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『雪風 YUKIKAZE』

『雪風 YUKIKAZE』
監督:山田敏久
出演:竹野内豊,玉木宏,奥平大兼,當真あみ,藤本隆宏,三浦誠己,山内圭哉,川口貴弘,中林大樹,田中美央,田中麗奈,益岡徹,石丸幹二,中井貴一他

109シネマズ箕面にて。

戦艦ものの男性人気は凄いですよね。私なんてまるで知らないから、実在の戦艦の話が映画化されるたびに、「へ~っ」とか「ほ~っ」とか思っているだけです。戦艦と軍艦って違うのかしらなどとも思っていた口で、わりと最近調べて軍艦が戦艦の総称であることを知ったぐらいです。

本作は太平洋戦争において活躍した実在の駆逐艦“雪風”をめぐるドラマ。ほら、ここでまた私のわからない言葉が。駆逐艦とはなんぞや。駆逐艦は“大和”などの主力艦を護衛するのがおもな役目なのだそうです。機動性が高いのが特徴で、主力艦が沈没して乗組員たちが海に投げ出されると直ちに救助に向かう。攻撃に遭って帰らぬ駆逐艦も多いなか、雪風は最前線から仲間を救って必ず帰ってくるため、「幸運艦」と呼ばれていたとのこと。山田敏久監督はこれまで『ソフトボーイ』(2010)、『二流小説家 シリアリスト』(2013)、『柘榴坂の仇討』(2014)、『起終点駅 ターミナル』(2015)、『あの頃、君を追いかけた』(2018)などなど、硬軟さまざまな作品で助監督を務めてきた人。軍艦ものでは『聯合艦隊司令長官 山本五十六 太平洋戦争70年目の真実』(2011)と『空母いぶき』(2019)でも助監督を務めました。これが初監督作になるようですね。

日米開戦以降、ミッドウェイをはじめとする幾多の作戦に参加して生き抜いた大日本帝国海軍の雪風。下士官や兵を束ねるのは先任伍長の早瀬幸平(玉木宏)。ミッドウェイで死にかけたところを早瀬に助けられた井上壮太(奥平大兼)はこのたび雪風の水雷員となることが叶い、早瀬とともに働けることを光栄に思っている。新しく艦長として着任した寺澤一利(竹野内豊)はいつ何時も冷静沈着で、時折温かさに欠けることも言う。ひとりでも多くの仲間を助けることが自分たちの任務だと考えている早瀬は寺澤の言うことを不条理に感じることもあるけれど、お互いへの信頼は絶大で……。

砲撃だらけの戦艦もののほうが人気があるかもしれませんが、私はこんな描き方のほうが好きでした。冷ややかなところもあるように見える寺澤は、本当は戦争に反対。「九死に一生を得ることはあっても、十死の作戦などあり得ない」と特攻を非難。また、中井貴一演じる第二艦隊司令長官の伊藤整一も、大事な部下たちを犬死にさせるだけの特攻には従わない姿勢を見せます。

何でもかんでもお国のため、少しでも文句を言えば非国民扱いされたのかと思っていたから、最前線で戦っている人たちのなかにもこうした感覚をちゃんと持ち合わせる人がいたことがわかってホッとします。それでも命を落とした人がたくさんいた事実はなくならない。沈んだ敵艦からボートで脱出した米兵たちに向かって部下が発砲したとき、「相手は丸腰だ。恥ずかしい真似はするな」とたしなめた寺澤。そう、いつか我がおこないを振り返るとき、恥ずかしい人間になってはいけない。戦時に限らず、人としてのあり方を考えさせられます。

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