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『ローズ家 崖っぷちの夫婦』

『ローズ家 崖っぷちの夫婦』(原題:The Roses)
監督:ジェイ・ローチ
出演:ベネディクト・カンバーバッチ,オリヴィア・コールマン,アンディ・サムバーグ,アリソン・ジャネイ,ベリンダ・ブロミロウ,スニータ・マニ,チュティ・ガトワ,ジェイミー・デメトリウ,ゾーイ・チャオ,ケイト・マッキノン他

北新地でひとりランチのあと、大阪ステーションシティシネマにて。この2日前にぎっくり腰になったところだったから、ついつい歩くのも慎重になるのですが、私の着席後に通路を上がって来られた男性が階段につまずいて派手に転倒。ポップコーンをお連れの方に託してすぐに退場されたので、手でも洗いに行かれたのかと思っていたら、劇場スタッフに清掃を頼みに行かれたのでした。痛いし恥ずかしいしポップコーンは台無しになるし、悲しかったでしょうに、偉い。あの男性も本作を楽しまれたならいいなぁと思います。

さて本作は、ダニー・デヴィート監督、マイケル・ダグラスとキャスリーン・ターナーの共演で大ヒットした『ローズ家の戦争』(1989)のリメイクです。おそらく公開年に観たはずで、なんとなくは話を覚えているものの35年以上前のこと。ウィキで調べてみたら、オリジナル版は夫の職業が企業内弁護士、妻はケータリング会社を設立。そして夫婦仲はリメイク版よりずっと早くに破綻して、ふたりの応酬もえげつなかったような感じです。

リメイク版の監督は“ミート・ザ・ペアレンツ”シリーズのジェイ・ローチ。夫役にベネディクト・カンバーバッチ、妻役にオリヴィア・コールマン。このキャスティングはバッチリだと思います。結構笑いました。

ロンドンで運命的な出会いを果たした建築家のテオ・ローズと料理人のアイビーは一緒にアメリカに移住してすぐに結婚。10年後、カリフォルニア州メンドシーノ郡の海に面した町で、男女の双子ロイとハティを育てながら幸せに暮らしていた。建築家として波に乗るテオは、アイビーがレストラン“カニカニクラブ”を開業できるようにアシスト。週3日程度の営業でのんびりとカニカニクラブを切り盛りしながら子育てを楽しむアイビー。まさにローズ家は順風満帆。

ところがある嵐の夜、テオが手がけた海軍歴史博物館のてっぺんに設けた帆船のオブジェが強風でぶっ飛び、そのせいで博物館の建物自体も大きく破損する。一方、カニカニクラブには嵐による道路の封鎖によって身動きできなくなった人々が押し寄せる。その中にいた著名なグルメ評論家がアイビーの料理を絶賛。翌日からSNSを見てやってくる客たちで連日大盛況。テオは壊れた博物館の責任を問われて解雇されたものだから、アイビーに代わって子どもの世話を一手に引き受けることになるのだが……。

英語、わかりません。わかりませんよ。でも、この主演ふたりのイギリス英語でやり合っているのを聞いているのがなんとも言えず楽しい。お互いに一瞬にして恋に落ちる出会いのシーンが可笑しくて、双子に恵まれてからも絵に描いたような幸せな家庭を築いていたのに、男女の役割が反対になるとこうも悪い方向へ進むものでしょうか。

35年前だと、今よりもっと「男が稼ぎ、女は家庭を守る」という時代だったかと思います。たぶん今もその意識はあるから、専業主婦だった妻が突然もてはやされて金を稼ぎまくるようになると、逆に無職になった夫は素直に喜べない。美味しいものを食べさせてくれるママのことが大好きだった子どもたちも、いつしか運動マニアのパパに鍛えられて甘いお菓子には見向きもしなくなります。子どもたちが離れてゆくのは寂しいのに、仕事が楽しくて辞められない。両立するのはむずかしいものなのだとつくづく思わされるのでした。

殺し合いにまで発展していながら、最後は気持ちを取り戻す。ハッピーエンドだと思ったところでこのオチ。だけどこれも一種のハッピーエンドなのではないでしょうか。

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