『映画 おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』
監督:二宮崇
出演:原田泰造,中島颯太,城桧吏,大原梓,東啓介,渡辺哲,曽田陵介,井上拓哉,芦原優愛,堀丞,ゆうたろう,工藤綾乃,山崎紘菜,池田朱那,赤ペン瀧川,鳥居みゆき,徳重聡,雛形あきこ,トータス松本,松下由樹,富田靖子他
前述の『小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜』とハシゴ。同じく109シネマズ大阪エキスポシティにて。これもタイトルすら聞いたことがなかったからスルーしかけていた作品です。原作は『LINEマンガ』で連載中の練馬ジムによる漫画。お~、私は『LINEマンガ』なるものがあることも初めて知りました。昨年TVドラマ化されて、今回の劇場版制作に至る。監督はTVドラマ版で演出を担当した二宮崇。全然期待せずに観はじめたら、オモロイやんか。
沖田家は4人家族。誠(原田泰造)は事務機器のリース会社で営業戦略室の室長を務め、妻・美香(富田靖子)は推し活の資金作りのためにパートを始めて今は正社員に。長女・萌(大原梓)は大学生で、二次創作の同人活動をしている。長男・翔(城桧吏)は美容に目覚めた高校生で、メイクが大好き。
一家で親しくしているのは、カミングアウトしている獣医学部の学生・五十嵐大地(中島颯太)とその先輩でパートナーの砂川円(東啓介)。大地の母親で動物病院を経営する美穂子(松下由樹)とも家族ぐるみのつきあい。縁あって誠は大地と円の仲人の役目も果たした。家族みんなそれなりに穏やかな毎日を送っているはずだったのに、ちょっとした不幸が襲いかかる。
誠の部下・山本が突然退職し、退職代行会社経由だったものだから、辞めるに至った理由がはっきりしない。誠は自分がパワハラまがいのことをしていたのではないかとふと不安になっていた矢先、山本が担当していたペットグッズの販売店で不手際が起こる。誠が謝罪に行こうとすると、その販売店の店長がかつて誠の部下だった佐藤(曽田陵介)だとわかる。彼こそ誠のパワハラに遭って辞めた人。
美香は美香で、せっかく正社員になったというのに、ずっと年下の上司・堀田(山崎紘菜)とのつきあい方に頭を悩ませている。萌は二次創作ではなくオリジナルの物語を描きたいのに、自分の描きたいものがわからない。翔は以前に所属していた野球部の部室が台風による浸水で多大な被害を受けたことを知り、力になりたいと女子たちに相談。
こんな感じで、実際になくもなさそうな出来事に家族それぞれが見舞われます。TVドラマ版を一度も観たことがないので、以前の誠がどうだったか知りませんが、とにかく古い常識に囚われた、パワハラさもありなんな人だったらしい。ゲイにも思いっきり偏見があり、そのせいで佐藤が退職に追い込まれたことは終盤にわかります。人なんてそう簡単に変わるわけはないと思っていた佐藤と誠が肩を並べて酒を飲むようになるシーンは、観ているこちらまで楽しくなる。
何のためにパートを始めて正社員になったのかを忘れていた美香が、そうだ、韓流アイドルの推し活をするんためだったと思い出すシーンも最高。富田靖子の絶叫が可笑しすぎる。それに匹敵する面白さを最後に見せてくれるのが山崎紘菜です。トータス松本が演じる伝説の編集者のひと言も奥が深い。
何年何十年と経ったときに振り返ってみて、「これを好きだった自分」を好きでいられることって、大事かもしれません。
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