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『悪童日記』

『悪童日記』(原題:A Nagy Füzet)
監督:ヤーノシュ・サース
出演:アンドラーシュ・ジェーマント,ラースロー・ジェーマント,ピロシュカ・モルナール,
   ウルリク・トムセン,ウルリッヒ・マテス,ジョンジュヴェール・ボグナール他

そんなわけで、平日に休みを取る必要が生じたため、
どうせならレディースデーの水曜日に休みを取って福島警察署に行くことに。
さらにどうせなら一日目一杯映画を観て晩ごはんも楽ちんしようと、
ダンナのリクエストを聞いてここのお弁当を調達することに。
梅田→福島→桃谷→箕面と、密なスケジュール組みで飛び回ることになるので、
電車ではなく車で行くことにしたら、有休を取ったときの常、
仕事に行くより早く家を出て、タイムズCHASKA茶屋町に駐車。
TOHOシネマズ梅田にて、朝イチの回を。

ドイツ/ハンガリー作品。
フランス語のタイトルは“Le Grand Cahier”で「大きな帳面」の意。
英語のタイトルは“The Notebook”です。
原作は女流作家アゴタ・クリストフで、これが処女小説にして世界的ベストセラー。
彼女はハンガリー出身でオーストリアへ脱出、スイスのフランス語圏に移住し、
亡命作家と思われがちですが、ハンガリー国籍も保持したままなのだそうです。

第二次世界大戦末期のハンガリー、ブダペストに暮らす双子の兄弟。
双子はあまりにも目立つからと、戦争が終わるまでふたりを引き離そうと父親は考えるが、
一心同体のふたりを引き離すのは可哀想だという母親の言葉で、
両親とは離れて、母方の祖母が暮らす田舎に疎開することに。

母が祖母のもとを訪ねるのは20年ぶりで、祖母を結婚式にすら招かなかった。
祖父が謎の死を遂げたがゆえに、母は祖母を魔女扱い。
でっぷりと太った祖母は陰険なまなざしを孫である双子に向け、本当に魔女のよう。
母は「迎えにくるまで絶対に生きつづけなさい」と言って立ち去る。

祖母は母のことをメス犬呼ばわり。したがって、双子のことは“メス犬の子ども”と呼ぶ。
タダ飯は食わせないと言われ、最初はどうしてよいのか途方に暮れるが、
やがて双子は薪割りと水汲みを役割分担、粗末ながらも食事をあてがわれる。

双子は父からの言いつけを守り、毎日勉強を欠かさない。
そして、ブダペストを出るさいに父から渡された大きな帳面に日々の出来事を書き綴る。
過酷な状況でどんなことにも負けないように、ふたりで鍛錬を重ねるのだが……。

登場人物に名前はありません。誰ひとりとして名前で呼ばれる人物はなし。
それが暗鬱さを醸し出しています。
この雰囲気はミヒャエル・ハネケに通ずるものがありますが、
残酷ながらもそうなってしまったことがわかる気がして、心を打たれます。

双子が自分たちに課した数々の鍛錬は、苦しくて息が詰まりそう。
大人から理不尽に殴られたり蹴られたりするから、
どんな痛みにも耐えられるようにと、お互いに殴り合って泣かずに我慢。
肉体的鍛錬を積んだあとは、精神的鍛錬も積みます。
虫や蛙や鶏を殺しても平気でいられるように。別れにも悲しみを感じないように。

平手で打たれることは全然つらくない。
けれどもふたりが引き離されることは何よりもつらい。そのシーンには涙。
恐ろしげな祖母といえども自分たちの面倒をみてくれる人。
いつのまにか絆が芽生え、たった一度、祖母が「私の孫なのに」と言うシーンにも心が揺れました。

こんな別れの選択をしなければならなかった双子。
冷ややかな描写が戦争の残酷さをより強く感じさせます。
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