『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』(原題:The Man Who Killed Don Quixote)
監督:テリー・ギリアム
出演:アダム・ドライヴァー,ジョナサン・プライス,ステラン・スカルスガルド,
オルガ・キュリレンコ,ジェイソン・ワトキンス,ロッシ・デ・パルマ他
1ヶ月フリーパスの有効期限も残すところあとわずか。
今回は席数上限にひっかかることもなく、
昨年暮れに最後のフリーパスをつくった人が少ないのかと思っていました。
ところがこの日の前日にTOHOシネマズ西宮へ行ったさい、
席数上限にひっかかって観られなかったのが本作。
翌日西宮でリベンジを検討しましたが、西宮ではハシゴする作品がなく、
終業後になんばへ向かって車を走らせました。
テリー・ギリアム監督が25年ものあいだ映画化に挑みながらも、
実にさまざまなトラブルに見舞われて頓挫してきた企画。
どんなトラブルだったかについては『ロスト・イン・ラ・マンチャ』(2001)を観るべし。
呪われているのではとすら噂されていた企画でしたが、このたび執念の完成。
観に行った甲斐があり、めちゃめちゃ面白かった!
CM監督として活躍するトビーは、スペインの片田舎で撮影中。
しかし思い通りには進まず、仕事への情熱はもはや失われている。
ある日、スタッフと共に訪れた店で飲んでいたところ、
怪しげなジプシーの男が販売していた商品を見てびっくり。
それは自分が学生時代に監督した映画『ドン・キホーテを殺した男』のDVDだったのだ。
当時のロケ地は偶然にもすぐ近く。
CM撮影をほっぽりだして舞台となった懐かしい村へとバイクを走らせるトビー。
撮影の合間に飲んだ店を訪れると、いかつかった店主ラウルはすっかり腑抜け。
彼の娘アンジェリカはどうしているのかと尋ねると、
トビーのせいで娘は売女になりさがってしまったのだと憤る。
続いて今度はドン・キホーテを演じた靴職人の老人ハビエルのもとへ。
ところがハビエルは気が触れているのか、自分を本物の騎士だと思い込んでいた。
しかもトビーのことを忠実な従者サンチョ・パンサと信じて疑わず、
はからずもドン・キホーテとサンチョ・パンサの旅が始まってしまうのだが……。
苦手だ苦手だ、でもなぜか見てしまうと書き続けてきたアダム・ドライヴァー。
もしかすると私は彼のことが好きなのかもとすら思いはじめました(笑)。
トビー役の彼は本当に上手い。どこか色気も感じます。
“スター・ウォーズ”シリーズのカイロ・レン役をはじめ、
彼を起用したがる監督が多いことにも納得。
ハビエル役のジョナサン・プライスも怪演。
このあいだローマ教皇を演じていた人が今度は狂人ですからね。
カメラなど見たこともない人が多いような村で映画を撮影するということ。
自分は忘れ去られた老人だと思っていたのに、皆が注目する。
夢の世界が終わることが悲しくて、映画の世界を本物だと思い込むのでしょうか。
文化人類学者であるかつての上司が、未開の地に足を踏み入れることについて、
いいことなのかどうかわからないと話していました。
たった1本のCMの撮影で人生が変わってしまった人々を見て、そんなことを思い出す。
—–