2020年6月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:3141ページ
ナイス数:1111ナイス
■すみれ屋敷の罪人 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
由緒正しき名家だった洋館。敷地を掘り起こしてみれば、身元不明の3人の遺体。身元を突き止めるため、当時の使用人に聞き込みに来た若者。調査を依頼したのが誰なのか、若者が誰なのか、明かされないまま聞き込みが進む。使用人は皆なにか隠し事がある様子。名家の麗しい主一家のことが語られているのに、嫌な空気がつきまとう。評価が高いのもわかる面白さではありましたが、登場人物にあまり共感できなくて、私は今ひとつ。直前に読んだ本数冊と情景がかぶってしまったのもたぶん乗れなかった要因。やっぱり明るいのと暗いのと順番に読もうっと。
読了日:06月03日 著者:降田 天
■3時のアッコちゃん (双葉文庫)
『ランチのアッコちゃん』→『幹事のアッコちゃん』→これ。3作目を先に読み、後から2作目を読んだことになりますが、全然問題なし。ただ、『幹事』でお別れが確定していることを思うと寂しい。長い人生、確かに1週間やそこら何かを変えてみたところで、大勢に影響はないかもしれない。でも、そこを変えてみなければ何も変わらない。想像力は誰にでもある。使うか使わないかだけの違い。アッコちゃんにそれを気づかされます。阪急沿線に住む人間は、阪急電車のことを「チョコレート色」だとは絶対言いませんけどね。あの色は「マルーン」だよん。
読了日:06月06日 著者:柚木 麻子
■静おばあちゃんにおまかせ (文春文庫)
読まず嫌いだった中山センセにすっかりハマってしまい、次から次へと読みたくなる。いろんな作家を万遍なく読むという私のポリシーに反してしまう(笑)。静おばあちゃんのポリシーは、困っている人を助けること。孫娘・円が根っからの善人刑事・葛城と組んで活躍する様子はのんびりしているだけに、事件解決に向けて佳境に入ったときの緊迫感がクセになる。ただ、私が純粋に楽しめたのは第3話まで。政治色が強くなってくると、担当はこのコンビでなくてもいいかと思ってしまう。そしてあのおばあちゃんが。マジか。ほんまに目が点になったやんか。
読了日:06月09日 著者:中山 七里
■ユリゴコロ (双葉文庫)
人を殺すことに躊躇のない女性が子どもを持つ。その結果、どうなるのか。この人もイヤミスの女王のうちのひとりに数えられるそうですが(女王ってひとりじゃないのか(笑))、普通に「嫌な感じ」というのとはちょっと違う気がします。本作然り、『彼女がその名を知らない鳥たち』然り、登場する女性の生き様は凄絶。何を考えているのかわからず、共感しづらい人物であることが多くて、周囲がなぜこんなに献身的なのかと不思議になる。でも、そこに隠されていた事実が明らかになるとき、嫌な後味が残るのではなく、心がひりつく。この暗さは大好き。
読了日:06月11日 著者:沼田 まほかる
■お家あげます (実業之日本社文庫)
「笑いと涙のエンタメ小説」とあるけれど、私は笑えないし泣けない。かなりウザくないですか、この夫婦。特に、一流女優気取りの奥さんの強欲ぶりにイライラ。赤の他人が家1軒タダで差し出してくれるなんてオイシイ話が転がっているわけもないから、最後は呆然として終わればいいのにと腹黒いことを考えながら読みました(笑)。還暦も過ぎた作家が、一回り以上年下の巨乳の女優を嫁にもらって、ついでに家をくれるというファンがいたらええなぁ、そんなふうに考えた妄想と捉えることにします。確かに、イライラしつつも先が読めなくて止まらない。
読了日:06月14日 著者:沖田 正午
■冬雷 (創元推理文庫)
伝統を引き継ぐことが時には人の命よりも重きを置かれる町。鷹匠の跡継ぎとなるために施設から引き取られた主人公は、跡取りの自覚を持って鷹と向き合ってきたのに、不妊だった師匠夫妻に実子が生まれればたちまちお払い箱だなんて。話が進むにつれて少し駆け足でバタついた感もあり、遠田さんの作品でいちばんのお気に入りとは言えないけれど、ビジュアルに訴えかける力が凄い。どのシーンも想像できてしまう。慣習と因習は紙一重なのだと思わずにはいられません。地面から生えるように光るという冬の雷を見てみたい。映像化されたら嬉しいです。
読了日:06月18日 著者:遠田 潤子
■急に具合が悪くなる
42歳でお亡くなりになった哲学者・宮野さんと、人類学者・磯野さんの往復書簡形式。「治ったらいちばんしたいことは」という質問には、治らなければできないよという示唆があるのだと気づかされて愕然としました。「いつ死んでも悔いがないようにという言葉に欺瞞を感じる」とおっしゃっていた宮野さん。でも私はやっぱり、明日死んでもいいように生きたい。故人の人生を「幸せだったはず」などと他人が言うのは、遺された側の願いであるだけで、実際どうだったかなんて本人にしかわからないけど、宮野さんは悔いのない人生を送られたと思いたい。
読了日:06月21日 著者:宮野 真生子,磯野 真穂
■侠飯6 炎のちょい足し篇 (文春文庫)
第6作だもの、一見ヤクザコンビの正体を知らずに読んでいる人はいないはず。もうとにかく柳刃さんの料理さえあれば、どこが舞台であろうがかまいません状態になっている私です。化学調味料アレルギーの家族を持つ身としては、ジャンクフードに走りすぎないでいてくれるとありがたい。柳刃さんの場合、ジャンクフードを使いつつもそれに頼りすぎず、激旨そうな料理。舞台はどこでもいいと言ったものの、自立支援とは名ばかりのぼったくり施設に腹が立ち、最後は柳刃と火野が颯爽と現れるシーンを心待ちにしていました。レシピ本の出版、まだですか。
読了日:06月22日 著者:福澤 徹三
■母親ウエスタン (光文社文庫)
不遇の子どもがいると聞けば、どんな手を使おうともその父子家庭に入り込み、赤の他人の子どものために最善を尽くす女。自分の去り時だと思うと速やかに姿を消し、次の家庭を探しては移る。父子の父親のほうには不要になったとしても、子にとっては実の母親同然。大人になった今も彼女のことを忘れられない子どもたちが、彼女を追いかける。感情が読めないから彼女を理解しづらいけれど、母性とはこういうものなのでしょうか。不思議なタイトルに思い出すのは映画『シェーン』。「カムバック!」と言われたらそうしてもいいと思う。きっと、戻れる。
読了日:06月25日 著者:原田 ひ香
■死刑でいいです―孤立が生んだ二つの殺人 (新潮文庫)
職場のエレベーターで一緒になった人から「物騒なものをお持ちですね」と言われました。鞄の中のこのタイトルが見えていて。母親を殴殺して少年院、退院後に女性二人を強姦して殺害という、書いているだけで胸糞悪くなる事件の犯人はアスペルガーだったとのこと。障害のある犯罪者を認知して支援することが必要だと著者は言う。障害者を理解する姿勢は大事だと思う。でも、障害の有無に関わらず、世の中の大半の人間は殺人なんて犯さない。事件がそこに起因すると考えられてしまったら、同じ障害を持つ人やその周囲の人はやりきれないんじゃないか。
読了日:06月30日 著者:池谷 孝司
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