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『愚か者の身分』

『愚か者の身分』
監督:永田琴
出演:北村匠海,林裕太,山下美月,矢本悠馬,木南晴夏,田邊和也,嶺豪一,加治将樹,松浦祐也,綾野剛他

109シネマズ箕面にて。本編の上映に10分ほど間に合わないことがわかっていたのですが、この週は予定目白押しだったため、今日観に行かなければ機会を逸するかもしれないと思ってとりあえず駆けつけました。

2019年に上梓された西尾潤のデビュー作を永田琴監督が映画化。もとは短編小説を対象とする公募新人文学賞・大藪春彦新人賞に応募した『東京愚男ダイアリー』という作品なのだそうです。2018年の受賞作で、翌年単行本化。途中まで読んだところで本作を鑑賞。読了時の感想はこちら。ハードボイルドな展開にてっきり男性作家だと思っていたら、作品からはまったく想像できない女性作家でビックリ。美容の専門家じゃあないですか。本作の後に書かれた著作もマルチ商法だったり無年金だったりをテーマにした痛そうな作品ばかりで惹かれます。

戸籍売買を扱う半グレ集団の一員、柿崎マモル(林裕太)。劣悪な家庭環境から抜け出すべく都会にやってきたものの、金も住むところもなく困っていたのを救ってくれたのが松本タクヤ(北村匠海)。

あるとき、タクヤは半グレ集団の幹部・坂口(嶺豪一)からタタキ(=強盗)の話を持ちかけられる。坂口が言うには、集団のトップであるジョージ(田邊和也)が隠し持つ1億円を奪い取り、集団を抜けたばかりの奴に罪を着せようと。断れなかったタクヤだが、危険を感じてすぐに逃げることもできるように準備を始める。彼をこの世界に引き入れた梶谷剣士(綾野剛)にパスポートの偽造を頼み、マモルのこともなんとかしようと考えて。

案の定タタキがバレ、坂口はあろうことかすべてタクヤがやったことだとジョージに告げる。自宅で襲われたタクヤは酷い目に遭わされる。角膜や臓器を望む富裕な買い手のためにもぐりの病院へタクヤを搬送することになったのは剣士で……。

原作を読んだとき、私がマモルとしてイメージしていたのは北村匠海のほうでした。マモルが北村匠海、タクヤが綾野剛だと思っていたから、林裕太が演じているのを見て最初は違和感を持ちましたが、そうか、タクヤに綾野剛だとちょっと年齢的に行きすぎていますね。

やばいことに手を染めていながら、人のことを放っておけない兄貴分のタクヤは、病で亡くなった自分の弟の姿をマモルに重ね、なんだかんだと世話を焼かずにいられません。で、そんなタクヤを可愛がっているのは剣士。上の命令に逆らえば自分が殺されることがわかっているけれど、タクヤを見殺しにすることなんてできません。観ているうちに、どうか彼らが生き延びて幸せを感じることができますようにと願ってしまう。

戸籍を売らなければ暮らせないさまざまな人。本作ではそのうちのひとりを矢本悠馬。カネほしさに情報集めを手伝う女性に山下美月。剣士の恋人役の木南晴夏の明るさに救われる。

生きていればいいこともあるよと言ったところでそれが真実かどうか。でも信じて生きていてほしい。暗くて凄絶な話ではあるけれど、救いもあります。

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