前述のキャバレー体験をした日、
持ち歩いていた読みかけの本は、朱川湊人の『花まんま』でした。
直木賞受賞作で、お読みになった方も多いかと思いますが、
私はこれまで朱川作品を読んだことがなくて先日まとめ買い。
分厚い本に疲れていた頃に、まずは短編集の『都市伝説セピア』に手を伸ばしたら、
するするっと読めて、ちょっぴりホラーなのが面白くて。
『花まんま』は、よりノスタルジックなホラー6編から成る短編集。
いずれも昭和30~40年代の大阪の下町が舞台です。
1つめは「トカピの夜」。
コの字型に並んだ長屋式賃貸住宅の一軒に暮らす小学生、ユキオ。
袋小路の一番奥に住む朝鮮人兄弟とだけは、誰もがなんとなく距離を置いていたが、
兄弟の母親に請われて、ユキオは病弱な弟チェンホと遊ぶようになる。
ある日、チェンホが死に、朝鮮の幽霊トカピとなって長屋に現れる。
2つめは「妖精生物」。
国電の高架下にいた男から、クラゲに似た奇妙な生き物を買った少女、世津子。
時折ガラス壜から出して触れてみると、未知の快感に襲われる。
やがて、小さな工務店を経営する父親が雇った若い男性、大介に恋心を抱き、
彼にはこの生き物の秘密を明かしてしまう。
3つめは「摩訶不思議」。
遊び人の叔父、ツトムおっちゃんがあっけなく亡くなる。
おっちゃんには内縁の妻のほかに愛人がいたことを知っている小学生のアキラ。
火葬場へ向かった霊柩車が急に停車、うんともすんとも言わなくなり、
おっちゃんが愛人にもこの場に来てほしがっているのだとアキラは考える。
4つめは「花まんま」。
無邪気な妹フミ子の様子が、ある日を境におかしくなる。
亡き父から何があっても妹を守れと言われていた俊樹は、
フミ子が自分は誰かの生まれ変わりだと思っていることを知る。
俊樹とフミ子は、彼女が前世を生きたと言う彦根へと向かう。
5つめは「送りん婆」。
親戚のおばさんは、言霊の力を使って、いまわの際で苦しむ人をあの世に送る。
そのおばさんに見込まれて、それを手伝うことになった少女、みさ子。
6つめは「凍蝶」。
まだ幼い自分にはわからない理由で差別を受けている少年、ミチオ。
せっかく仲良くなった転校生からもいつしか避けられるように。
墓地へ足を運んだところ、若い女性と出会う。
イニシャル表記された地名は、大阪人であれば見当がつく場所ばかり。
庄内、天満に扇町公園、飛田新地。それだけでもワクワクします。
キャバレー初体験の話の続きに書いたのは、
1つめの「トカピの夜」にパルナスの歌が出てきたから。
あの悲しげなCMソングが、もう関西でも一部の人の記憶にしかないなんて、んなこたぁありません。
“ミス大阪”では竹井さんが歌っておられてウケました。
1つめ、3つめの話が特に好きでした。
3つめは人生をタコヤキに例える言葉が可笑しい。
冷めたらいっこもうまくない、アツアツすぎたら大やけど。
熱すぎてもあかん、冷めてもあかんっちゅうこっちゃ。
その後、『かたみ歌』も読みましたが、こちらは東京の下町が舞台。
アカシア商店街では西田佐知子の『アカシアの雨がやむとき』が毎日かかっています。
この曲に関しては、おおたか静流バージョンが私は大好きなのですが、
それはさておき、『かたみ歌』にもやはり竹井さんが歌っていた『瀬戸の花嫁』が登場。
で、ふと思い出したのが、子どもの頃よく歌ったコレ。
「せとわんたん ひぐれてんどん ゆうなみこなみそらーめん」
……「だいじょうぶなの~」の「の」って、何の「の」でした?
「のりまき」が2回登場?
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