『世界で一番しあわせな食堂』(原題:Mestari Cheng)
監督:ミカ・カウリスマキ
出演:アンナ=マイヤ・トゥオッコ,チュー・パクホン,カリ・ヴァーナネン,
ルーカス・スアン,ヴェサ=マッティ・ロイリ他
大阪ステーションシティシネマにて。
フィンランド/イギリス/中国作品。
なんか好きなんです、ミカ・カウリスマキ監督。
そういえば弟のアキ・カウリスマキ監督の作品の1シーンが
『花束みたいな恋をした』にちらりと写っていましたよね。
この兄弟の作品は独特の雰囲気を醸し出していてすぐわかる。
フィンランド北部、ラップランド地方の小さな村に、
ある日、中国人の親子とおぼしき2人がやってくる。
親子は村で唯一の食堂へ入ってくると、女主人のシルカを捕まえ、
ある人物を探しているのだが知らないかと尋ねる。
シルカも食堂の常連客もそんな人物の名前は聞いたこともない。
途方に暮れて閉店時刻まで滞在した親子チェンとニュニョ。
村にはホテルもなく、今から大きな町まで出向くには遅すぎる。
困り果てた様子のチェンに、シルカは余っている部屋を提供。
翌日、食堂を訪れた中国人団体客にシルカが困惑していると、
チェンは自分が上海の料理人だったことを明かし、料理を任せてほしいと言う。
チェンの料理は大好評で、その日記録した過去最高の売り上げにシルカは大喜び。
常連客たちにもチェンの料理を出したところ、皆がその旨さに驚いて……。
中華料理なんてゲイでもない白人が食えるもんかと
差別極まりない暴言を吐いていた常連客が、一口食べて目を見張ります。
村の住人のほとんどが60歳以上で健康に問題を抱えている。
それがチェンの薬膳料理を食べてどんどん元気になるのです。
コロナ禍でこんな中国人の心温まる話って、文句を言う人もいるかもしれません。
でも今だからこその公開を意識したのかなと思ったりも。
命の恩人に金を返したい一心でフィンランドまでやってきた親子。
母親を亡くしているニュニョは、なかなか心を開こうとしませんが、
同じ年頃の子どもたちと友だちになり、
シルカからも愛情を注がれて次第に馴染んでいく様子もあったかい。
原題の“Mestari Cheng”は、プロの料理人であるチェンのこと。
『ニューヨーク 親切なロシア料理店』といい、本作といい、
美味しそうなお料理と優しい人たちが出てくる作品は例外なく楽しい。
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