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『1987、ある闘いの真実』

『1987、ある闘いの真実』(英題:When the Day Comes)
監督:チャン・ジュナン
出演:キム・ユンソク,ハ・ジョンウ,ユ・ヘジン,キム・テリ,パク・ヒスン,
   ソル・ギョング,イ・ヒジュン,ヨ・ジング,カン・ドンウォン他

TOHOシネマズなんば別館で『劇場アニメ 君の膵臓をたべたい』
TOHOシネマズなんば本館で『プーと大人になった僕』を観て、再び徒歩で心斎橋へ。
心斎橋からなんばへ向かって歩いた時間帯はまだ早かったけれど、
13時を過ぎてますます混雑しているミナミです。人、多っ!

絶対に観たかった1本です。
新聞等で目にすることも多くなっていたけれど、立ち見まで出る盛況ぶりとは。
私が朝オンライン予約したときはそんなに混んでいなかったのに、
入場30分前に発券したときは最前列に3席空きがあるのみ。
座席の周囲ぐるりと立ち見のお客さんがいてびっくりしました。

シネマート心斎橋って、立ち見客にはクッションを貸し出してくれるのですね。
最後列で立って観る人にはもちろん不要でしょうが、
左右の通路に座って観る人もいて、厚めのクッション使用。ほんとは子どもさん用?
でも、この劇場は子どもが観たがるような映画はごくたまにしかかからない。

私のすぐ後ろの席だったおっちゃんが、横の通路に座る夫婦客に声をかける。
「何、席取られへんかったん?」「まさか立ち見になるとは思てませんでしたわ」
「僕、ネットで取っとってん」「そうしよかなと思てたんですけどね」
「昨日嫁さんと娘が観にきてな、めっちゃよかった言うてて。
お父さん、行くなら席予約したほうがええで言われて。昨日も満席やったそうですわ」
「観に行った人がみんな絶賛ですわ。でもこんなに入っているとは、ナメてました」。
……これ、赤の他人同士の会話ですからね。なんか可笑しくて。
こういう会話は東京ではもちろん、キタでも出ないと思う。楽しきミナミ。

観に行った人みんな絶賛。はい、過剰表現ではないと思います。

冒頭、テロップに「実話を基にしたフィクション」。
軍事政権下の韓国で起きた事件を基にした最近の公開作品といえば、
『弁護人』(2013)、『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017)。
実話ではないまでも、『ありふれた悪事』(2016)も同様の事件がモチーフ。
日本がバブル景気にさしかかったころ、韓国ではこんなことが起きていたなんて。

1987年1月14日、ソウル大学の学生が南営洞対共分室で死亡。
南営洞対共分室とは民主化運動の弾圧機構として設置されていたもので、
当局からアカと認定された人物は、取り調べと称する拷問を受けていた。
南営洞対共分室を仕切る内務部治安本部対共捜査所のパク所長は、
拷問致死の証拠を消すため、ただちに遺体の火葬を部下たちに命じる。

警察から届いたあまりにはやい火葬の申請に、チェ検事は疑念を抱く。
心臓発作とは大嘘で、拷問で死に至らしめたのではないか。
明朝司法解剖してからでないと火葬を認めないと言い切る。
チェ検事が断固として引かずに解剖した結果、拷問致死があきらかとなる。

あちこちから圧力がかかることなど、チェ検事には想定内。
マスコミにリークし、事件が闇に葬り去られることのないよう手はずを整える。
チェ検事の思惑どおりにマスコミが動き出すが、
パク所長の背後には警察のみならず大統領までが付いている。
パク所長は部下2名に責任を押しつけて幕引きを図るのだが……。

企画が上がったのはちょうど例のパク・クネ政権時代。
表現の弾圧が厳しくて、何もかもが秘密裡におこなわれたそうです。
資金集めも困難を極めていた折り、実力も人気もある俳優たちが参加を表明。
学生運動家役として出演しているカン・ドンウォンの表明も大きかったとか。
オ・ダルスがカメオ的に出演しているのも「表明」でしょうね。

パク所長役のキム・ユンソク、チェ検事役のハ・ジョンウ
刑務所の看守役のユ・ヘジン、その娘役のキム・テリ、みんな素晴らしかったです。
非常にわかりやすく描かれていて、眠る隙など1秒もなし。

こんな作品を観ると、『検察側の罪人』などはえらく腑抜けな作品に思えてしまう。
いくらシネマートが満席だからといって、
『カメラを止めるな!』のような拡大公開になる可能性はない作品ですが、
観る人が少しでも多ければ。

通路に座っていたおばちゃんはボロ泣きしていました。もちろん私も。
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