『博士と狂人』(原題:The Professor and the Madman)
監督:P・B・シェムラン
出演:メル・ギブソン,ショーン・ペン,ナタリー・ドーマー,エディ・マーサン,
ジェニファー・イーリー,スティーヴン・ディレイン,スティーヴ・クーガン他
シネ・リーブル梅田にて、3本ハシゴの1本目。
イギリス/アイルランド/フランス/アイスランド作品です。
原作はサイモン・ウィンチェスターのノンフィクション。
世界最高峰の辞書と言われるオックスフォード英語大辞典にまつわる誕生秘話を
監督のP・B・シェムランは、メル・ギブソン監督作の『アポカリプト』(2006)で脚本を担当した人。
本作が長編監督デビュー作に当たるそうです。
19世紀の中ごろ。
貧しい家庭に生まれ、独学で言語学者となったマレー博士は、
オックスフォード大学で進められていた新たな辞書編纂プロジェクトに応募する。
元々のメンバーである学者たちの中にはマレーの学歴を問題視する者もいたが、
中心的人物のファーニヴァルが「20年前に辞書編纂に取りかかったのに、何ひとつ進んでいない。
いま必要なのはマレーのような新しい人」と発言。
その一声でマレーは英語版のプロジェクトリーダーとなる。
意気揚々と仕事に着手するマレーは、助手たちと共にまずは見出しの作成に着手するが、
引用例が思うように見つからず、お手上げ状態に陥りかける。
そこへボランティアを志願する謎の人物から大量の引用例が送られてくる。
その人物の正体は、精神病院に収監されている米国人の元軍医マイナーで……。
マレー役がメル・ギブソン、マイナー役がショーン・ペン。
オックスフォード英語辞典(通称OED)を引いたことがないので、
他の英語辞典とどう異なるのかわかりませんが、
言葉の意味がどのように変わってきたかを使用者が理解できるように、
世紀ごとの名著の引用を載せているそうです。
マレーはどの世紀も漏れることがないように古典名作等に当たりますが、
18世紀の引用例はあっても12世紀がないとかいうことが起こる。
それで困り果ていたときに、マイナーから1,000語もの引用例が届くわけです。
マイナーは非常に優秀な軍医なのですが、南北戦争で精神を病みました。
戦争が終わってからも当時傷つけた相手が追いかけてくると思い込んでいて、
まったく知らない人を逆に追いかけたうえに射殺してしまいます。
精神病院では彼を被験者にするために特別待遇。
大きな部屋と彼が希望する大量の本と紙と万年筆を与え、
マレーとやりとりをすることも許可しますが、
治療できないとわかるや廃人にされる。おぞましいシーンでした。
マイナーは自分が殺した相手の妻になんとか償いの気持ちを示したいと思い、
それがいつしか恋心に変わり、そのせいでまた自分を責める。
ショーン・ペンの演技は時折おおげさにも思えますが、
苦しむ気持ちを表現するのが上手い。
辞書編纂が大変なのはどこの国も同じなのですね。
『舟を編む』、『マルモイ ことば集め』と併せて観たい作品です。
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