『BAD GENIUS/バッド・ジーニアス』(原題:Bad Genius)
監督:J・C・リー
出演:カリーナ・リャン,ジャバリ・バンクス,ベネディクト・ウォン,テイラー・ヒックソン,サミュエル・ブラウン,コナー・メドウズ,サラ=ジェーン・レドモンド,デイヴィド・ジェームズ・ルイス,ベネディクト・ウォン他
私の勤務先にお盆休みというものはないけれど、世間がお盆休みのときに大阪市内の劇場まで車で行ったらコインパーキングも盆仕様の料金になっているのだろうかとふと不安になり、市内へ出向くのはやめて塚口サンサン劇場へ。ちょうど、とても面白かったタイ作品『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2017)のハリウッドリメイク版を1週間限定で上映中でした。
監督は『ルース・エドガー』(2019)で脚本を担当したJ・C・リー、本作が長編監督デビュー作とのこと。リー監督と共同で脚本を執筆したのは、その『ルース・エドガー』や『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』で監督も務めたジュリアス・オナー。フランス作品『エール!』(2014)を『コーダ あいのうた』(2021)としてハリウッドリメイクしたスタッフが製作に関わっているそうです。海外の佳作を見つけてリメイクする手腕に長けているのでしょうね。
中国系移民のリン(カリーナ・リャン)は頭脳明晰、芸術の才能も持ち合わせる女子。コインランドリーを営む父親(ベネディクト・ウォン)は優秀な我が娘がMIT(マサチューセッツ工科大学)に通う日を夢見て、富裕層が通う名門校に入学させようとする。校長(サラ=ジェーン・レドモンド)との面接時、学費はもちろんのこと制服代や通学費を即座に計算したリンは、自分の家庭ではその金を工面することが無理だと断言。あまりに速い頭の回転に驚きを見せる校長は、リンを特待生として迎え入れると言う。
こうして入学はしたものの、この高校の生徒はお金持ちばかりで友達などできそうにもない。そう思っていたところへ、同級生のグレース(テイラー・ヒックソン)が声をかけてくる。グレースは落第ギリギリらしく、次の試験で良い点が取れなければヤバイ。勉強を教えてほしいと言われても付け焼き刃では無理だろう。試験当日、焦っているグレースを見て放っておけなくなり、リンはふと思いついた手を使ってカンニングさせる。
大喜びのグレースは、恋人のパット(サミュエル・ブラウン)にもこの件について口を滑らせる。するとやはり成績のよろしくないパットは、報酬を提示してリンにカンニングさせてくれるように持ちかける。喉から手が出そうなほど欲しい金。リンは家庭教師のアルバイトをしていると父親に嘘をつき、複数の生徒にカンニングをさせる。そのことに気づいたのが、もうひとりの特待生でアフリカ系移民の男子生徒バンク(ジャバリ・バンクス)で……。
友達だ親友だと言っていても、リンとグレースでは育った環境が違いすぎる。そのときは当人たちにそんなつもりはなくても、一緒にはしゃいでいる姿に嘘っぽさを感じずにはいられません。金持ちのボンボンやお嬢は貧乏な秀才を利用して、用済みとなればポイッ。悲しい事実です。
結局わかり合えるのは貧乏人同士のリンとバンクというのも寂しいけれど、リンがバンクを守り切るラストには明るい気持ちに。オリジナルとは異なるこんなエンディングも小気味が良い。ジュリアード音楽院かMITかの選択なら、後者のほうが生涯安泰じゃないの?と思うのは、どちらにも縁のない者の考えでしょうね(笑)。なんにせよ、リンの最後の言葉はカッコイイ。良いリメイクです。
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