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『はじまりへの旅』

『はじまりへの旅』(原題:Captain Fantastic)
監督:マット・ロス
出演:ヴィゴ・モーテンセン,フランク・ランジェラ,キャスリン・ハーン,ジョージ・マッケイ,サマンサ・イズラー,
   アナリース・バッソ,ニコラス・ハミルトン,シュリー・クルックス,チャーリー・ショットウェル他

エイプリルフールだった先週土曜日は「映画の日」。
晩に京都祇園で食事の予定で、それまでは映画を観られそう。
どこでどんなハシゴをしようか計画を練り、
まず1本目は大阪ステーションシティシネマにて、ちょうど封切り日の本作を。

アメリカ北西部の山奥で自給自足のサバイバル生活を送るベン・キャッシュと6人の子どもたち。
ベンと妻レスリーが独自の教育方針を打ち立て、
文明社会とは隔絶された大自然の中で自立した暮らしをしようと始めたこと。
しかしレスリーは双極性障害に罹って入院中。
山奥の家にはもちろん電話もないから、レスリーの様子も毎日は確かめられず、
町へ買い物に出たときにベンの妹ハーパーに尋ねるようにしている。

6人の子どもは、上からボウ(♂)、キーラー(♀)、ヴェスパー(♀)、レリアン(♂)、サージ(♂)、ナイ(♂)。
いずれも学校に行かずとも、ベンの教育により外国語に堪能で知識豊富、
強い肉体を持ち、高い戦闘能力と狩猟の腕前を持っている。
ベンが信奉するのは哲学者のノーム・チョムスキーで、
キャッシュ家ではクリスマスは祝わない代わりにチョムスキーの誕生日を祝う。

家族だけのひきこもり生活でもたくましく幸せな日々。
そう思われていたが、このところレリアンがときおり反抗的な態度を見せる。
長男のボウもひそかにエール大やマサチューセッツ工科大、ハーバード大などを受験、
いずれの大学からも合格通知を受け取ったことをベンに言えずにいる。

そんなとき、レスリーが手首を切って自殺したと知らされる。
ベンはレスリーの実家に電話をかけ、葬儀の日時と場所を聞くが、
レスリーの父親で大富豪のジャックは、娘が死んだのはベンのせいだと主張し、
葬儀への参列を許さない、姿を現せば警察を呼ぶと言う。

仕方なく参列をあきらめようとするベンに、子どもたちは反対。
どうしてもお母さんにきちんとお別れをすると言ってきかず……。

子どもたちのミッションは、「ママを救え、パパを救え」。
6人それぞれに個性的で、とにかくみんなたまらん可愛さです。

ベンの教育方針はなかなかに面白く、性に関する知識さえも包み隠さず話します。
いちばんチビのナイが「性交って何?」と聞けば、図解入りの本を見せることも。
ナイの「膣っておしっこをするところでしょ?」という疑問に、
「それは尿道だけど、だいたいの位置は合っている」と答えるところなど可笑しい。

さまざまな分野の知識を得るためにベンが読むように指定する図書。
その感想もいちいち子どもたちに求めるのですが、
「興味深い」という言葉はキャッシュ家のNGワードだそうで。
それを使うと「もっと具体的に」とベンから怒られます。
はい、すみません。私もここでよく使います、「興味深い」。(^^;

面白い教育方針ではあるけれど、家族以外との関わりをまったく持たない暮らしは破綻する。
本で覚えた知識だけでは人は生きていけません。
自分が行き過ぎていることに気づかないふりをしているベン。
教育しているつもりが最後は子どもたちから教えられる。素晴らしい子どもたちです。

「望みがないと思うと、本当に望みが消える」という言葉がいちばん心に残ったかな。
世の中にはがんばってどうにかなることとどうにもならないことのふたつしかないけれど、
どうにかなるものでも途中であきらめれば望みは消えてしまうでしょう。

良作でした。
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