『ミゼリコルディア』(原題:Miséricorde)
監督:アラン・ギロディ
出演:フェリックス・キシル,カトリーヌ・フロ,ジャン=バティスト・デュラン,ジャック・ドゥヴレ,
ダヴィド・アヤラ,タチアナ・スピヴァコヴァ,セバスチャン・ファグラン,サロメ・ペロス他
アラン・ギロディ特集を開催中だった第七藝術劇場へ、最後の1本となった本作を観に行く。
『湖の見知らぬ男』(2013)、『ノーバディーズ・ヒーロー』(2022)、そして2024年の本作と、発表年順で観ることができました。
当時、主人に恋い焦がれながらもその想いを打ち明けることはできなかったジェレミー。
今はトゥールーズで暮らす彼は、車で数時間の道のりをかけて弔問にやってくる。
マルティーヌは歓迎し、ジェレミーにパン屋を継がないかと言い出したものだから少々困惑。
酒も入って1泊だけのはずが、そのままマルティーヌ宅に居座り続けるジェレミー。
マルティーヌの息子ヴァンサンはそんなジェレミーが自分の母親を狙っているにちがいないと考え、
ことあるごとにジェレミーに突っかかり、追い出そうとする。
パン屋時代の同僚ワルターに会いに行ったジェレミーは、ワルターを怒らせて叩き出された帰り、
追いかけてきたヴァンサンと森の中で揉み合いになる。
殺されかねない勢いに反撃した結果、ヴァンサンは死亡。死体を土の中に埋めるジェレミー。
帰宅しないヴァンサンのことを心配する家族が心当たりを探すも見つからない。
やがて警察が動き出し、マルティーヌの家に集まったワルターやジェレミーも聴取される。
内心不安で仕方ないジェレミーが教会に行くと、神父フィリップが告解したいと言い出し……。
“miséricorde”を調べたら、3つほどの意味があるようです。
「慈悲」「教会の聖職者席の腰支え」「大変だ」。どれも当てはまる絶妙のタイトル。
変な村なんですよ。
そういえば、ギロディ監督の『湖の見知らぬ男』はリゾートビーチ、『ノーバディーズ・ヒーロー』は街、
本作は山に囲まれた田舎の村と、全部違う。特に本作の村はとても美しい。
木洩れ陽の差し方を見ていると、変な村だということを忘れそう(笑)。
はっきりとは描かれないけれど、みんな人に言えない秘密を持っている様子。
ジェレミーがゲイなのは明らかですが、ワルターのこともゲイだと思って迫ったら逆鱗に触れる。
ヴァンサンには妻子がいるものの、どうやら昔はジェレミーと何かあったらしいし、
マルティーヌはジェレミーのことがお気に入りで、彼が自分の夫に気があったことも察しています。
そしてまた神父はジェレミーに片想いしていて、ジェレミーが殺人を犯したことを知っている。
ジェレミーのことをなんとか助けようと、警察の目を欺くために考える場面が凄い。
森の中はキノコの宝庫らしくて、セップ茸がわんさか採れる。
時期外れのモリーユ茸も生えてきたその場所の下にこそヴァンサンの遺体が眠っていて、
キノコ採りを装ってジェレミーがうろうろするのは怪しすぎ。
笑ったのは、話を聴きに来た刑事がマルティーヌから勧められて酒を飲んでいるところ。
おかわりも断らない。で、パトカーで平然と帰って行く。これが普通なんですか。
パスティスを飲みたくなりました。
やっぱりこれも人に薦める気持ちにはなれない作品なのですが、なんだかクセになるギロディ監督。
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