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『雪子 a.k.a.』

『雪子 a.k.a.』
監督:草場尚也
出演:山下リオ,樋口日奈,占部房子,渡辺大知,石田たくみ,剛力彩芽,池田良,石橋凌他

塚口サンサン劇場で前述の『レオ:ブラッディ・スイート』を観た後、晩の庄内でのイベントまでまだ時間あり。絶妙の時間帯に本作の上映があることを知り、ノーマークだったけど鑑賞。そうしたら、めちゃめちゃ良くて、今まで知らずにいてすみませんと思いました。他の劇場では今年初めに上映されていた作品なのですね。今これを持ってきてくれてありがとう。

草場尚也監督、存じ上げなくてそれもすみません。本作が劇場用映画初監督作なのだそうです。もうこれ1本で絶対忘れない監督になりました。

小学4年生の担任を務める教師・吉村雪子(山下リオ)、29歳ヒップホップが大好きで、自らもラップを始めて数カ月になるが、そんなことは同僚たちに決して言えない。仕事帰りの夜の公園で仲間と集まってラップする時間だけが楽しい。

4年2組の児童たちは皆可愛くて素直だが、問題はいろいろとある。たとえば森幸太郎(猪股怜生)は「音読」の宿題の保護者記入欄に明らかに幸太郎自身が書き込んでいる。親に電話するもいつも不在で、ついに来校した母親(中村映里子)からは音読の宿題に意味があるのかと問われる。突然不登校になった坂下類(滋賀練斗)の家庭を毎週訪問しているが、類は顔も見せてくれず、父親(池田良)は雪子のことを馬鹿にしたように薄ら笑い。

ラップで発散と行きたいところ、初めてバトルではクソミソにけなされ、それが当たっているだけに落ち込む。長く交際している恋人の堀田広大(渡辺大知)からは結婚の話を一方的に進められたうえに、ラップをしているときの雪子のことは正直に言って好きではないなどと言われて……。

自分の気持ちを言葉にするのが上手くはない雪子。ほかの教師たちが子どもたちと明るくコミュニケーションを取っているのに比べ、雪子はそうできません。その代わり、子どもたちのことをよく見ていて、心配事をひとりで抱えている子を見つけるとそっと声をかけます。

得意なはずの跳び箱をパスしようとする女子を見て、担任の谷川修介(石田たくみ)は何も考えていないけれど、雪子はその女子が生理中であることに気づいてそっと声をかけ、保健室に連れて行きます。こんなものとこの先ずっとつきあっていかなきゃならないなんてと嘆く女子と話す雪子の姿がとてもいい。

子どもたちからも「神」と言われているベテラン教師の大迫美香(占部房子)だって、人には言えないことがある。喫煙を「堂々と隠している」という話もよかったし、彼女の「生理用品の購入について」の話もよかった。

嫌な人を演じることの多い池田良が本作でも最初は嫌な人だなぁと思いながら観ていました。毎週判で押したようにやってくる雪子を見下しているとしか思えなかったけれど、本当は不登校になった息子にどう接すればよいかわからず悩んでいることが終盤にわかります。雪子に対して「あなたは毎週来ても気の利いたことひとつ言えない。だけど、あなたの言葉には嘘がない」。そして訪れるこの後の展開には涙がこぼれました。私の後ろの列に座っていた人は嗚咽していましたね(笑)。

吉祥寺から故郷の長崎に帰って出場するラップのコンクール。変装して観に来る父親を石橋凌が演じていて、この格好には笑った。私はラップに詳しくないので、出演者の顔を見ても全然わからないのですが、有名なラッパーが多く出ている模様。今までほとんど聴かずに来たけれど、こんなふうに想いを歌に乗せる音楽っていいかもと思いました。

思わぬ拾い物となった1本。

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