『キャンドルスティック』
監督:米倉強太
出演:阿部寛,菜々緒,サヘル・ローズ,津田健次郎,YOUNG DAIS,リン・ボーホン,アリッサ・チア他
109シネマズ箕面にて。阿部ちゃん主演だというのに宣伝も見かけないし、口コミを見ても評価は低くはないけど高くもない日本×台湾共同製作作品。109シネマズ箕面にて19:45から上映という時間帯にも「遅いねん」と自分の都合だけで毒づいて(笑)、観逃したくはないから行きました。
本作が長編デビューとなる米倉強太監督が元FXトレーダーの川村徹彦による『損切り FXシミュレーション・サクセス・ストーリー』を映画化。FXがなんたるかも知らない私にはたしてわかるのだろうかと懸念していたら、やっぱり何のこっちゃわからなかったけれど、期待していなかった分、楽しめました。舞台は日本の元号が平成から令和に変わってすぐ、2019年のGW明け。
日本トップの半導体企業に務めていた野原賢太郎(阿部寛)は、ホステスから成り上がって社長夫人の座に就いたリンネ(アリッサ・チア)の依頼を受けてハッキングを成功させたのち、リンネの裏切りに遭って逮捕される。出所してから根無し草の生活を送っていた彼は、トレーダーの吉良慎太(YOUNG DAIS)のセミナーに参加。そこで自分と同じく「数字に色が付いて見える」という望月杏子(菜々緒)と出会って恋仲になる。杏子は数学者の夫(津田健次郎)と別れて野原と一緒に。
ようやく平穏な気持ちを取り戻したというのに、野原のもとへかつての同僚ルー(リン・ボーホン)から連絡が入る。ルーはリンネの甥で、野原が逮捕された事件でやはり同僚のとロビン(デヴィッド・リッジス)と共にリンネに裏切られた口。まったく信用できない叔母のリンネからまたしても陰謀を果たすように命じられ、もしも断ればルーの会社が潰されてしまう。致し方なく野原とロビンに協力を求め、これを最後のハッキングにしようと話す。
一方、吉良は母親から受け継いだ施設“夜光ハウス”を運営していた。そこは、親がいないどころか戸籍もない外国人の少年少女が暮らす場所。イラン人女性ファラー(サヘル・ローズ)が子どもたちの世話をしていたが、国税局の査察が入り、金を納めなければ施設は閉鎖に追い込まれる。6千万円近い金の工面などできるはずもないと絶望し、友人であるイラン人ハッカーのアバン(マフティ・ホセイン・シルディ)に相談すると……。
ちょうど平成から令和に変わるときに金融システムの混乱を利用して巨額の金を奪うという計画。リンネの憎たらしいことと言ったらこのうえなし。きっと最後は野原がやりこめてくれると信じていました。彼女に利用されっぱなしだったルーが野原の復讐を知ったときの表情もいいですね。なんといってもいちばん共感できたのは、リンネの娘メイフェン(タン・ヨンシュー)かな。実の娘に「クソ女」と呼ばれるような母親になっちゃいけません。
それなりに面白かったけど、原作者って、作中の吉良のようなセミナー屋さんなんですね。それを知ると何というのか「ふーん」みたいな感じで冷める。トレーダーを目指す人のセミナーのシーンが何度かありますが、嘘っぽい自己啓発セミナー(行ったことないけど)とかヤバい新興宗教のセミナーに見えなくもなくて、ちょっと怖い。金儲けの話なんて自分だけにとどめておけばよいものを、「儲かるよ」と人に話すのは詐欺師か馬鹿かと誰かが言っていましたが、そうなんじゃないかと私も思ってしまうのでした。
それにしてもこの菜々緒はいつもと雰囲気がまるでちがう。可憐です。
目次