『来し方 行く末』(原題:不虚此行)
監督:リウ・ジアイン
出演:フー・ゴー,ウー・レイ,チー・シー,ナーレンホア,ガン・ユンチェン,
ホアン・レイ,フー・ヤオジー,ホワイト・K,スン・チュン,コン・ベイビー他
京都シネマにて2本ハシゴの2本目。
数カ月前に京都シネマに行ったときに予告編が流れていて、観たいと思った中国作品です。
一昨年の秋に開催された第36回東京国際映画祭での上映時は『耳をかたむけて』という邦題だった模様。
『来し方 行く末』という邦題のほうが私は断然好きです。
脚本家を目指すも叶わず、弔辞の代筆業で生計を立てている男性ウェン・シャン。
葬儀場に勤める友人の取次により仕事を受けているが、
丁寧な取材を重ねたうえでしたためるウェン・シャンの弔辞は依頼主の評判がとても良い。
依頼人はいろいろ。
例えば、亡くなった父親とは交流の少なかった男性。
そのまだ幼い息子は祖父のことが大好きで、父親と共に祖父と最期の時を過ごせると思ったのにそうならなかった。
一緒に会社を立ち上げた同僚でありCEOでもあった友人を突然亡くした男性。
窓のない地下の部屋から大きな窓のある上階の明るい部屋へ会社を移す直前だったのに。
癌で余命宣告を受けた自身の弔辞を依頼してきた老婦人。
ネットで親しくなったものの面識はない男性の死を知り、弔辞に文句を付けてきた女性。
ウェン・シャンはさまざまな人の話に耳を傾け、故人や依頼者のことを知ろうとします。
彼は非常に穏やかな人柄に見える半面、感情の起伏もなくて、人生が楽しんでいるようには見えません。
だけど、そんな彼のことを葬儀場の友人が表す言葉がとても的を射ています。
特に好きだったのは、CEOを亡くした会社員の話。
故人の身内からの依頼を受けるのは普通でも、会社のCEOが故人となると葬儀の大きさも意味も変わる。
この話は受けられないと一旦は断ったウェン・シャンと会社員の会話にはしんみり。
緩やかに話が進むから、ちょっと睡魔に襲われた瞬間もあるけれど、(^^;
知らない誰かのことをきちんと知って弔辞を書こうとする姿には胸を打たれました。
人の見え方はひとつではなくて、相手によって捉え方も違うのですね。
弔辞って、親しい人が自分で書くものだと思っていましたが、こんなビジネスもあるんだなぁ。
これはこれでありかなと思います。ウェン・シャンみたいな人が書いてくれるならば。
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