『木の上の軍隊』
監督:平一紘
出演:堤真一,山田裕貴,津波竜斗,玉代勢圭司,尚玄,岸本尚泰,城間やよい,川田広樹,山西惇他
ナレーション:松下洸平
シネコンで金曜日に公開された新作はたいてい翌週前半には制覇しているところ、本作の公開週は週末に遊び倒して翌週月曜日に発熱、3日間寝込みました。病み上がりで出勤した日の晩は甲子園だったから映画を観ることはできず、翌金曜日にやっと劇場へ。ふだんならば1週間経ってまた新作が次から次へと公開されているところ、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』のせいかおかげか新作は数えるほどしかなし。私としましては「前週の金曜日に公開された作品を今週の金曜日に観る」というのは不覚に感じたりもするのですが(笑)、どんなプライドやねん。(^^;
109シネマズ大阪エキスポシティにて。
実話に着想を得た井上ひさし原案、こまつ座原作の舞台劇の映画化とのこと。監督はダイナマイト平の別名も持つ平一紘。沖縄に生まれ、ずっと沖縄で過ごし、沖縄国際大学在学中に自主映画制作チームを立ち上げる。昨年は沖縄観光大使にも就任という、まんま沖縄の人。本作はもとが舞台劇とあるように、ほぼ堤真一と山田裕貴の二人芝居のような体裁を取っています。
1945年4月、太平洋戦争末期の沖縄・伊江島に米軍が上陸。宮崎から派兵されたベテラン兵士・山下(堤真一)の指揮のもと、地元出身の新兵・安慶名(山田裕貴)ら日本軍は応戦を試みるがどうにも太刀打ちできず。次々と仲間が殺られるなか、追い詰められた山下と安慶名は大きなガジュマルの木の上に逃げ込む。戦闘経験なく不安に怯える安慶名に対し、山下は援軍が来るまでこの場で待機することを示唆するのだが……。
山下は戦闘に長けているとはいえ、島のことを熟知しているのは安慶名のほう。携帯していたわずかな食糧が底をつくと、安慶名は食べ物を探しに行かせてほしいと言い出します。殺されるかもしれない恐怖よりも空腹のつらさが勝つわけですね。島の植物や生物について詳しい安慶名に偉そうにしつつも教えを請う山下の様子は、こんな絶望的な状況の中でもたまに笑いを誘います。ソテツもそのまま食べれば大変なことになるけれど、調理方法次第では食べられる。米軍が残した缶詰等を見つけたときに安慶名は狂喜、しかし山下は敵軍の食糧など食ってたまるかと断固拒否します。そんな山下になんとか生きていてほしくて安慶名が考え出す案。山下もきっと気づいていたのではないでしょうか。
終戦を知らないままに2年もこんな日々を送りつづけた2人。観るのがしんどくなる描写の続出だったにもかかわらず、堤真一と山田裕貴の好演によって時にはホッとしながら最後まで観ることができました。それでも、いったい何のための戦争かと思うし、とにかく帰りたいんだという安慶名の気持ちは当たり前だと思います。生きて帰ることが恥ずかしいなんて思わせちゃいけない。
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