『シンシン/SING SING』(原題:Sing Sing)
監督:グレッグ・クウェダー
出演:コールマン・ドミンゴ,クラレンス・マクリン,ショーン・サン・ホセ,ポール・レイシー他
前述の『鬼滅の刃 鼓屋敷編』をTOHOシネマズなんば本館で鑑賞後、別館に移動して。
ニューヨーク、ハドソン川に面して建つシンシン刑務所。
重罪を働いた囚人たちを収監する刑務所らしく、有名な囚人としては“サムの息子事件”を起こしたデヴィッド・バーコウィッツや、
“ブルックリンの吸血鬼”と呼ばれたアルバート・フィッシュ、電気椅子で処刑された最初の女性死刑囚マーサ・プレイス、
この刑務所では更生プログラムとして1930年代からさまざまなレクレーションがさかんにおこなわれているのだそうです。
そんなプログラムの中で、特に意識改善と再犯率の低下にめざましい効果を見せているのが、
舞台演劇を通じた更生プログラム“RTA(=Rehabilitation Through the Arts)”。
囚人たちが演劇に臨む様子を描いた作品としては『アプローズ、アプローズ! 囚人たちの大舞台』(2020)がありました。
そちらはフランス作品で、実話が基。
また、囚人たちに演技指導することになった舞台俳優の視点で撮られていましたが、
本作は演技指導を受ける側の囚人の視点で描かれています。
実話ではないけれど、本作では囚人役をRTAの卒業生である元囚人たちが演じているのも見どころ。
シンシン刑務所に収監されているたディヴァインGは無実を訴えるも認められないままだが、
刑務所内の更生プログラム“RTA”のグループに所属して演劇に取り組むことで前向きでいられる。
あるとき、RTAに欠員が出たため、1名補充することに。
参加志願者数名の中にはトラブルメーカーとして恐れられているディヴァイン・アイもいた。
ディヴァインGとマイク・マイクがディヴァイン・アイに会って志願の理由を聞くと、
意外にもディヴァイン・アイは知的。演劇の素養もありそうだから、彼をRTAに引き入れることに。
RTAの舞台演劇の脚本はこれまでずっとディヴァインGが執筆してきたが、
次回公演の案を発表したところ、ディヴァイン・アイが異議を唱える。
囚人たちはシェイクスピアのような悲劇ではなく喜劇を観たいはずだと。
それも一理あると、次回は演技指導をするブレントが脚本を書くことに。
“エルム街の悪夢”シリーズのフレディも出てきてほしい、やっぱりハムレットなど、好き放題に言う。
それらを全部盛り込んだ脚本をブレントが書き上げたものだから、みんな大興奮。
それぞれが希望の役を演じるために一応オーディションを受け、ディヴァインGはハムレット役を希望。
ところが、悲劇より喜劇と言った張本人のディヴァイン・アイもハムレット役を希望して……。
ちょっと期待しすぎました。
それなりに良くはあるものの、めちゃめちゃ良かったとは思えません。
ディヴァインGがいったいどんな罪で投獄されたのか、どういう証拠を持って無実を証明しようとしたのか。
この辺りはほとんどわからないまま。
まぁ、あくまでも主役は演劇ですから、それぞれの細かい話まで盛り込んだら長くなっちゃうか。
ほかの囚人たちの相談に乗り、聴聞会を乗り切れるように助けているディヴァインG。
彼のアドバイスを聞き入れた囚人は無事釈放されることになるのに、
彼自身は審査での受け答えすら演技を疑われるという悲しい現実。これはつらいですね。
ラストシーンはまるで『ショーシャンクの空に』(1994)でした。
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