだるい。テホの人柄にも惹かれず、自分が注目されたい人にしか思えません。ただ、ジョンジンこそがポパイだとわかる終盤は面白い。機張の住人の中にはバイプレイヤーキム・ジョンスもいます。

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