MENU

『喜望峰の風に乗せて』

『喜望峰の風に乗せて』(原題:The Mercy)
監督:ジェームズ・マーシュ
出演:コリン・ファース,レイチェル・ワイズ,デヴィッド・シューリス,ケン・ストット他

3連休の真ん中だった日曜日、前週末に公開された作品中、
これは観たい度がわりと低かった。
出演しているのは良い役者ばかりですが、睡魔に襲われる危険があったから。
それゆえ、ハシゴしようとすると本作を入れざるを得ない西宮は止めて、
大阪市内へ出るつもりでした。
しかし電車で出かけるのがしんどくなり、車でTOHOシネマズ西宮へ。
しんどかったら映画を観ること自体を止めればいいのに、
何が何でも向かってしまうのです、劇場へ(笑)。

懸念どおり、ちょっと寝ました。
海の上をゆらゆらしているだけなので、寝て起きても状況はほぼ変わらない。(^^;
『オール・イズ・ロスト 最後の手紙』(2013)と同じですね。

実在の実業家ドナルド・クローハースト。
イギリスではかなり有名な人らしいのですが、私は初めて聞きました。
で、ウィキペディアで調べてみたら、なんだか悲惨な人生。
ネタとして(と言ってもいいものかどうか)凄すぎる人生なので、
映画は無論、TVドラマや舞台、小説や詩にまでなっているようです。

1968年のこと。イギリスは海洋冒険ブームに沸いている。
美しく優しい妻と子どもたちに囲まれて幸せとはいえ、
仕事に行き詰まって金策に頭を悩ませていたドナルドは、
スポンサーを得てヨットレースに出場することを思いつく。

彼が出場するのは単独無寄港世界一周ヨットレース“ゴールデン・グローブ・レース”。
華々しい実績を持つセーラーが参加者として名を連ねるなか、
週末にヨットを楽しむ程度のアマチュアが自ら製作した船で参加するとあって、
世間は呆れたり嘲笑したりしつつも話題となって一躍人気者に。

しかし、アマチュアセーラーが出場するにはあまりに過酷。
なんとか期限内に出航を果たしたものの、
ドナルドには予測できなかった多難つづきで……。

まったく好感の持てない人物なんです。
コリン・ファースが演じるのですから、ちょっとは応援したくなるかと思ったのに。
そもそもレースをナメているし、いろいろと適当。
そんな状態で大いなる海に挑めるわけがない。

で、この人、どうするのかと思ったら、嘘をついちゃうんですね。早々と。
ほかの参加者の動向を無線でチェックしながら、
実際はちっとも進んじゃいないのに、順調どころか参加者のうち最速で進んでいるかのように。
こんな嘘がつき通せるわけもなく、浅はかというしかないでしょう。

喜望峰を回れずに棄権する参加者がどんどん増えて、逆に焦るドナルド。
ビリになれば航海日誌を提出せずに済むから、
だったらいっそのことビリになっちゃおうと目論む。

その場かぎりの思いつきがすべて無理だとわかったときに彼がどうするか。
彼の遺体は発見されていませんが、自殺したと見られているそうです。

嘘がバレたとき、マスコミが妻のコメントを取ろうと自宅へ押しかけます。
「あなたたちが夫を殺した」という妻にもちょっと同情できません。
参加者の美人妻たちの撮影にモデル風のポーズを取っていたのだし、
海上から電話してくる夫を妻も追い詰めなかったと言えるでしょうか。

デヴィッド・シューリス演じるスポンサーの言うように、
ドナルドのいちばんの願いが「有名になること」だったのだとしたら、
死後にこんな形で世界的に有名になった。それが悲しく痛々しい。

邦題から爽やかな海洋ものを想像していると愕然とさせられます。
原題は“Mercy”。その「救い」はどこにあったのか。
—–

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次