『ザリガニの鳴くところ』(原題:Where the Crawdads Sing)
監督:オリヴィア・ニューマン
出演:デイジー・エドガー=ジョーンズ,テイラー・ジョン・スミス,ハリス・ディキンソン,
マイケル・ハイアット,スターリング・メイサー・Jr.,デヴィッド・ストラザーン他
気になりすぎて原作を買おうとしたら、まだ文庫化していないじゃあないか。
ならばまだ先でいいやと、映画版を先に観ることにしました。
実家に寄って母と晩ごはんを食べたあと、イオンシネマ茨木にて。
で、その原作はディーリア・オーエンズの世界的ベストセラー小説だそうで。
リース・ウィザースプーンが製作を務めたことも話題になっているらしい。
アンミカがCMで「必見」と言ってます。ほんとに必見かどうか観てみましょう。
1969年、アメリカ・ノースカロライナ州の田舎町。
裕福な家庭に育ち、町の人気者だった青年チェイスの変死体が発見される。
事故の可能性も高いなか、人々は“湿地の女”に疑いの目を向け、
彼女の自宅を訪れた刑事は証拠を見つけたとして彼女を即座に逮捕する。
“湿地の女”と呼ばれて蔑まれてきたのは、カイアという女性。
彼女は両親と兄姉とともに1950年代から湿地帯で暮らしていたが、
DV亭主に耐えかねて優しかった母が家出、兄姉も次々と出てゆく。
やがて父親も蒸発し、わずか6歳だったカイアはひとりぼっちに。
学校へ行けず、読み書きもできない彼女のことを住民は知らんぷり。
雑貨店を営む夫婦だけが彼女を案じて手を貸しつづけた。
そんなカイアは20歳になる前に湿地帯によく遊びにきていた青年テイトと出会う。
テイトはカイアに読み書きを教え、カイアは図書館の本を読破。
知性を備えて湿地帯に住む生物の研究にいそしむ。
その仲が恋に発展したふたりだったが、テイトは大学進学のため町を出たまま戻ってこない。
傷心のカイアに声をかけたのがチェイス。
変わり者のカイアのことを話のネタにしたいだけであろうチェイスだが、
そうだと気づかないカイアはチェイスとつきあいはじめ……。
チェイスが死んだのは事件なのか事故なのか。
最後まで引っ張られつづけるので、興味を持って観ることはできます。
以下ばりばりのネタバレを。
デヴィッド・ストラザーン演じる弁護士はやはり町の住人でありながら、
カイアに対して偏見を持っていなかった数少ない人物。
カイアの弁護を買って出て、彼の真摯な弁論が効いてカイアは無罪を勝ち取ります。
確かに胸を打つ弁論ではあったけど、偏見に満ち満ちた陪審員たちがこれで無罪にするかと思ったりも。
カイアの無実を信じたというよりは、自分たちが善人だと思われたかったからに感じます。
ここまで来ても、真実はどうだったのかはまだわからない。
カイアが無罪になったことで、そうか、チェイスは勝手に落っこちて死んだだけかと思うよりほかない。
ところが最後の最後。
裁判後に結婚したカイアとテイトは湿地に住みつづけて幸せな生涯を送り、
カイアが静かに息を引き取ったのちにテイトが知る真実。
えーっ、やっぱり殺してたんかい。
なんとも後味の悪いオチです。
感動的ではない。
初恋の想い出はほろ苦いか知らんけど、初恋の相手が実はその後に出会った男のことも好きで、
結局そいつのことを殺していたと知ったときのテイトの気持ちを思うと居たたまれません。
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