『ぶどうのなみだ』
監督:三島有紀子
出演:大泉洋,安藤裕子,染谷将太,田口トモロヲ,前野朋哉,りりィ,
きたろう,小関裕太,内川蓮生,高嶋琴羽,大杉漣,江波杏子他
前述の『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』とハシゴ、
TOHOシネマズ西宮にて。
赤ワインのぶどうでは、なんといってもピノ・ノワールがいちばん好きです。
20代の頃はカベルネ・ソーヴィニヨンが好きでした。
というのか、それが好きだというのがカッコイイと思っていました。
渋くて重いイメージのカベルネ・ソーヴィニヨンを好きだと言えば、
私って飲めるのよ、お酒のことがわかっているのよ、という気がして(笑)。
そんな気持ちが吹っ飛んだのは『サイドウェイ』(2004)を観てから。
ピノ・ノワールの素晴らしさを熱弁するポール・ジアマッティに目と耳が釘付け。
以来、チャーミングなピノ・ノワールの味と香りに魅せられ、
お店で自分が出してもらったときだけでなく、
よそのテーブルでピノ・ノワールが注がれているのを見ただけで嬉しくなります。
三島有紀子監督は、私と同じ高校の卒業生だそうな。
注目はしていますが、『しあわせのパン』(2011)はちょっと苦手な部類でした。
キャストもストーリーもいいはずが、メルヘン具合に馴染めず、
印象に残ったのは忌野清志郎と矢野顕子のテーマ曲“ひとつだけ”のみ。
だから、劇場に観に行くかどうかは迷いましたが、
ピノ・ノワールの話だと聞いたらやっぱり行かずにはいられません。
北海道の空知(そらち)。
アオ(大泉洋)の父親(大杉漣)はハーモニカの名手だった。
父親の影響で音楽好きになったにもかかわらず、
音楽の世界で生きていこうとするアオに父親は反対。
アオは家を飛び出し、一流の指揮者として活躍していたが、
あるときその道を断念せざるを得なくなり、帰郷する。
父親はすでに他界、遺されていたのは葡萄畑と小麦畑。
アオの一回り年下の弟ロク(染谷将太)は小麦を育ててパンを焼く。
アオは“黒いダイヤ”と呼ばれるピノ・ノワールの醸造に励む。
しかし、なかなか理想のワインをつくることができず、苦しんでいる。
そんなある日、見覚えのないキャンピングカーが隣地に乗り入れ、
降りてきた若い女性エリカ(安藤裕子)は、いきなり地面に穴を掘りはじめる。
繊細な葡萄のそばでそんなことをされたら迷惑だとアオは通報。
駆けつけた警官のアサヒさん(田口トモロヲ)はエリカと意気投合。
穴掘りを注意するどころか、酒盛りに。
翌日には郵便配達人の月折さん(前野朋哉)もやってきて、またまた酒盛り。
ロクまでがすっかりエリカと打ち解けてしまった様子。
警戒心を募らせるアオだったが、ここから出て行きそうにもない彼女にワインを注いでみると……。
やっぱりメルヘン具合に馴染めません。
『しあわせのパン』よりは話し方その他に現実感がありますが、
いきなり畑の中で楽隊を編成されても。
メルヘンならメルヘンで突っ走ってくれればいいのに、なんだか中途半端な気がして。
最後にキスシーンを入れる必要があったのかどうかも疑問。
だけど、良いシーンもいろいろあります。
自分の名前の由来が酷いものであると思い込んでいたエリカ。
アオのフォローもいいけれど、母親と再会して、勘違いだったとわかるシーンは温かい。
ピノ・ノワールが出てくるのはやっぱり嬉しく、
帰ったら飲みたくなったけど、我慢、我慢。
同監督の次作『繕い裁つ人』も結局観てしまうのかしらん。
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