『ミセス・ノイズィ』
監督:天野千尋
出演:篠原ゆき子,大高洋子,長尾卓磨,新津ちせ,田中要次,風祭ゆき他
TOHOシネマズ西宮にて、2本ハシゴの2本目。
前述の『燃ゆる女の肖像』の次に観ました。
毎晩寝るのが午前2時頃でへろへろなのに、
好きか嫌いかは別にして面白い作品だと睡魔に襲われないものです。
小説や漫画等の原作の映画化が多いなか、
オリジナル脚本と聞くと嬉しくなる。
天野千尋監督のお名前は初めて知りましたが、
本作を観た感じではなんか今後すごくなりそうな人っぽい。
吉岡真紀(篠原ゆき子)はかつてとある文芸賞を受賞した作家だが、
その後スランプに陥ってちっとも書けずにいる。
郊外のマンションへ引っ越して、心機一転を誓う。
しかし、まだ幼い娘・菜子(新津ちせ)は真紀にまとわりつき、
夫・裕一(長尾卓磨)も仕事で忙しく、頼れない。
菜子をなんとかなだめて執筆に集中しようとしているときに、
隣のベランダから布団を叩く音が聞こえてくる。
毎朝6時前から聞こえる常軌を逸した音に真紀は唖然。
隣人の若田美和子(大高洋子)に苦情を呈するが、
言えば言うほど美和子は力まかせに布団を叩く。
苛立つ真記は、親戚の若者・多田直哉(米本来輝)の進言で、
美和子をネタにした小説を書いてみると、これが大当たりして……。
前半は真紀の視点で。
騒音に悩まされている被害者ではあるのですが、
あまりに偉そうでちっとも同情できません。
一緒に遊びに行くという約束を破られた菜子が、
退屈してひとりで外に出かけたことにも気づかず、
美和子に連れられて帰ってくると、美和子のことを非常識だと責め立てます。
「隣の人は危ないから話しちゃ駄目」と言われた娘のかわいそうなこと。
後半は美和子の視点で。
あれほど布団を叩いていた事情も判明します。
「変な人」は確かにたまにいる。
でももしかすると、こんな事情があるのかもしれません。
売らんかなで書き始めた隣人のこと。
悪意を持って書き立てることに巷の人間は喜びもてはやす。
しかしこういう歪んだ感情から作られたものは、
いずれ崩壊するし、飽きられる。
本作では飽きられるより先に事件が発生し、
今まで同情されていた真紀が一転して加害者の立場になります。
世間の手のひらを返したような態度が怖い。
正しく生きることは簡単ではないけれど、思いやりの気持ちは大事。
書き直された『ミセス・ノイズィ』を読んでみたいな~。
後日ノベライズを読みました。レビューはこちら。
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