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『レッド・ファミリー』

『レッド・ファミリー』(英題:Red Family)
監督:イ・ジュヒョン
出演:キム・ユミ,チョン・ウ,ソン・ビョンホ,パク・ソヨン,パク・ビョンウン,
   カン・ウンジン,オ・ジェム,パク・ミョンシン,キム・ジェロク他

おそらく今年いちばん「ヤな感じ」だった『太陽の坐る場所』
ま、そうかもしれないと思ってわざわざ観に行ったのですから、
気持ちに余裕があって、腹が立つというよりはワラけます。
ワラけながらテアトル梅田に向かい、本命だった本作を。
レディースデーにはあまり関係ないとおぼしき年齢層で、なんと満席。

辻村深月が好きではないのに読んでしまう作家だとしたら、
キム・ギドクは心がキリキリしてたまらんけど好き、観てしまう監督です。
そのキム・ギドクの脚本・製作による本作、
メガホンを託されたのはこれが長編デビューとなる新鋭、イ・ジュヒョン監督。
キム・ギドク監督は「僕の映画は嫌いなら観なくてもいいが、
『レッド・ファミリー』は観ないと後悔します」と言っています。

韓国、郊外の住宅地に暮らす4人家族。
夫婦とその娘、祖父という、仲睦まじい一家に見えるが、実は彼らは北朝鮮の工作員。
家族を装ってスパイとして偵察に励み、祖国の指令に従って暗殺をくり返していた。
妻役のスンヘが班長で、夫役のジェホン、娘役のミンジ、祖父役のミョンシクを統率。
気の抜けない毎日が果てしなく続いている。

そんな偽一家の隣に住むのは、喧嘩の絶えない正真正銘の韓国人一家。
夫婦とその息子、祖母という4人家族で、
妻はサラ金で借金だらけ、夫のことを始終罵倒、夫もそれに言い返し、
呆れた息子が怒って、祖母は必死で仲裁という日々。

隣家こそ腐敗した資本主義の象徴だとバカにしていたが、
娘と息子、祖父と祖母が会話をするようになり、
それをきっかけに家族の交流が深まってゆく。
毎日あきもせずに大声で喧嘩する隣家を見るうち、
祖国に残る家族が恋しくてたまらなくなるのだが……。

予告編を観たときは、もうちょっと笑えるのかなと思っていました。
それが、ドタバタコメディ風でユーモアには溢れているものの、
笑えるシーンはあんまりありません。
だけど、そりゃそうですよね、北朝鮮の工作員のお話なのですから。
笑って観ていられるはずもない。予想以上に泣けました。

祖国に家族を残して何十年、南で暗殺をくり返しても、祖国は何も変わらない。
果たして自分たちがしていることは意味があるのだろうか。
心の中ではそんな疑念が浮かび上がっているのに、誰も口には出せません。
隣家の喧嘩すら羨ましく思える、まずその台詞で泣きました。

ラストは涙なしでは見られません。笑いながら泣いていたのですが、次第に涙のみに。
悲しく切ない結末に、これは光ありと見ていいのかどうか迷うシーン。

周囲からあまりに鼻をすする声が聞こえるので、
ひょっとして脱北者とかが大勢いらっしゃるのかしらと思ってしまいました。(^^;

泣いてスッキリした後は、福島警察署へ向かったのでした。
充実の先週水曜日。
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